概要
レストレスレッグス症候群とは、下肢(脚)を中心にむずむずする、痛い、かゆい、皮膚に虫がはうような感じがするなどの不快な感覚が生じ、下肢を動かさずにはいられない衝動を伴う病気を指します。こうした不快感を伴う症状は、夕方から夜間の安静時に生じることが多く入眠困難につながる場合もありますが、下肢を動かすことで症状が軽減します。この病気は、むずむず脚症候群や下肢静止不能症候群とも呼ばれます。
原因
脳内の神経調節に関わる“ドパミン”と呼ばれる神経伝達物質の機能異常が病気のメカニズムに関係すると考えられています。レストレスレッグス症候群は、明確な原因が特定できない“特発性”と、原因となる病気が存在する“二次性”に分けられ、“特発性”の半数近くは家族内に同じ病気の患者が存在することから、遺伝の関連も指摘されています。
二次性レストレスレッグス症候群の原因となる病気の1つとして、鉄欠乏性貧血が挙げられます。鉄欠乏性貧血はもっとも頻度の高い貧血として知られており、鉄不足によってドパミンの合成・代謝に障害が生じることが、レストレスレッグス症状の誘因と考えられています。鉄欠乏性貧血が生じる状況には、鉄分の摂取不足のほか、胃の切除などによる鉄の吸収不良、慢性的な消化管出血、生理、妊娠などがあります。
また鉄欠乏性貧血のほかにも、パーキンソン病・脊髄小脳変性症・ハンチントン病・多発性硬化症などの神経疾患、関節リウマチ・シェーグレン症候群などのリウマチ性疾患、糖尿病や甲状腺機能異常などの内分泌疾患、腎不全、人工透析、うつ病、慢性肝疾患、慢性閉塞性肺疾患などと関連して二次性レストレスレッグス症候群が発症することもあります。
症状
レストレスレッグス症候群では、脚がむずむずする、脚が痛い、かゆい、ほてる、足がぴくぴくする、皮膚に虫がはうような感じがするなど、不快な感覚異常が下肢を中心として起こります。レストレスレッグス症候群でみられるこうした不快感は、夕方から夜間の安静時に出現・悪化します。
そのため、就寝時に症状が悪化し入眠障害につながることが多くみられます。また、レストレッグス症候群は、睡眠中に下肢を中心に頻繁に不随意運動(無意識に出現する指の伸展、足首の背屈、膝の屈曲など)を生じる周期性四肢運動を伴うことが極めて多く、このために夜間に良質な睡眠を保つことができなくなり、日中のパフォーマンス低下につながる可能性もあります。
検査・診断
まずは自覚症状を確認するため、問診や質問票などを用いた診察が行われます。診察では、症状がいつ・どのように現れるか、どのように消失・緩和するかなどを確認します。また、レストレスレッグス症候群に合併する周期性四肢運動を確認するため、終夜睡眠ポリグラフ検査を行うこともあります。
原因の項目で記載したように、レストレスレッグス症候群を発症する具体的な原因となる病気として、鉄欠乏性貧血が挙げられます。そのため鉄欠乏性貧血であるかどうかを調べるために、鉄の不足状態を評価することのできる血液検査や便検査などを行うことが検討されます。
治療
レストレスレッグス症候群では、鉄欠乏性貧血を始めとした病気が背景に隠れていることもあります。原因となる病気がある場合、鉄欠乏性貧血であれば鉄の補充など、原因に適した治療を行うことが検討されます。
さらに、薬を用いた治療が行われることもあります。薬物治療では、原因となるドパミン神経のはたらきを補う“ドパミンアゴニスト”の内服薬や外用薬(貼り薬)が検討されるほか、神経細胞の興奮を抑える抗けいれん薬の内服薬が検討されることもあります。
レストレスレッグス症候群は夜間睡眠を障害することで、日常生活の質を大きく落としてしまうことも懸念されます。そのため、医師と相談しながら自分自身に合った治療内容を模索しつつ、症状緩和に努めることが大切です。
予防
レストレスレッグス症候群はセルフケアによって症状が和らぐ可能性もあります。たとえばカフェインやアルコール、喫煙などによっても症状が悪化することがあるため、これらの取りすぎに注意しましょう。そのほか、適度な運動習慣を心がけるとともに、不規則な睡眠習慣、過労、ストレスを避けることも症状改善に役立ちます。さらに、強い症状が生じた場合には、軽度の歩行運動、シャワーを浴びる、下肢をマッサージするなどの対処方法も有効です。上記に当てはまる症状があり、生活習慣の改善によっても症状が緩和しない場合は、速やかに病院を受診することを検討しましょう。
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