治療
変形性股関節症の治療方法としては、保存療法と手術療法があります。一般的にまずは保存療法が行われます。治療を行なっても痛みが続く場合は手術療法が考慮されます。加齢とともに徐々に悪化することもあり、適切なタイミングで治療するかどうかを決定することが重要です。そのため、痛みがなくても定期的に専門医を受診し、経過を観察しながら、適切な時期に適切な治療を受けることが大切です。
保存療法
すり減った軟骨や変形した骨などは元に戻ることはありませんが、保存療法を行うことで症状が和らぐ可能性があります。具体的には、生活習慣の改善や運動療法、薬物療法などが行われます。
生活習慣の改善
股関節への負荷を減らすことが大切です。肥満に対しては体重管理が指導されることがあります。また痛みなどが出やすい動きを特定し、なるべくその動きをせずに済むような生活環境を整えたり、飛び跳ねるといった股関節に負荷がかかる動作は控えたりするようにします。そのほか、歩行時に杖を使用することで股関節への負荷を軽減する方法もあります。
運動療法
股関節周辺の筋力を強化するトレーニングや柔軟性を高めるためのストレッチなどが指導されることがあります。これらを行うことにより、股関節が安定し、痛みが和らいだり、病気の進行が和らいだりすることが期待できます。
ただし、過度な運動をすると股関節に負担がかかり、かえって症状を悪化させてしまうこともあるため注意が必要です。水中歩行や水泳のような股関節に負担のかかりにくい運動を行うことが大切です。
薬物療法
痛みの緩和のために痛みや炎症を抑える薬が使用されます。
手術療法
手術療法では、患者の年齢や股関節の状態に応じて関節温存手術(骨切り手術)や人工股関節置換術が行われます。
関節温存手術(骨切り手術)
自分の関節を残して温存することができる手術です。股関節部分の骨を切り、その位置や角度を調整することで、関節にかかる負担を軽減させます。最大のメリットは関節を温存できる点で、特に若年で軟骨の摩耗がまだ少ない場合に選択される治療法です。切った骨同士が癒合*するまでに時間を要するため、人工股関節置換術と比較すると入院期間は長く、リハビリテーションにも時間がかかります。また、手術後に病気が進行するとあらためて人工股関節置換術が必要になる場合があります。一般的に軟骨の摩耗が進行した状態では関節温存術はよい適応ではありませんが、若年者では選択される場合もあります。
*癒合:くっついてつながること
人工股関節置換術
股関節の変性が起きている部位を切除し、人工関節に置き換える治療方法です。特に高齢者や変形性股関節症が進行している場合に行われます。
術後は痛みが軽減され、関節の動きが改善されます。左右差が生じた足の長さをそろえることも可能です。関節温存手術よりも入院期間は短く回復が早いのがメリットです。
一方で、人工関節には関節が外れる脱臼や感染症のリスクもあります。また、術後の活動によって、人工関節のゆるみや破損が起きた場合には再手術が必要になることもあります。人工関節の耐久性には限界があり、一般的には20年前後と考えられています。そのため、若年者に人工股関節置換術を行うと、将来的に人工関節の入れ替え(再置換術)が必要となる可能性が高くなります。
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