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パーキンソン病はどのように診断する? 必要な検査について

パーキンソン病はどのように診断する? 必要な検査について
新井 憲俊 先生

国立国際医療研究センター 脳神経内科 科長

新井 憲俊 先生

目次
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パーキンソン病とは、脳が異常をきたし、体の動きに障害が現れる病気です。症状が出てくるまでには時間がかかることがあり、症状が目立ってくる時期や程度は人によって違います。また、ほかの病気によっても似た症状が現れるため、さまざまな検査を細かく行って類似疾患との鑑別をし、診断することが必要となります。

今回は、国立国際医療研究センター 脳神経内科 科長 新井 憲俊(あらい のりとし)先生に、パーキンソン病の診断方法と必要な検査について、お話を伺いました。

パーキンソン病の運動症状は動作緩慢・振戦(しんせん)・筋強剛・姿勢保持障害の4つに分けられ、これらを総称してパーキンソン病の四大症状とも呼ばれます。ただし、症状の現れ方には個人差があり、四大症状全てが同時に出そろう方はあまりいません。症状の進行も人によって違います。ただし『パーキンソン病診療ガイドライン2018』では、動作緩慢に加えて、振戦あるいは筋強剛・振戦と筋強剛がみられればパーキンソン症状とする、とされています。

動作緩慢

今までよりも動作が遅くなり、時間がかかることです。症状としては、体全体の動きが緩慢になるなどが起こります。体を動かす範囲が狭まるため、人によっては歩く速度が遅くなる・歩幅が狭くなる・腕の振りが小さくなるなどの症状が出る方もいらっしゃいます。

振戦

手足が震えることです。振戦は2種類のタイプがあり、力を入れたときに細かく震えてしまう姿勢時振戦と、静かにしているときに勝手に震えてしまう静止時振戦に分けられます。パーキンソン病でみられることが多いのは、静止時振戦です。パーキンソン病の場合、振戦に左右差がみられるのが特徴的です。

筋強剛

関節を動かそうとするとカクカクするなど、動きに抵抗を感じることです。パーキンソン病の患者さんの腕を他動的に内側や外側に回そうとすると関節が固くなってしまっており、動きに制限が出ていることが分かります。筋強剛は他動的に動かして初めて抵抗が感じられるので、患者さんご本人では自覚しにくいことがあります。振戦と同様、筋強剛も左右差があることが特徴的です。

姿勢保持障害

バランスが取りにくくなって、転びやすくなることです。姿勢保持障害の症状を確かめるために、立った状態で患者さんを押したり引いたりするプルテストを行います。パーキンソン病の患者さんでは、押したり引いたりする際、反射的に体を支えるための足がすぐに出なかったり、バランスを崩して倒れてしまったりします。

パーキンソン病の症状には、前項でご説明した体の動きに関係している四大症状のほかに、非運動症状というものがあります。いくつかある中から、代表的なものをご紹介します。

  • 便秘

患者さんの多くにみられる代表的な症状です。初期の頃より現れやすいです。

  • 起立性低血圧

病気の進行中に出てくる症状です。立ち上がったときに血圧が下がりやすくなり、立ちくらみなどが起こります。ひどい場合は座っていて意識がぼんやりしたり、失神したりしてしまうこともあります。

  • オイリーフェイス

顔の発汗が促進されて皮膚に脂が多く出てきます。

  • うつ

パーキンソン病は、体の動きを滑らかにするはたらきを持つドーパミンという神経伝達物質の減少が通常よりも早く、それによってうつや抑うつ状態が現れる場合があります。

さらに、症状が進行すると認知症の合併につながる場合があります。

MN

上図のとおり、脳には中脳という部分があります。この中にある黒質という場所のドーパミン神経細胞からドーパミンが産生されています。このドーパミンが黒質から線条体に向けて分泌され、神経の連絡をすることで、人はスムーズに歩いたり、自分の意志で動きを止めたりすることができます。ドーパミンは加齢とともに誰でも自然に減少していきます。しかし、パーキンソン病を発病すると、黒質から出るドーパミンが通常よりも早く減少します。これにより、体が滑らかに動かなくなり、体の動きに障害が現れるのです。
なお、パーキンソン病で黒質から出るドーパミンが減る原因はまだ明確にはされていません。

発病リスクとして大きいのは、加齢です。60歳以上の方からリスクが高まってくるといわれていますが、もっと若い年代で発病される方もいらっしゃいます。

遺伝により発病する方もごくまれにいらっしゃいますが、可能性としては少ないです。

確実な診断を行える検査方法は確立されておらず、医師によってどの検査を行うかは異なります。ここでは、当院で私が行っているパーキンソン病の検査の流れを以下に示します。

