ていおんしょうがい

低温障害

別名:全身性低体温症

目次

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概要

寒冷障害とは、一定に保たれている体温(約37℃)が大幅に低下することで、体の細胞や組織が適切に機能できなくなる状態です。寒冷な環境にさらされることによって発症・悪化します。
寒冷障害には、低体温症、凍傷(とうしょう)凍瘡(とうそう)などがあります。

低体温症とは、命に危険が及ぶほど体温が低くなる状態です。体温が低くなると心臓や脳などの働きが低下し、最終的には機能を失います。体温が31℃を大きく下回ると自力で体温を上げることが難しくなり、28℃を下回ると死に至る可能性が考えられます。全身性低体温症と呼称されることもあります。

凍傷(とうしょう)とは、極寒の環境にさらされることで組織が凍結し、組織やその周辺が壊死する(細胞が破壊される)状態です。皮膚は感覚がなくなり、白くなる、腫れる、水疱ができる、黒くなるといった状態になることがあります。氷点下の外気にさらされると体のどの部分でも凍傷を起こす危険性がありますが、特に寒冷にさらされやすい手足、顔、耳などはなりやすい部分です。

凍瘡(とうそう)は「しもやけ」ともよばれます。乾燥した冷気に繰り返し触れることで、皮膚にかゆみ、痛み、赤み、腫れなどがあらわれる組織損傷です。自然に治る場合も多いですが、再発しやすいという特徴もあります。

原因

低体温症は、体から産生される熱量(運動など)や外部から得られる熱量(日光や暖炉など)よりも、体から失われる熱量のほうが大きくなるときに起こります。冷たいものに接する、水につかる、横たわる、風にあたるといった条件は低体温症をより発症・悪化しやすくさせます。とても冷たい水に急に浸かると5~15分ほどで死に至る危険があると考えられますが、やや冷たい水でも長時間さらされると低体温症を引き起こす可能性があります。また水に浸かるだけでなく、気温が13~16℃ほどの場所に長時間いることでも発症につながるリスクがあります。

凍傷は、凍結によって組織や細胞が破壊されることが原因です。濡れたものや金属に触れること、手袋やブーツなどで血流が悪くなっていること、糖尿病の発症や動脈硬化がある、血管のけいれん性の収縮(血管れん縮)があるといったときには、凍傷を引き起こすリスクが高まります。

凍瘡は、冷気に繰り返しさらされることであらわれますが、なぜこのような症状があらわれるのかは詳しく分かっていません。血管の表面や神経が傷ついているときに冷感にさらされると、血管のれん縮や交感神経の過剰反応をおこすことがあり、こうしたことが凍瘡の原因につながっている可能性も考えられます。
 

症状

低体温症では、以下のような症状などがみられます。

  • ふるえ(シバリング)
  • ふるえ(シバリング)がとまる
  • 動作が遅い、ぎこちない、反応までに時間がかかる
  • 判断力の低下
  • 思考能力の低下
  • 錯乱状態
  • 意識障害

最初は激しいふるえが起き、歯がガチガチなる「シバリング」という症状があらわれます。これは体温が低下したときの防御反応です。身震いをすることで筋肉が熱を産生させようとします。

さらに体温が低下するとシバリングは止まり、上記の症状があらわれます。これらの症状はゆっくりとあらわれるため、発症に気付かないこともあります。しだいに思考能力が低下するためふらふらとさまよったり、横になって休もうとすることもあります。

凍傷では、以下のような症状などがみられます。

  • 白斑(皮膚が白っぽくなる)
  • 腫れ
  • 水疱(水ぶくれ)
  • 手足の感覚の低下
  • 湿性壊疽(しっせいえそ):患部が灰色でやわらかくなる
  • 乾性壊疽(かんせいえそ):患部が黒色に変色して硬くなる

凍傷の症状は気温(もしくは触れるもの)の温度と、さらされている時間によって変わります。浅い凍傷では患部の感覚がなくなり白っぽくなります。やや深い凍傷では腫れや水泡がみられます。より深い凍傷では手足の感覚がなくなり、冷たく硬くなります。

