伊勢原協同病院は1968年(昭和43年)に伊勢原町立国保病院の移管を受け、JA神奈川県厚生連伊勢原協同病院として開院しました。2014年(平成26年)8月に伊勢原市役所などの市の施設が隣接する場所に移転新設してから10年余り。開院から50年以上にわたり、神奈川県伊勢原市を中心とした湘南西部地域の医療を支え続けています。
伊勢原市の二次救急医療機関として救急医療に力を入れるとともに、急性期医療から回復期リハビリテーション、在宅支援まで切れ目のない医療体制を整備。「地域密着・地域完結」を掲げ、地域住民や近隣医療機関とのつながりを大切にしながら、誰もが安心して受診できる病院づくりに取り組んでいる同院院長の鎌田 修博先生にお話を伺いました。
伊勢原協同病院は神奈川県伊勢原市の二次救急医療機関(入院治療を必要とする重症患者さんを受け入れる医療機関)として地域医療を支えています。
伊勢原市のみならず、秦野市・平塚市・厚木市からのご来院もあります。当院への救急搬送依頼件数は3,399件(2025年)で、日本専門医機構が認定した救急科専門医を始めとした体制でこの地域の救急医療にも力を入れています。
私が院長として特に大切にしているのが、「断らない救急」を当たり前にすることです。万が一、救急のお断りが発生した場合には、私自らが当直日誌を細かく確認し、必要があれば担当した医師に直接その理由を聞くようにしています。
「なぜ受けられなかったのか」をしっかりと振り返り、病院全体の方針を明確に示すことで、現場の医師たちの意識も「まずは断らずに診療する」という方向へ着実に変わってきました。こうした取り組みの成果もあり、ここ数年で受け入れ実績は着実に伸びており、1人でも多くの命を救うための環境づくりが実を結んでいます。
また、この地域で課題となっている小児救急についても、24時間365日体制で受け入れを行う仕組みを確立しています。さらに、2025年4月からは形成外科の医師が加わったことで、以前は対応に苦慮していた顔面外傷などの救急患者さんに対しても、非常にスムーズな診療が可能になりました。
もちろん、当院だけで完結できないような高度な三次救急が必要なケースもありますが、その際は目と鼻の先にある東海大学医学部付属病院と迅速に連携し、患者さんを適切な治療へとつなぐ体制を構築しています。
約10万人(2026年5月時点)の市民の皆さんに、「伊勢原には協同病院があるから安心だ」と感じていただけるよう、これからも地域医療の二次救急を担当とする病院としての役割を全うしていきたいと考えています。
当院の整形外科は、私や副院長を含めて2026年現在、12名という手厚い体制で診療を行っています。診療科内のチームワークがよく、ほぼ全身にわたる整形外科疾患の治療を行うことができます。
中でも当院は手術に力を入れていて、2024年度の整形外科手術件数は1,566件に達しました。これは当院の歴史の中でも大変多い数字であり、地域の皆さんに頼りにされている証だと、職員一同さらに身の引き締まる思いで取り組んでいます。
側弯症などの脊椎や関節の手術には実績が多く、高齢の方を中心に患者さんが増えています。特に、私が担当する胸郭出口症候群においては、当院を頼って遠方からお越しになる患者さんもいらっしゃいます。
当院の産婦人科は24時間の当直体制で緊急時の対応にあたっています。また小児科も24時間365日体制(2026年4月時点)で当直の医師がおり、産婦人科と小児科が連携して患者さんを受け入れます。このような連携は当院の特徴であり、万が一新生児に異常がみられた場合でも、小児科をはじめとしたそのほかの診療科が早急に対応できる体制が整っています。
2014年に新病院となったため、院内施設がきれいな点も当院の特徴です。産婦人科入院病棟の食事は栄養士の管理の下、産後に適した食事を提供しており、出産後にはお祝膳をご用意しています。このように、一生の記憶に残る出産を安心・快適に過ごしていただけるような工夫を施していることも特徴です。
