概要
扁桃腺は、のどの奥にあるリンパ組織の集合体のことです。
咽頭扁桃・耳管扁桃・口蓋扁桃・舌扁桃の4つの扁桃があり、リンパ球の生成やウイルス・細菌などの侵入を防ぐ働きがあります。一方で、感染が起こりやすい器官でもあり、その二面性が特徴といえます。
扁桃腺炎は、この扁桃腺が何らかの原因で炎症を起こしたものです。一般的には4つの扁桃腺のなかでも口蓋扁桃の炎症のことを指します。口蓋扁桃は口の中から見える扁桃で、病原体に晒されやすい部位にあるため、炎症が起きやすい器官 だといえます。
扁桃腺炎の中でも、細菌やウイルス感染によって急激に症状が出るものを急性扁桃腺炎、急性扁桃腺炎を繰り返えすものを慢性扁桃腺炎と呼びます。急性扁桃腺炎は小児が発症することが多いですが、慢性扁桃腺炎は成人でも罹ることがあります。
原因
扁桃腺炎はウイルスが原因で起こることが多く、アデノウイルやEBウイルス、ライノウイルスなどが挙げられます。また、溶連菌やブドウ球菌、肺炎球菌などの細菌感染が原因となることもあります。
口蓋扁桃は3歳から8歳ころにもっとも大きくなり、成長するにつれて小さくなる器官です。成人ではほとんど目立たなくなるのですが、慢性的に炎症が繰り返されると、扁桃は腫大し、成長しても大きいままです。そのため、成人になっても感染を起こす機会が多くなります。
また、扁桃腺には多数の常在菌がおり、体力が弱ったときなどに炎症を起こすことがあります。さらに、扁桃腺が腫大した状態で成人となり、飲酒や喫煙による刺激が原因となって炎症を誘発することもあります。
症状
慢性扁桃腺炎には小児から成人まで全ての世代で生じるものと、成人のみに生じるものがあります。それぞれの症状は大きく異なります。
習慣性扁桃炎
1年に3回以上の炎症を繰り返します。
特に未就学児が発症しやすく、一般的には成長と共に軽快していくのですが、成人になっても発症を繰り返す場合があります。
症状は、急性期には急性扁桃腺炎に準じ、38度以上の発熱、咽頭痛、悪寒、関節痛、首のリンパ節腫脹が挙げられます。安定期には何も症状がありません。
また、扁桃腺にある多数の溝に細菌が定着して膿栓を形成します。このような状態になると、腐敗臭のような口臭が生じます。
慢性扁桃腺炎では、扁桃腺の免疫異常が生じやすく、扁桃腺自体には目立った症状がないのに、皮膚や関節、腎臓などの扁桃腺から離れた臓器に全くことなる病気が起こることがあります。手のひらや足の裏に膿が溜まった皮疹が多くみられる、掌蹠膿疱症、肋骨、鎖骨に異常な骨化をきたす、胸肋鎖骨過形成、本来は生体を守るべき免疫物質の一つである免疫グロブリンA(IgA)が、腎臓の糸球体に沈着し炎症を起こして血尿や蛋白尿が出現する、IgA腎症の3つの疾患が代表的ですが、このような病気を扁桃病巣感染症といいます。
慢性単純性扁桃腺炎
主に大人が発症するものです。飲酒や喫煙の刺激によって絶えず扁桃腺にダメージが加わった状態が続くと、炎症が慢性化しさまざまな症状が現れます。
症状は軽度なことが多く、咽頭痛やのどの違和感、乾燥が主なものです。発熱することもありますが、微熱であることがほとんどです。
検査・診断
検査では、まず血液検査をおこなって炎症の程度や脱水の有無などを調べます。
また、のどの分泌物を綿棒で採取して病原体を特定する検査もおこなわれることがあります。病原体を特定することで、細菌性の場合には適した抗生剤を選ぶことができます。
溶連菌が原因の場合には、扁桃病巣感染症の発生率が高くなるため、慎重な経過観察へつなげることが可能です。慢性扁桃腺炎は扁桃腺以外にも病気を引き起こすことがあります。そのため、治癒後でも尿検査や血液検査などをおこなって合併症が生じていないかを調べます。
また、扁桃病巣感染症が疑われるときには、扁桃誘発テストを行うことがあります。これは、扁桃腺にマッサージや超音波による刺激を与えて、血液検査による炎症反応と体温変化をもとに合併症が悪化するかを調べる検査です。この検査は、限られた医療機関でしか行われませんが、扁桃を摘出するかを判断するのに大切な判断材料となります。
治療
治療には、薬物による保存的治療と扁桃腺の摘出を行う外科的治療があります。
保存的治療
通常の咽頭炎に則した治療を行います。解熱剤や鎮痛剤などを用い、口腔内の保湿を行います。また、細菌性の場合には原因菌に適した抗生剤が使われます。