凍傷によって細胞が壊死すると湿性壊疽や乾性壊疽があらわれます。その場合、手足や指を切断する必要が出てくることもあります。

凍瘡では、以下のような症状などがみられます

  • かゆみ
  • 痛み
  • 赤み
  • 腫れ

このほかまれに皮膚の変色や水疱(水ぶくれ)があらわれることがあります。一般的にはすねや指背側(手の甲の面)にみられます。
 

検査・診断

低体温症は、以下のような検査で診断をおこないます。

  • 深部体温の測定
  • 臨床検査(血算、グルコース、電解質、BUN、クレアチニン、動脈血ガス など)
  • 心電図

体温測定では舌の下(口腔温)ではなく、電子体温計を用いて直腸や食道のプローブ測定をおこなうことがより正確と考えられます。また、中毒、粘液水腫、敗血症、低血糖、外傷といった病態でないか考慮することも大切です。


凍傷は、以下のようなことから診断をおこないます。

  • 患部の外見(臨床所見)
  • 寒冷にさらされたという事実

診断にあたっては、凍傷でない病態との区別が重要です。初期にあらわれる症状(感覚低下や白斑など)の多くは、凍傷ほど深刻でない寒冷障害(しもやけなど)でもみられます。そのため凍傷かどうか診断が難しいことがあります。

一方で、時間が経つと凍傷の特徴的な症状(壊死など)があります。凍傷の特徴的症状がみられるまで様子をみて適切に判断することが必要です。

凍瘡は、患部の外見(臨床所見)や症状があらわれた経緯から診断をおこないます。
 

治療

低体温症の治療では以下のことが大切です。

  • 濡れた衣服を脱がし、乾いた暖かい服装に着替えさせること
  • 暖かい毛布や部屋などで、体の外側から温めること
  • 暖かい飲み物などで、体の内側から温めること

発症初期であれば、乾いた衣類に着替えさせて体を温めることで回復が可能です。一方、患者さんの意識がないようなときには、救急搬送が必要です。可能であれば衣類を着替えさせ、救急車をよび、暖かい場所で待ちます。

心肺が止まっているようにみえても、病院外での心肺蘇生は勧められません。一般の方ではかすかな呼吸や脈拍を捉えることは難しいと考えられます。また重度の低体温症患者さんを急に激しく揺さぶると、命に危険を及ぼす不整脈を起こすリスクもあります。救急車が到着するまで安静にして待つことが望ましいです。

病院では温めた酸素や輸液、血液透析装置、人工心肺装置を使って正常な体温まで戻していきます。心臓が止まっている場合には心肺蘇生をおこないます。

凍傷の治療では、以下のことがおこなわれます。

  • 患者さんの体を温める
  • 患部を温水に浸す

凍傷の患者さんは低体温症になっていることがあります。体を温めるようにすることが大切です。可能であれば早期に患部を温水に浸して温めます。温水は凍傷を負っていない手足が「触れて心地よい」と感じるぐらいの温度で、熱くしすぎてはいけません(約40℃以上は望ましくありません)。

暖炉や焚火の前、もしくは電気毛布などをつかって患部を温めることは望ましくありません。凍傷をおこした部位は感覚が低下しているため、やけどに気づくことができません。そのため火や電気毛布を用いることは避けるべきです。

また凍傷を負った部分はこすれると悪化します。雪やものでこすれないようにします。また一度溶けた患部がふたたび凍結すると組織のさらなる損傷につながります。ふたたび凍結するリスクがある場合や、凍傷になった足で歩かなければいけない場合は、温めず凍結したままにするほうが組織の損傷を抑えることができると考えられます。

病院ではおなじように患部を温める対処がとられます。温まると強い痛みを感じるため鎮痛剤が投与されます。温まったら患部をやさしく洗い、清潔にして、包帯などで保護します。水泡がある場合にはつぶさないようにします。その後、抗菌薬、抗炎症薬などをつかって感染症や炎症を抑えていきます。

凍瘡は自然治癒する症状です。プロスタグランジンE1誘導体製剤やコルチコステロイドの内服で症状が軽減することがあります。