

NTT東日本関東病院 泌尿器科 部長 / 骨盤臓器脱センター センター長
中村 真樹 先生

NTT東日本関東病院 腫瘍内科 部長、緩和ケア科 部長兼務、がんゲノム遺伝診療部 部長兼務
倉持 英和 先生

NTT東日本関東病院 放射線科 主任医長
日下部 将史 先生
“PSMA陽性転移性去勢抵抗性前立腺がん”(PSMA陽性mCRPC)の治療には、薬物療法のほかに“放射性リガンド療法”という選択肢があります。NTT東日本関東病院では2026年4月からこの治療を開始し、さまざまなステージの前立腺がんの患者さんに対応できる体制を整えています。
今回は、同院で実際に行われている治療の流れや前立腺がんの患者さんへ伝えたいことについて、泌尿器科部長の中村 真樹先生、腫瘍内科部長の倉持 英和先生、放射線科主任医長の日下部 将史先生にお話を伺いました。
倉持先生:
前のページでお伝えしたとおり、放射性リガンド療法は入院で行います。入院初日は、まず看護師からのオリエンテーションなどを受けていただき、薬剤の投与は2日目に行います。
日下部先生:
薬剤の投与自体は30分程度で終了しますね。
倉持先生:
その後は特別措置病室に移動していただき、その部屋の中で過ごしていただきます。翌日、体から出る放射線量を測定し基準値以下になっていれば退院です。
倉持先生:
放射性リガンド療法は、原則として6週間に1回薬剤を投与するサイクルで、最大6サイクル行います。
退院後は経過観察のため、次の治療までの間に1~2回外来を受診していただきます。外来では血液検査やCT検査を行います。血液検査では、前立腺がんの腫瘍マーカーであるPSA、副作用で注意が必要な骨髄抑制を確認するため白血球や赤血球、血小板などを測定します。前立腺がんは骨に転移することが多いため、適宜CT検査も行います。
日下部先生:
これまでは骨の代謝をみる“骨シンチグラフィ”で骨転移の有無を調べることが多かったのですが、最近はCT検査でも一定程度骨病変を評価できるようになってきました。
倉持先生:
検査結果をもとに、病気の経過や副作用の程度を見極めて、次の治療を行うか判断します。放射性リガンド療法の薬剤は完全受注生産のため、次回の治療の実施が決まった段階で発注を行います。当院ではやむを得ない理由以外での自己都合のキャンセルの場合は、原則薬剤費をお支払いいただくことについて事前にご了承いただいています。
中村先生:
前立腺がんは進行度によって病態が異なり、患者さんのステージも多岐にわたります。当院では泌尿器科、腫瘍内科、放射線科がしっかりと連携し、それぞれのステージに応じた治療が提供できるように力を尽くしています。手術や放射線療法、薬物療法そして放射性リガンド療法まで、適切な治療を安心して受けていただける環境が整っていると思います。
当院では腫瘍内科の先生方がとても熱心に診療に取り組んでおられるので、とりわけ薬物療法に関しては泌尿器科と腫瘍内科で垣根が低く相談し合える関係性を築いています。前立腺がんと分かった段階で他の臓器に転移がある患者さん、手術や放射線療法の後に再発した患者さんに対しても万全の体制で治療にあたれるよう努めています。
倉持先生:
腫瘍内科は、病院によってどのがんの患者さんを担当するかが大きく異なります。当院では、どの臓器のがんの患者さんであっても、薬物療法は腫瘍内科が担当します。腫瘍内科では、がん薬物療法を専門とする医師が診療にあたります。
前立腺がんに対する放射性リガンド療法について、当院では腫瘍内科および放射線科が連携して診療を行っています。当院ではこれまで腫瘍内科と放射線科によって、神経内分泌腫瘍に対する放射性リガンド療法を実施してきました。前立腺がんに対する放射性リガンド療法においても、これまでの診療体制や経験を踏まえ、治療を行っています。
日下部先生:
神経内分泌腫瘍に対する放射性リガンド療法の開始にあたっては、腫瘍内科の医師が中心となり、関係する診療科が連携して診療体制を整えてきました。前立腺がんに対する放射性リガンド療法についても、同様に腫瘍内科および関係診療科が連携し、診療を行っています。
倉持先生:
当院は、地域がん診療連携拠点病院に指定されており、複数のがん関連遺伝子を網羅的に調べるがん遺伝子パネル検査を実施しています。転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)の患者さんにおいて、この検査により遺伝子変異が確認された場合には、その変異に対応する分子標的治療薬が存在するかどうかについて検討されることがあります。
中村先生:
前立腺がんは、進行に伴い治療方針の検討が必要となる場合があります。去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)に至った場合には、患者さんの病状や検査結果などを踏まえ、さまざまな治療選択肢が検討されます。放射性リガンド療法は、一定の条件を満たす場合に検討される治療法の1つです。治療方針の決定にあたっては、主治医と相談のうえ、病状の経過やこれまでの治療内容を総合的に考慮することが重要です。
そのため、ARSIによる治療を行っている患者さんにおいても、病状の変化に応じて、どのような治療選択肢があるのかについて、あらかじめ情報を把握しておくことが治療選択を検討する際の参考となる場合があります。
倉持先生・日下部先生:
放射性リガンド療法は、実施している医療機関が限られている治療法の1つです。そのため、患者さんの病状や治療経過、医療提供体制などを踏まえ、主治医が治療選択肢として提示する時期や内容は個々に異なります。治療方針を検討するにあたっては、利用可能な治療選択肢についてあらかじめ情報を整理しておくことが、主治医との相談を行う際の参考となる場合があります。
なお、本治療は、提供可能な医療機関や病室数が限られていることから、当院へご紹介いただいた場合でも、治療開始までに一定の期間を要することがあります。当院では、関連する法令や安全管理体制を踏まえつつ、治療提供体制の整備を進めています。放射性リガンド療法については、まず主治医と十分にご相談のうえ、治療選択肢の1つとして情報提供を希望される場合には、当院へお問い合わせいただくことが可能です。
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