概要
チャージ (CHARGE) 症候群は、主にCHD7という遺伝子の異常により、生まれつき体のさまざまな部分に特徴的な症状が認められる病気です。目や耳、鼻、心臓、外性器の異常、成長障害や精神発達遅延などの症状を特徴とします。
現在、病気の根本的な治療法は見つかっておらず、現れた症状を改善するための対症療法や、療育による支援が中心に行われています。
原因
チャージ症候群の約70~98%は、8番染色体に存在するCHD7遺伝子の異常により引き起こされることが報告されています。
CHD7遺伝子は胎児の体を作るための設計図のような役割を持つ遺伝子です。その遺伝子に異常があると、胎児期の発生の過程で体の器官が正しく作られないといった問題が生じます。これにより、チャージ症候群のさまざまな症状が生じると考えられています。
症状
症状の現れ方には個人差がありますが、その中でもよくみられる症状を表す単語から頭文字をとって、“CHARGE症候群”と命名されています。
- C (coloboma):網膜、虹彩、視神経などの部分欠損 (コロボーマ)
- H (heart defects):先天性心疾患
- A (atresia choanae):後鼻孔閉鎖*
- R (restricted growth and development):成長障害(低身長)、精神発達遅延
- G (genital abnormality):外陰部低形成
- E (ear abnormality):耳の形態異常、難聴
特に成長障害、精神発達遅延を伴う場合が多く、一部のケースでは成長ホルモンの分泌不全が認められることがあります。
そのほかの症状として、顔面麻痺によって生じる顔面の非対称性、口唇口蓋裂**などが挙げられます。さらに、これらの症状の影響で口や喉がうまく動かせず、乳児期の哺乳障害や嚥下障害を伴う場合もあります。
*後鼻孔閉鎖:鼻腔から喉にかけてつながっている部分(後鼻孔)が塞がった状態のこと。
**口唇口蓋裂:唇や上顎が生まれつきつながっていない(避け目がある)状態のこと。
検査・診断
症状からチャージ症候群が疑われる場合は、遺伝カウンセリング*および遺伝学的検査**を行い、原因となるCHD7遺伝子の異常の有無を調べます。遺伝学的検査の結果、CHD7遺伝子に異常を認める場合には確定診断となります。現在チャージ症候群の遺伝学的検査は保険適用となっています。
なお、CHD7遺伝子に異常が認められない場合には、状況に応じて以下のような検査を行います。
- 画像検査……超音波(エコー)検査、X線検査、CT、MRIなどを行い、耳の中、食道、心臓などの形態異常の有無などを評価することがあります。
- 眼底検査、視力検査……チャージ症候群では網膜、虹彩、視神経などの部分欠損を伴う場合があるため、視力検査や目の奥の状態を調べる眼底検査などを行い、目の状態を評価します。
- 聴力検査……難聴の疑いがある場合は、耳の聞こえの状態を評価するために聴力検査を行う場合があります。
これらの検査結果とチャージ症候群の必発症状とされる、耳の形態異常を伴う両側の難聴、成長障害(低身長)、精神発達遅延のほかに、大症状(眼コロボーマ、後鼻孔閉鎖または口蓋裂、顔面神経の麻痺または非対称的な顔)、小症状(先天性心疾患、食道気管の異常、外性器の異常)の中で、大症状2つ以上、または大症状1つと小症状2つを認めた場合は、遺伝子の異常が見つからなくてもチャージ症候群と診断されます。
*遺伝カウンセリング:遺伝の専門医や遺伝カウンセラーと直接相談ができる場のこと。遺伝に関するさまざまな医学的情報の提供、心理面や社会面などに関する支援を受けることができる。
**遺伝学的検査:採取した血液などから遺伝子異常の有無を調べる検査。
治療
チャージ症候群を根本的に治す方法は、現在のところまだ見つかっていません。そのため、治療の主体は各症状を和らげるための対症療法が主体となります。
チャージ症候群では症状が体のさまざまな部位に及ぶため、それぞれの症状に応じた多面的かつ包括的な治療が必要となります。
口蓋口唇裂や後鼻腔閉塞などの形態異常を認め、経口での哺乳・摂食が難しい場合には、経鼻チューブによる栄養補給や胃ろう手術などの処置が必要になることがあります。
また、視覚障害や聴覚障害を認める場合は、継続的な介助や療育が必要になります。たとえば、視覚障害に対しては適切な眼鏡を使用する、聴力障害に対しては補聴器を使用するなどといったことが挙げられます。そのほか、専門家によるリハビリテーションの導入も検討されます。
参考文献
- 難病情報センター. チャージ症候群(指定難病105). 厚生労働省. 2023-10. https://www.nanbyou.or.jp/entry/4138. (参照 2024-03-04)
- CHD7 Disorder. Conny M van Ravenswaaij-Arts, Meg Hefner, Kim Blake, Donna M Martin. Initial Posting: October 2, 2006; Last Revision: September 29, 2022.https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK1117/
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