また現在は、2026年7月からの和痛分娩開始に向けて準備を進めています。和痛分娩を希望される患者さんは年々増えており、地域のニーズに応えていく予定です。
さらに、産後ケアにも取り組んでいます。これは当院で出産された方に限らず利用可能で、産後のお母さんが休息を取れるようサポートする取り組みです。近年は自治体による補助制度も整ってきており、地域の皆さんに活用していただける環境が少しずつ整ってきました。
当院では出産前後を通じて、お母さんとご家族が安心して過ごせるような体制づくりを、これからも大切にしていきたいと思っています。
血液内科は当院の特徴とする診療科の1つで、白血病や悪性リンパ腫などの血を作る部分でのがんや貧血などの血液疾患全般において近隣の東海大学医学部付属病院との連携の下、診療を行っています。また、血液専門医の育成にも適した環境であると日本血液学会の研修施設にも指定されており、医療者の教育面でも尽力しています。
外科においては、根治性を第一に考えた治療を心がけています。各臓器の専門医によって適切な治療をご提案し、体の負担が少ない低侵襲(ていしんしゅう)な手術・やさしい医療をモットーとしています。そのため、一部の疾患に対しては週末の手術にも対応し、治療だけでなく通いやすさを重視した生活に負担が少なくなるような医療の提供で、患者さんの早期回復を目指した努力を行っています。
また、現在も東海大学や慶應義塾大学との連携を続けながら診療体制を整えており、高難度の手術では指導医の派遣を受けて、地域の患者さんが安心して治療を受けられる環境づくりに努めています。
2014年に新設した回復期リハビリテーション病棟(45床)と緩和ケア病棟(14床)は、さまざまな病院の評価を行っている日本医療機能評価機構からも居心地がよいと高い評価をいただき、院長としても自慢の病棟です。
回復期リハビリテーション病棟では、脳出血や大腿骨骨折(だいたいこつこっせつ)などの患者さんを対象に治療を行っています。
職員は2026年時点で約50名おり、入院患者さんを対象に、土曜・日曜・祝日も休まずリハビリを行っています。患者さんの社会・家庭への早期復帰を実現するために、休まずリハビリを行うことは非常に重要です。患者さんと共に、毎日職員一丸となってリハビリテーションにあたっています。
新病院建設の際に、神奈川県西部地域に緩和ケア病棟が不足していたことから、緩和ケア病棟を14床新設しました。
緩和ケア病棟では、緩和ケア内科医が中心となり、さまざまな職種が協働し、がんなどの大きな苦痛を伴う病気を抱える方のケアを行っています。
当院の緩和ケア病棟は、院内の敷地に独立して建てられており、全室個室(うち7床は差額室料なし)です。また、全ての部屋がケヤキやカエデなどの季節の木々を植えた「やすらぎの森」という中庭スペースに面していて、外から見えないように設置されており、患者さんやご家族に快適に過ごしていただけるような工夫をしています。
地産地消の取り組みとして、栄養室からの提案で、地元の農家の方から毎日配送される新鮮な野菜を病院内で活用しています。入院患者さんに提供する食事はもちろんのこと、職員食堂のメニューにも取り入れており、さらに地域住民の方を対象に地元の野菜を使用した料理教室も年に数回行っています。
また、農家の方から年に何度か野菜の寄付もしていただくなど、地元の方々の協力によって毎日美味しい食事を提供しています。こういった取り組みに興味を持っていただけ、農林水産省からも視察にお越しになり、当院の食事を試食していただきました。
当院では毎年秋に文化祭を開催しています。文化祭では主に子どもたちを対象とした内視鏡の体験、身体測定、市民公開講座などが行われます。
2024年の文化祭は大変盛況でした。この年は“はたらく自動車大集合”というイベントと題して、消防車や救急車、パトカー、白バイ。そして、はしご車の試乗はお子さんに大人気で、最後まで長蛇の列でした。
文化祭以外にも市民公開講座を開催しており、毎回たくさんの方々にお越しいただいております。
