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横須賀市立うわまち病院の慢性心不全の検査、治療法や取り組み

横須賀市立うわまち病院の慢性心不全の検査、治療法や取り組み
岩澤 孝昌 先生

横須賀市立うわまち病院 副病院長・循環器内科 部長

岩澤 孝昌 先生

目次
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横須賀市立うわまち病院の循環器内科は、心不全患者さんに対する直接的な治療のみならず、心臓リハビリテーションハイキング、スポーツ心臓リハビリテーションゴルフ、心臓リハビリテーション教室やACP(Advance Care Planning:アドバンス・ケア・プランニング)の実施など、心不全に対する包括的な取り組みを行っています。

心臓リハビリテーションやACPとはどのようなものなのでしょうか。また、慢性心不全に対してどのような検査や、治療法、取り組みを行っているのでしょうか。同院 循環器内科部長の岩澤孝昌(いわさわ たかまさ)先生に伺いました。

当院では、心不全患者さんへの定期検査を行っています。定期検査では、体重・血圧測定、X線検査、心電図、BMP血液検査、心エコー検査などを行います。

また、患者さんには心不全手帳をお渡ししています。この手帳には、体重と血圧を記入する箇所があり、以下の2つをご自宅で計測して、記録していただきます。

  • 血圧:毎日朝晩の2回
  • 体重:毎日決まった時間に1回

心不全の患者さんは、塩分を過剰摂取してしまうと、1週間で2~3kgも体重が増加します。こうした体重の増加に気付かず食生活を改善しなければ、心不全の再発を引き起こします。患者さんご自身でそうした状態に気付くことができるように、手帳に記録していただいています。

手帳は、定期検査のときにお持ちいただいており、患者さんと一緒に体重や血圧の増減を確認しています。たとえば、数日で体重が少し増加してきているような場合には、患者さんに今の状態を理解していただき、薬も服用しながら、生活習慣を改めていただいています。

心不全の主な治療方法は、利尿剤や強心薬などを使用した薬物療法となります。心筋炎拡張型心筋症による重篤な心不全の患者さんの中には、短い期間のうちに容体が急激に変化する方もいらっしゃいます。そのような場合には、東京大学や横浜市立大学の重症心不全のチームの先生方などと連携して、患者さんに不幸な転帰が訪れぬよう、補助人工心臓の植え込みなども想定しながら、治療にあたっています。

本項では、外来に通院されている患者さんに対する、薬物療法以外の包括的な治療法や当院の取り組みについてご説明します。

今後の生活の質をよくしていくために、心不全の患者さんには運動療法を行っていただきます。

まず、退院する前に心肺機能検査を受けていただき、一人ひとりの患者さんの運動能力を測る値である嫌気性(けんきせい)代謝(たいしゃ)閾値(いきち)を調べます。患者さんには、心電図を測る機器をつけて、心電図をモニターに映しながら運動することで、「これ以上運動してはいけない」という心拍数のときの感覚を覚えていただきます。

これを調べることで、どの程度の運動量で心臓に負担がかかる心拍数が出るかという指標を出すことができ、患者さんに適した運動量が分かり、その心拍数から10を引いた数字の運動を続けてください、という運動処方をお出ししています。

推奨している主運動は、ウォーキング、エアロバイク、水中でのウォーキングなどの有酸素運動で、1日あたりの運動時間の目安は30~60分程度です。有酸素運動中は、呼吸が少しつらい程度の運動にとどめてください、とお伝えしています。

また、主運動をする前には、血圧や体重に異変はないか、ご自身の体調がいつもと変わりないか、必ず確認してから準備運動をしていただくようにしています。

心不全が再発すると、症状はまず運動をしているときに出ます。進行してくると、安静時にも症状が現れます。そのため、運動習慣があることにより心臓の少しの変化にも気付きやすいといえるので、運動をおすすめしています。たとえば、いつもは難なく歩けていた距離が歩けなくなった、いつもより疲れやすくなったなど、ご自身で心不全再発の徴候に気付ける可能性が上がるのです。それは、早期受診のきっかけにもなりえます。

