概要
アジソン病とは、腎臓に付随する“副腎”の機能が低下し、副腎皮質ホルモンと呼ばれるホルモンが不足することにより、さまざまな症状がみられる病気です。副腎皮質からのホルモン分泌が低下する病気は“原発性副腎皮質機能低下症”と呼ばれ、このうち後天的なもの(生まれつきでないもの)をアジソン病と呼びます。
症状は幅広く、人によっても異なることが特徴で、代表的なものは、悪液質(カヘキシー)、易疲労感(疲れやすくなること)、全身倦怠感、消化器症状、精神症状などです。
アジソン病は結核をきっかけに発症する場合(結核性)と、がんの転移や原発性副腎悪性リンパ腫、免疫不全でサイトメガロウイルスなどの感染が原因となる場合、自己免疫性の副腎炎で発症する場合に加えて、いまだに原因が分からない場合(特発性)もあります。
結核性アジソン病は40~60歳代の男性に多く、特発性アジソン病は発症年齢や性別に偏りはありません。日本では、1年間に600~700人程度が新たにアジソン病と診断されているといわれています。
アジソン病を発症すると副腎の機能が回復することはなく、発症後はステロイドホルモンを補充する治療を続ける必要があります。なお、悪性リンパ腫やがんの転移の際は抗がん剤が有効なこともあります。
適切な治療、すなわちステロイド対償療法を続ければ多くの場合で予後は良好で、健康な人と同じような生活を送ることができます。
原因
アジソン病は、特定の原因がきっかけとなって発症する場合と、きっかけなどがなく突然発症する場合(特発性)があります。
特定の原因がきっかけとなって発症するアジソン病
アジソン病のきっかけとなる原因の代表的なものには感染症があり、特に結核によるもの(結核性)が代表的です。
結核性のほかにも、真菌感染によるものや後天性免疫不全症候群(エイズ)の合併症として発症するものがあります。
特発性アジソン病
特発性アジソン病は免疫機能が正常な組織を誤って攻撃してしまう自己免疫疾患の1つで、体内で作られた自己抗体が副腎を傷つけてしまうことで発症することが多いといわれています。
特発性アジソン病では、ほかの橋本病や1型糖尿病などの自己免疫疾患を合併していることも多く、この場合は多腺性自己免疫症候群と呼ばれます。
症状
アジソン病の症状は幅広く、人によって現れ方はさまざまです。
代表的な症状は、副腎皮質ホルモンが低下することにより疲れやすくなる(易疲労感)、全身倦怠感、筋力低下、脱力感、低血圧、体重減少などです。
そのほかに、消化器症状(食欲不振、下痢、悪心・嘔吐など)や精神症状(不安、うつ、精神的な落ち込みなど)がみられます。
また、副腎皮質ホルモンの不足が長期間に及ぶことで、副腎皮質ホルモンの分泌を促す副腎皮質刺激ホルモンと呼ばれるホルモンの分泌が増加し、同時にMSH(副腎皮質刺激ホルモン)の過剰分泌の結果、皮膚、肘、膝、歯肉、爪が接する皮膚などに色素沈着がみられることもあります。
検査・診断
アジソン病は自覚症状からこの病気が疑われ、検査が必要になることが多いです。
まずは血液検査を行い、アジソン病によって低下する副腎皮質ホルモンの数値を確認します。さらに、負荷試験と呼ばれる試験で、副腎を刺激したときにホルモン分泌がみられるかを確認することもあります。
また、副腎の様子を確認するために、必要に応じてCTなどの画像検査を行うこともあります。
治療
アジソン病では低下した副腎の機能を回復させる根本的な治療はなく、副腎皮質ホルモンの不足を補う治療が中心となります。
補充する副腎皮質ホルモンにはグルココルチコイドとミネラルコルチコイドがあり、内服薬による治療を行います。特に、急性副腎不全と呼ばれる急性症状を発症しているときにはこれらのホルモンの速やかな補充が必要で、加えて水分、塩分、糖分の補給も必要になります。
また、発熱などによって体にストレスがかかっているときには、通常時よりも多量の副腎皮質ホルモンが必要になります。この場合には副腎皮質ホルモンの内服量を2~3倍に増やして治療を行います。
これらの治療は生涯にわたって続ける必要がありますが、正しい治療が行われていれば症状もなく、健康な人と同じ生活を送ることができます。
しかし、副腎皮質ホルモンの内服を欠かしたり、発熱時の増量を行わなかったりするとショック症状を起こしたりすることもあるため注意が必要です。そのため、かかりつけの病院などで病名・治療内容・主治医名を記載した副腎不全カードを作成してもらい、常に携行することが推奨されます。このカードを交通事故や突然の外科手術などの処置を受ける際に提示することで、急性副腎不全の回避につながります。
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