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インタビュー

GIST(消化管間質腫瘍)の概要と「野生型GIST」について解説

GIST(消化管間質腫瘍)の概要と「野生型GIST」について解説
西田 俊朗 先生

地域医療機能推進機構(JCHO)大阪病院 病院長

西田 俊朗 先生

目次
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この記事の最終更新は2018年05月24日です。

ニュースなどでよく耳にする「がん」ですが、「がん」には「癌腫」と「肉腫」の二種類があります。胃がん大腸がんなどは一般的によく知られていますが、これらは「癌腫」に該当します。一方、GISTは、癌腫とは別の「肉腫」に該当します。

今回は、国立がん研究センター中央病院 前院長の西田 俊朗先生(現:地域医療機能推進機構〈JCHO〉大阪病院 院長)に、GISTの概要と、GISTのなかでも希少な野生型GISTについてお話しいただきました。

「一般的ながん=癌腫」は、各臓器の上皮や粘膜から発生します。一方、粘膜の下の骨や脂肪、筋肉などから発生する悪性腫瘍を肉腫といいます。GIST(消化管間質腫瘍)は、この肉腫のひとつです。胃にできることがもっとも多く、そのほか小腸、大腸などに生じることがあります。

素材提供:PIXTA/加工:メディカルノート

日本におけるGISTの発生頻度は年間10万人に1〜2人程度といわれており、希少がんのひとつに分類されています。

GISTは50〜60歳代に発症しやすいことがわかっています。また、小児や若年世代(AYA世代)でも発症することがありますが、これは極めて希少です。

残念ながら、GISTは進行しない限り症状が現れることが少なく、早期の段階では自覚症状がないままのことが多いです。腫瘍からの出血による下血や吐血、貧血などの症状が現れるケースもありますが、この段階になるとGISTはかなり進行してしまっていることが多いでしょう。

GISTを発生・増殖させる主な原因は、遺伝子変異です。より詳しくいうと、c-kit(KITというたんぱく質のもととなる遺伝子)あるいはPDGFRA(血小板由来増殖因子受容体α:血液細胞の増殖に関わるPDGFRというたんぱく質のもととなる遺伝子)と呼ばれる遺伝子が変異することで生じます。

遺伝子

8割程度の患者さんにc-kit遺伝子変異がみられ、1割程度の患者さんにPDGFRA遺伝子変異がみられます。30歳以降のGISTの患者さんであれば、大半にc-kit遺伝子あるいはPDGFRA遺伝子の変異が確認されるといわれています。

しかしながら、2018年4月現在、このような遺伝子変異がなぜ起こるかについては解明されておらず、研究が続けられています。

先ほど、c-kit遺伝子またはPDGFRA遺伝子が大半のGIST患者さんに確認されるとお伝えしましたが、これ以外の遺伝子変異によりGISTが生じる方もいらっしゃいます。このような希少変異をもつGISTは「野生型GIST」と呼ばれており、成人のGISTの5〜10%程度を占めています。

しかし、子どものGIST(小児型GIST)では様相が一転し、全体の約80%を「野生型GIST」が占めます。

野生型GISTには、

  • 神経線維腫症1型(NF1)に関連して発症するもので、小腸に多いタイプ
  • BRAF遺伝子に変異をもつもの
  • Carney triad(胃GIST、肺軟骨腫、副腎外傍神経節腫の3つの腫瘍を合併する症例)
  • Carney- Stratakis 症候群(胃GISTと傍神経節腫を合併する症例)
  • SDH遺伝子群に変化を持つもの(小児型GISTにはこのタイプの遺伝子変異が多く、胃によく発生する)

などさまざまなものがあります。

ただでさえGISTは希少な病気であるため、野生型GISTは極めてまれで、解明されていない点も多いです。

早期の段階では無症状のことが多いため、GISTは、CTやMRI、内視鏡などによる画像診断で偶然発見されることが多いです。特に日本では、胃がん検診が広く浸透しているので、この時に偶然みつかることが多いといわれています。

実際、日本のGISTで手術した患者さんの約半数は、症状がない早期の段階で発見されています。発見が遅くなりがちな諸外国に比べると、腫瘍が小さい段階で治療できるので、予後がよいと考えられています。

検査

画像診断でGISTが疑われると、その後、病理検査で腫瘍の組織を詳しく調べます。具体的には、免疫組織染色という検査法によって診断します。さらに、薬によって治療を行うときなどは、腫瘍のc-kitやPDGFRA遺伝子検査をすることがあります。

2018年4月現在、初発で手術できるGISTは外科切除で根治できる可能性がありますが、転移や再発したGISTには根治する方法がみつかっていません。そのため治療は、経過観察をしながら薬で病気の進行を抑えることが基本になります。

GIST、またはGISTが疑われる場合、腫瘍を切除してしまう外科的手術が第一選択になります。ただし、腫瘍が非常に小さい場合には経過観察となることもあります。

また、特定の分子・遺伝子に照準を絞って攻撃する薬を分子標的治療薬といいますが、c-kit遺伝子変異によるGISTにはこの薬の効果が確認されています。そのため、原因がc-kit遺伝子変異であれば高い治療効果が期待できますが、別の原因の場合は治療効果が見込めません。

手術

c-kitやPDGFRA遺伝子に変異のない野生型GISTには、お話しした分子標的治療薬は効きません。このように効き目のある薬が存在しない野生型GISTの場合、経過観察をしながら必要な治療を行なっていくことが多いです。

GISTのような希少がんの効果的な治療法を確立するためには、国・患者さん・企業・医療者の4者がうまく連携しなければならないと考えています。

GISTのような希少がんの患者さんには、標準治療を受けた後も体調がよく可能であれば、臨床試験(新しい薬や治療法を開発するために、人で効果や安全性を調べる試験)に参加してほしいと考えています。確かに、臨床試験への参加が、すぐに自分の治療につながるかはわかりません。しかし、それは未来の患者さんの治療に、必ず役立つと信じています。

もちろん、我々医師側も努力が必要なことはいうまでもありません。私は、これまでGISTの研究に情熱を注いできましたが、今後もGISTの治療法確立のために活動を続けていくつもりです。

小児型GISTの特徴と治療については、記事2『小児型GISTってどんな病気? 小児型GISTの特徴と治療』をご覧ください。

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