またJA神奈川の100歳プロジェクトという取り組みの中で、医師、看護師、リハビリ技師などの職員が神奈川県全域で講演を行うなど、当院のことを多くの方に知っていただいて来院していただくために、積極的に院外に出て活動していくことを心がけています。
繰り返しとなりますが、私は救急患者さんを1人でも多く受け入れるには、医師一人ひとりの救急を断らないという意識の持ち方が大切だと考えています。
そのために医師には当直日誌を細かく記載してもらい、「お断り(患者さんの救急受け入れを断ること)」が生じた場合は、私自らが担当医師に患者さんをお断りした理由を聞くようにしています。
院長である私がこまめに対応し病院の方針を示すことで、今では“断らずに診療することが当たり前”という意識が根付いてきました。実際、ここ数年での救急受け入れ数が大きく増えており、多くの患者さんの救命に注力しています。
前院長が立ち上げ、自ら指揮を執った当院の患者サポートセンターは、患者さんの治療環境を整えるために働いています。
ソーシャルワーカー(医療費の支払いや社会福祉制度など生活面に関する相談に応じる担当)・アドボカシー担当看護師(病気の相談や病院への提言・苦情に応じる担当)・退院調整担当・臨床心理士が患者さんからのさまざまな相談やご意見に応じています。
患者さんのお声に耳を傾け、さらによい病院になるよう努力をしています。
患者さんはもちろん、働く医師にも、当院に来てよかったと思ってもらえるような学びのある病院にしたいと考えています。
そのため、高難度の手術では、慶應義塾大学を中心に、外部から積極的に先生をお呼びして、より安全に手術を実施します。当院の医師にとっては、こうした手術に立ち会うことで高い技術を習得することができますし、患者さんも遠方に行かずに難しい手術を受けることができるので、双方にメリットがあると考えます。
実際に「伊勢原協同病院に来てよかった」と言ってくれる医師も多くいます。

私が今、最も力を入れて取り組んでいることの1つが、DX(デジタルトランスフォーメーション)を積極的に推進して、患者さんの待ち時間を大幅に短縮することです。
目標は、来院されてから2時間以内に笑顔でお帰りいただけるような体制をつくること。そのために、電子化を含めた病院の仕組みや動線の改善を急いでいます。
他の病院を視察したり、外部の方による患者さん目線でのチェックを取り入れたりと、あらゆる面を少しずつ、しかし着実に見直しているところです。
こうした利便性の向上に加え、質の高い医療を支える土台として、職員自身の幸せ(職員満足度)を追求することも不可欠だと痛感しています。
実はこれまで、患者さんの満足度は上がっているのに、職員の満足度が思うように伸びていないという課題がありました。そこで、現場の声を直接聞くためのワーキンググループを立ち上げ、そこで上がった「身近な不満」を次々と解消している最中です。
たとえば、長年の慣習だった制服を廃止しました。「職員の身だしなみよりも、患者さんへの心遣いが大切だ」という患者さんからのアンケート結果にも勇気をもらった決断です。これにしたがって髪の色やネイル、病院バスの利用ルールなどを緩和し、職員が自分らしく、いきいきと働ける環境を整えました。
さらに、柔軟な働き方を支援するために副業の導入も検討しています。職員が満たされてこそ、患者さんにも本当のやさしさを持って接することができるのだと考えています。
こうした改革の先にあるのは、やはり「地域密着・地域完結」の実現です。
当院は大学病院と地域の診療所をつなぐ架け橋として、急性期医療から在宅までを切れ目なく支える役割を果たしていかなければなりません。
先に述べた文化祭や講座などを通じて、地域住民の方々との距離はぐっと近くなりました。最近では当院を頼りにしてくださる方が増えているのではないかと手応えも感じ始めています。その信頼に応えるためにも、これからも地域に開かれた、人間味あふれる病院づくりに邁進してまいります。
様々な学会と連携し、日々の診療・研究に役立つ医師向けウェビナーを定期配信しています。
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