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パーキンソン病の治療――使用する薬や服薬の注意点を解説

パーキンソン病の治療――使用する薬や服薬の注意点を解説
新井 憲俊 先生

国立国際医療研究センター 脳神経内科 科長

新井 憲俊 先生

目次
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パーキンソン病の治療方法には、薬物療法や手術療法、リハビリテーションなどがあり、患者さんの年齢や症状の重さ、進行状況によって選択されます。

今回は、国立国際医療研究センターでの具体的な治療方法について、適応される条件や副作用、注意点、リハビリテーションなども含め、同センター 脳神経内科 科長 新井 憲俊(あらい のりとし)先生にお話を伺いました。

薬物療法が適用されるのは、パーキンソン病の症状により生活に支障が出ている方です。動きがゆっくりになってしまったことで着替えなどさまざまなことに時間がかかるようになっている方に関しては、経過観察をせず、速やかに薬物療法を開始します。

使用する薬には主に、L-ドパやドパミンアゴニストといった薬に代表されるドーパミン補充薬と、モノアミン酸化酵素阻害薬に代表される非ドーパミン系治療薬があります。基本的には単剤から処方を開始することが多く、発症年齢や症状の経過に合わせて、薬の種類や量を調整していきます。以下に主な治療薬となるL-ドパとドパミンアゴニストについて、副作用なども含めて詳しくご説明します。

L-ドパ

小腸で直接吸収されてドーパミンに変わる経口タイプの有効性の高い治療薬です。65歳以上の方に適応されることが多いですが、65歳未満でも生活に著しい支障が出ている場合、適応となる場合があります。

ウェアリングオフ*やジスキネジア**、眠気、食欲低下、用量依存による幻視などの副作用が出る場合があるので、注意が必要です。

*ウェアリングオフ:L-ドパを飲んでパーキンソン病の症状が抑えられた2~3時間後に、薬の効果が切れたことによって現れる現象。主な症状として手足の震え、動作緩慢、倦怠感などがある。

**ジスキネジア:L-ドパが効いているときに生じる、自分では止められない・または止めてもすぐに出現する動きの総称。手が勝手に動く、口がもぐもぐ動く、足が突っ張って歩きにくいなどの症状が、ウェアリングオフが出始めてから少し遅れて出てくることがある。

ドパミンアゴニスト

65歳未満の方に適応されることが多い薬です。経口薬のほか、皮膚に貼るタイプの貼付薬があります。L-ドパと違い、ドーパミンに変わることはありませんが、ドーパミン受容体を刺激することでドーパミンに似た作用を出します。

L-ドパと比較すると作用時間が長く血中濃度が安定するため、上述したウェアリングオフやジスキネジアを生じにくいのが特徴ですが、副作用として眠気のほか、さまざまな精神症状やイライラを引き起こす場合があります。また貼付薬では、体質によっては皮膚がかぶれることもあり、注意が必要です。

パーキンソン病が進行すると、胃や腸のはたらきが悪くなるため、吸収したL-ドパの濃度が血漿(けっしょう)(血液のうち液体成分)中で安定しません。それに伴い、薬の量が最初と比べて徐々に増えていくことに関しては、注意する必要があります。また、副作用も多いことも注意しなくてはならず、当院では患者さんに対して細かく説明するよう心がけています。

発症年齢が若い方の場合は、運動症状であるウェアリングオフやジスキネジアが特に生じやすい傾向にあります。軽く済んでいるのならば問題はありませんが、動くことで体が強く疲れを感じる場合や周囲の視線が気になる場合は、対策を一緒に考えていきます。

手術は、比較的若い時期に発症し、発症後5~10年の段階でウェアリングオフやジスキネジアなどの運動症状が出てきており、薬によるコントロールが難しい方に適応されます。

当院では手術を実施していないため、希望される方には、ほかの施設をご紹介しています。

将来病気が進行して自力で動けなくなるのを防ぐためにも、薬だけに頼らず、リハビリテーションを行うことは非常に重要です。

当院では、診断後すぐにリハビリテーションが開始できるような体制を整えており、リハビリテーションで回復が望める方で、かつ希望する患者さんには、入院下で実施しています。リハビリテーションの内容は主に歩行訓練や姿勢の保ち方の指導が中心で、リハビリテーションに熱心な医師や言語聴覚士、作業療法士などが多職種連携で実施します。歩行訓練以外にも、発声や嚥下障害(えんげしょうがい)に対しては言語聴覚士が指導を行いますし、筋強剛の症状が強く出ている方に対しては作業療法士がサポートしています。退院後もご自分でできるリハビリテーションの指導も併せて行うため、退院後にご自宅でリハビリテーションを継続している患者さんもいます。

このように、当院では患者さんが積極的にリハビリテーションを行えるような体制を強化し続けています。

また、外来でのリハビリテーションは実施していませんが、歩行や歩行時の姿勢などについてはアドバイスを行っています。

ご高齢の方や歩行障害がある方の場合、転倒のリスクが高くなります。転倒した際に圧迫骨折や大腿骨頸部骨折(だいたいこつけいぶこっせつ)などをする方が非常に多いので、骨折をしないよう、転倒に注意してください。転倒しないように、運動習慣をつけて筋肉を維持することも大事になってきます。

また、処方された薬を自己判断で中止せず、しっかりと飲み続けることも大切です。

パーキンソン病の進行そのものを食い止める治療法は、現在まだ見つかっていません。

IPS細胞の移植など、薬に頼らない治療法の研究に期待がかけられていますが、見通しが立っていないのが現状です。

パーキンソン病と診断されて「難病になってしまったのではないか?」「もう歩けなくなるのではないか?」と不安に思われる方もいらっしゃいます。しかし実は、そのようなことはありません。パーキンソン病は治療法がとても多い病気で「これは駄目」、「あれもしてはいけない」という生活の制限もありません。きちんと薬を服用し、運動やリハビリテーションをすることによって症状の改善が期待でき、歩けなくなることも防げます。

ですから怖がらずに、一緒に治療をしていきましょう。

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