当院では、ACPも積極的に行っています。

ACPとは、患者さんやご家族、医師などと、患者さんが今後の人生をどのように送りたいのか、どのようにして人生の幕を閉じたいのか、といった話をする取り組みです。

ACPのお話をしたときに、「孫の卒業式まで、自分の足でしっかり歩きたい」と希望される患者さんには、そのためにはどうするべきか、という話をします。自分の希望する生き方のために、今以上に生活習慣を改善する必要があるとご理解いただければ、より前向きに生活習慣の改善に取り組むことができる患者さんもいらっしゃいます。

ほかにも、植込み型除細動装置(ICD)を入れていらっしゃる方では、お亡くなりになる直前、蘇生装置が何度も何度も作動します。蘇生装置を止めなければ、蘇生装置が起動と停止を繰り返しながら、数十分~数時間ほど生きることは可能です。しかし、そのようなお話をすると、「そうしたときには蘇生装置を止めてください」とお話しされる患者さんもいらっしゃいます。

どのような人生の幕の閉じ方を希望されるかは、患者さん一人ひとりで異なります。患者さんが希望される生き方を教えていただき、その希望にできるだけ寄り添うために、ACPの取り組みを行っています。

ACPに取り組むタイミングは病院によって違います。当院の場合は、心不全治療のための初回入院後、退院し、外来に初めて来るタイミングで、ACPに取り組んでいます。

当院では、心臓病の患者さんが積極的に運動に親しみ、生活を改善して、心疾患(心臓病)を克服することを目的とした、心臓リハビリテーションハイキング、スポーツ心臓リハビリテーションゴルフ、心臓リハビリテーション教室を定期的に開催しています。座学だけでなく、患者さんと一緒にハイキングやゴルフに行って体を動かしたり、患者さんが持参されたお弁当を見せていただいたりしながら、食生活の疑問や不安な点などの解決に努めています。また、栄養教室も開催しており、減塩食の試食会を行ったり、減塩のコツや減塩食のレシピをお伝えしたりしています。

心臓リハビリテーション教室の記事は、『心臓病と闘う会「心臓リハビリテーション教室」2019年春』、『心臓病と闘う会「スポーツ心臓リハビリテーションゴルフ」 2019年春』、『心臓病と闘う会「心臓リハビリテーションハイキング」2018年春』をご覧ください。

当院は、地域の医療機関と連携しており、当院を退院した患者さんにはご自宅近くの診療所やクリニックなどへ通院していただいています。

なかには、退院後もしばらく当院に通院していただく患者さんもいらっしゃいます。それは、処方する薬の量が定まっていない患者さんの場合です。心不全の薬は、患者さんの状態を注意深く確認しながら、徐々に増量していく必要があります。そのため、処方するお薬の量をしっかりと見極めるまでは、当院に通院していただくことになります。

また、他医療機関に通院するようになってからも、当院でも責任を持って患者さんの経過を診るために、定期外来として3~6か月ごとに1度は当院にも足を運んでいただいています。

読者へのメッセージ

心不全と診断された日から、患者さんの生活は一変します。心不全を再発してしまうのではないかという恐怖を感じながら、生活を送られている方もいらっしゃるでしょう。私はそうした心不全の怖さを、皆さんに味わってほしくありません。

心不全は、塩分の過剰摂取や過労などから、急激な症状で患者さんを恐怖に陥れる病気であるといえます。皆さんには、心不全という病気を知っていただき、まずは予防のために少しでも生活習慣の改善を図ってもらえればと思います。また、気になる症状があるような場合には早期受診を検討し、心不全のベースとなる高血圧糖尿病などの病気をお持ちの場合には、積極的にそれらの治療に取り組んでいただきたいと考えます。

そして、心不全になられた患者さんには、治療にとどまらず、これからの生活の質をできるだけ落とさないためにも、心不全という病気をしっかりと理解していただき、再発の可能性を減らしていただきたいと思っています。

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  • 横須賀市立うわまち病院 副病院長・循環器内科 部長

    岩澤 孝昌 先生

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