扁桃腺炎は高熱が出やすく、激しい咽頭痛を生じるので経口摂取が困難となり、脱水状態となることもあります。そのため、全身状態をよく観察しながら脱水に対しては補液療法を行います。
扁桃腺摘出
学童期(6歳~12歳)になっても1年に4回以上の扁桃腺炎を繰り返す場合や、病巣感染がある場合、扁桃腺が高度に腫大して物の飲み込みがうまくできなかったり睡眠時無呼吸が生じたりするような場合には扁桃腺を摘出する手術を検討します。
排膿
高度な炎症によって扁桃腺周囲に膿が溜まった膿瘍を形成しているような場合には、膿を排出させるために注射で穿刺吸引を行います。吸引だけで取り切れない場合は皮膚を切開して膿瘍を取り除くこともあります。
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関連の医療相談が16件あります
扁桃腺手術
喉に濃栓がすぐできてしまい時々耳鼻科でとってもらっていたのですが、かなりしつこく大量にたまりやすいので扁桃腺をとることをすすめられました。慢性扁桃炎のため濃栓がができてしまうそうですが症状はのみこむときちょっと違和感があるくらいです。熱がでたりすることも今まではありません。このままにしておくと体にどんな悪い影響が出る可能性があるのでしょうか。 手術ということばに驚いて詳しく聞けず、入院一週間、全身麻酔の手術とネットでみて不安になり。できれば避けたいと思いまして。年齢は59歳です。
しょっちゅう繰り返す慢性扁桃炎
昨年12月より、扁桃炎を繰り返しています。毎月喉がいたくなり、高熱が出ます。 その都度、病院に行き抗生剤をもらうと、1日程度で熱が下がってきて、よくなりますが 又同じ症状を繰り返します。5/4に同様の症状が出て、セフォム系抗生剤にてよくなりましたが翌週5/11にも同じ症状で、のどの痛みから始まり高熱が出ました。扁桃炎に白い膿ががたくさんついていました。その時もセフォム系抗生剤をのみ、翌日にはよくなり、1週間投薬しました。しかし薬を飲み終え3日後に、また喉の痛みで同じ症状が出てきています。 これから病院に行く予定ですが、病院の先生もきちんとした診断をしてくれず、「まあ、扁桃腺の場合よくあるからね」としか言いません。溶連菌の検査もしてもらいましたが違いました。地方の為ほかに病院もなく、途方に暮れています。・原因を探すべく何をしてもらったらいいでしょうか? ・抗生剤の種類を変えてもらうべきでしょうか?・抗生剤の耐性菌ができてしまっているのでしょうか?・なにか扁桃腺とは違うところから来ている病気ではないでしょうか? ・扁桃炎(慢性扁桃炎)の場合、このように毎週繰り返すことはあるのでしょうか? ・解決策をどうぞ教えてください。
扁桃腺切除から数ヶ月後
2.3年前ぐらいから、年に4.5回、扁桃炎(喉が痛み、のどに白いのりのようなものができていた)により38から40度ほどの高熱が1週間続くような症状がおこっており、ずっと続くようでは厳しいため、今年の2月末に扁桃腺をとる手術を行いました。扁桃腺はとったのですが、数日前からのどがいたみ、また38度から40度ほどの発熱があり、扁桃炎に似たような症状で受診しました。流行りの新型コロナウイルスの懸念もあったのですが、その可能性は100%に近いほどないと言われ、咽頭炎であるとの診断を受け、薬を処方されました。 質問なのですが、咽頭炎であるというのはやはり扁桃炎であったことと関係があるのでしょうか?関係があるとしたら、扁桃腺をとったとしてもこのような症状があるので、扁桃腺をとった意味はなかったのでしょうか?これからもずっと苦しめられるのでしょうか?
何度入院しても治らない
同じ病院で2回、違う総合病院で1回と退院2日後に同様に発症して7月頭から現在に至ります。現在は38度の熱と喉の痛みが昨日からあります。退院後2日後間隔での発症は同じ。入院中はステロイドと抗生物質、栄養の点滴を行い、3日から5日ぐらいのタイミングで退院してます。(備考)3回目は高熱、扁桃腺の痛み、胸が痛い、両足に発疹。精密検査としては両病院とも血液検査、CT造影、レントゲンは行っています。胸と両足に関しては異常なしとのことでした。 今回3回の血液検査CRTは14~最大20、白血球数値は14000~20000とデータで頂いております。
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