きょせいていこうせいぜんりつせんがん

去勢抵抗性前立腺がん

同義語
CRPC,castration-resistant prostate cancer

概要

去勢抵抗性前立腺がんとは、男性ホルモンの分泌を抑えるホルモン治療(手術や内分泌療法)を行うなかで、これらの治療が効きにくい状態になった前立腺がんのことです。この状態は以前、ホルモン不応性前立腺がんと呼ばれていました。
前立腺がんは、男性ホルモンのアンドロゲンやテストステロンの作用で病状が進行する性質があるため、これらの男性ホルモンを抑える薬を用いたり、男性ホルモンを作る精巣を手術で摘出したりします。このように男性ホルモンを抑えた状態を去勢状態といいます。一部の患者ではホルモン治療(=去勢状態)に抵抗してがん細胞が増殖してしまうことがあり、約10%の割合で発生するとされています。
去勢抵抗性前立腺がんの治療は、主に新規アンドロゲン受容体シグナル阻害薬(ARSI)、細胞障害性抗がん薬などを用いた薬物療法が行われます。

原因

前立腺がんは男性ホルモン(アンドロゲンやテストステロン)の影響を受けて進行する病気です。そのため、治療では手術や薬物療法によってこれらのホルモンを抑えるホルモン治療が行われます。しかし、ホルモン治療に対して抵抗性を獲得した去勢抵抗性前立腺がんでは、治療により男性ホルモンのはたらきを抑えているのにもかかわらず、がんが進行します。
この原因として、前立腺がんを構成する細胞の性質が異なることが挙げられます。同じ前立腺がんでも、ホルモン治療が効くがん細胞もあれば、効果が出にくいがん細胞もあることが分かっています。治療の過程で、がん細胞自体の性質が変化してホルモン治療が効きにくくなることもあります。結果として、ホルモン治療に抵抗性を持つがん細胞だけが生き残り、増殖を続けることで、去勢抵抗性前立腺がんという状態になると考えられています。

症状

前立腺がんの初期段階では自覚症状がなく、検診で異常を指摘されることも多くあります。ある程度腫瘍(しゅよう)が大きくなり局所で進行がみられると、主に排尿に関する症状が現れます。尿が出にくくなり、トイレに行く頻度が増え、ときには血尿や排尿時の痛みを伴うこともあります。

病気が進行し骨に転移した場合は、転移した箇所に痛みが生じます。転移した場所が脊椎(せきつい)であれば、脊髄(せきずい)への圧迫により手足のしびれや麻痺が起こることがあります。さらに、軽い衝撃でも骨折しやすくなる病的骨折の危険性も高まります。また、血液中のカルシウム値が上昇することで(高カルシウム血症)、強い倦怠感、吐き気、食欲不振、意識障害といった症状が現れることもあります。

去勢抵抗性前立腺がんの段階では、これまで有効だったホルモン治療が効かなくなり、一度抑えられていた症状が再び出現したり、新たに別の臓器へ転移することで別の症状が現れたりします。これらの症状は、それ以前の段階と比較してより強く出ることもあります。

また、転移性前立腺がんの状態では、骨への転移が起こりやすく、特に体の中心部にある脊椎、肋骨(ろっこつ)、骨盤、大腿骨(だいたいこつ)などが影響を受けやすいことが知られています。

検査・診断

前立腺の病気を調べるため、まず血液検査でPSA(前立腺特異抗原)の値を測定します。PSAは前立腺の上皮細胞から分泌されるタンパク質で、前立腺がんに関連する病気の場合のみ血液中の量が増加します。

去勢抵抗性前立腺がんは、ホルモン治療によって男性ホルモンが十分に抑えられている状態でも、血液中のPSAの値が継続的に上昇する場合に診断されます。また、PSAの上昇がみられなくても、CT検査やPET/CT検査、全身MRI検査、骨シンチグラフィ検査(骨転移の有無を調べる検査)などの画像検査で、すでに存在する転移がんが大きくなっている場合や、新たな転移が見つかった場合も去勢抵抗性前立腺がんと判断します。

治療

去勢抵抗性前立腺がんの治療は、一般的にアパルタミドやダロルタミド、エンザルタミドなどの新規アンドロゲン受容体シグナル阻害薬(ARSI)、ドセタキセルなどの細胞障害性抗がん薬を用います。このようなARSIや細胞障害性抗がん薬を単独もしくは組み合わせて治療を行っていきます。

骨のみの転移であれば、ラジウム 223(223Ra)といった放射性同位元素を用いた全身療法も適応となります。

BRCA遺伝子*変異を持つ患者にはオラパリブやタラゾパリブなどのPARP阻害薬を使用することもあります。

骨転移に対しては骨修飾薬などの薬を注射して治療を行います。また、前立腺や転移部位の症状を抑えるために放射線療法を行うこともあります。

また、米国では去勢抵抗性前立腺がんに対する新しい診断や治療方法が導入されています。具体的には、ガリウム68(68Ga)やルテチウム177(177Lu)といった放射性同位元素を使用する方法が実施されており、既存の治療に抵抗性を示す去勢抵抗性前立腺がんに対する有望な選択肢として注目を集めています。

*BRCA遺伝子:DNAの修復に関与する遺伝子であり、この遺伝子に変異がある男性は、一般的な男性に比べて前立腺がんを発症するリスクが高く、進行も早いと報告されている。前立腺がん以外にも乳がん卵巣がん、膵臓(すいぞう)がん皮膚がんなどさまざまな診療科に関わる遺伝子とされている。

治験

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最終更新日:
2025年04月10日
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2025/04/10
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