一見無関係のようなエピソードもパーキンソン病を診断するうえで手がかりになることがあるため、問診は非常に重要です。

中核症状のチェック

まず、中核症状(主要な症状)である動作緩慢がないか確認します。ご高齢になると、だんだん動きがゆっくりとしていく方が多いですが、あまりに急に動きが悪くなってきていないか、遅くなっていないかを伺います。

震えの症状がある場合、いつごろから始まったのか、左右差があるか、どちらが強いのかも伺います。

歩き方のチェック

歩行の仕方を聞くこともあります。歩行の速度があまりにゆっくりしすぎていないか、前傾姿勢になり歩幅が狭くなっていないか、腕振りが少なくなったり、左右のどちらかだけ動いていたりしないかなどについて伺います。

就寝中の異常のチェック

レム睡眠行動障害という症状があるかどうかも伺います。レム睡眠行動障害とは、就寝中に寝言を言ったり、大きな声を出したりすることです。レム睡眠行動障害は、患者さんより、そのご家族のほうが異常に気付く場合があります。

嗅覚についてのチェック

最近では嗅覚の低下も症状の1つといわれており、問診で伺うようにしています。

レム睡眠行動障害や嗅覚低下など、一見あまり関係ないように思えることもパーキンソン病の症状の判断をする手がかりになる場合があるので、時間をかけて問診するようにしています。

心交感神経の機能を反映する薬剤を注射し、15分後と3時間後の2回胸部を撮像して、心筋への取り込みの値を計測することで心交感神経機能を確認します。パーキンソン病の方はその値が正常の人よりも低下するのが特徴です。

パーキンソン病の80~90%以上の方で異常が出る検査であるため、異常があればパーキンソン病の疑いが強いと考えます。

ドーパミントランスポーター(ドーパミンを再び取り込み、量を調整する部分)の変化を画像化して調べる検査です。

ドーパミン神経細胞が壊れるとドーパミントランスポーターも減少します。そのため、健常者ではドーパミントランスポーターシンチグラフィーのスキャン画像が左右対称にカタカナの“ハ”に似た形状になりますが、パーキンソン病の方はドット型になります。画像に左右差がみられることも特徴で、振戦や筋強剛が目立つ側と反対側の集積が低下します。

パーキンソン病とは違うパーキンソン症候群*でもこの異常が出る場合があるため、この検査は完全な鑑別には向いていないことがあります。

また、特定の薬を飲むとパーキンソン病と似たような症状が出る、薬剤性パーキンソン症候群があります。MRI検査やドーパミントランスポーターシンチグラフィーで異常が確認できないのが特徴です。

こちらは、うつ病の際に服用する三環系抗うつ薬など、飲んでいる薬の種類によって事前に休薬が必要となる場合があります。

*パーキンソン症候群:パーキンソン病とは別の原因により生じる動作緩慢や振戦、筋強剛などの症状。

パーキンソン病以外の病気の可能性を除外するためには、MRI検査が必要です。パーキンソン病ではMRIで特徴的な異常がみられないのに対して、脳血管性パーキンソン症候群などのパーキンソン症候群は、MRIで異常を確認することがあります。

パーキンソン症候群には、パーキンソン病の薬はほとんど効かないので、今後の治療を選択するうえでも正しく検査を行い、適切な鑑別をすることは非常に大事です。

MRI検査を実施することで鑑別ができる病気は以下です。

まず動作緩慢、筋強剛、振戦といった中核症状があるかどうかを確認します。振戦と筋強剛の両方出る人もいれば、片方だけという人もいます。

また、パーキンソン病の薬が効くかどうかということも大事です。判断がつきにくい場合は、パーキンソン病の薬を処方してみて、効くかどうかで判断することもあります。

絶対的除外基準(該当する場合はパーキンソン病とは考えにくい項目)によってパーキンソン病から除外する場合もあります。

たとえば、下記の症状はパーキンソン病ではみられない症状ですので、検査で結果が出ても絶対的除外基準に従いパーキンソン病からは除外します。

ふらつきが出たり、言葉を正しく発音、発声しにくくなるといった症状が出たりする

  • 核上性眼球運動障害

眼球運動、主に上方や下方への眼の動きに制限がでてくる

さらに、5年間の歩行状況などを経過観察し、進行の状況に合わせてパーキンソン病の可能性を判断する、相対的除外基準もあります。

当院では、検査の日を複数・短期間で用意しておき速やかに検査を行うことで、早く的確に診断ができるように工夫しています。

パーキンソン病に似た症状が発症する別の病気は多く、1回の検査だけでは鑑別がつきにくい場合もあります。しかし、患者さんの立場からすると、少しでも症状が抑えられるように早く治療を開始したい、という希望があるでしょう。そういった方に対しては、検査をしながら様子を見て治療を始めていく、という場合もあります。

患者さんの年齢や体の状態、生活環境はさまざまですので、一人ひとりの希望や症状に合わせた治療を提案させていただきます。

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  • 国立国際医療研究センター 脳神経内科 科長

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