熱中症は一般的に6~8月に発症する人が多く、熱中症で救急搬送される人は例年5万人程度、死亡者は年平均で500人程度といわれています。熱中症は高温・多湿、風が弱いなどの環境下でなりやすく、暑さに対して体が対応できず体内の水分や塩分などのバランスが崩れ、体温の調整機能がうまくはたらかなくなり体内に熱がこもってしまうことで起こります。では、熱中症になるとどのような症状が見られるのでしょうか。
熱中症は重症度に応じてⅠ度(軽度)、Ⅱ度(中等度)、Ⅲ度(重度)に分類され、重症度によって現れる症状が異なります。
軽度における主な症状は、めまい・立ちくらみ、筋肉痛・筋肉の硬直(こむら返り)、手足のしびれです。脳に十分な血液が送られず血流不足になることでめまい・失神が生じ、多量の発汗による電解質(ナトリウムやカリウムなど)不足によって筋肉痛・筋肉の硬直が起こると考えられています。
中等度では、頭痛や吐き気・嘔吐、気分の不快、体がぐったりする、力が入らないなどの症状が現れます。このような症状は水分や電解質不足が進行することによって生じます。
重度になると脳などの中枢神経や肝臓・腎臓などの臓器に障害が起こり、意識障害(意識がなくなる・もうろうとする)、全身のけいれん、手足の運動障害(まっすぐ走れない・歩けない)、高体温などの症状が見られます。
高温にさらされることで深部体温*は40℃を超えることもあり、高体温の持続時間によって起こる症状が異なります。また、脱水の進行に伴って汗が出なくなります。
*深部体温:体温計で測定される皮膚温ではなく、脳や臓器など内部の体温のこと。
運動の有無にかかわらず、高温・多湿、風が弱いなどの環境下にいる人にめまい・失神、筋肉痛・筋肉の硬直、手足のしびれなどの症状が見られたら熱中症になっている可能性があります。熱中症は重症化すると死に至ることもあるので、場合によっては病院を受診したり、救急車を呼んだりする必要があります。また、熱中症のように見えて熱中症以外の病気(感染症など)のこともあるので症状が改善しない場合や悪化する場合は注意が必要です。
基本的にⅠ度の段階であれば、風通しのよい日陰や室内など涼しい場所で水分補給を行いながら様子を見てもよいでしょう。大量に汗をかいている場合には、適度に塩分を含むスポーツドリンクや経口補水液などを飲ませることがすすめられます。また、体を冷やすために冷たい飲料を選ぶようにしましょう。
体を冷やす方法としては、衣類をゆるめて太い血管のある腋の下や両側の首筋、足の付け根を氷で冷やす、冷たい濡れタオルで体を拭くなど、直接体を冷やすのも有効です。なお、うちわや扇風機などを活用し風にあたるのもよいでしょう。
Ⅰ度の症状が改善しない場合や悪化する場合、自力で水分摂取ができない場合には平日の日中なら大人は近くの内科や総合診療科、子どもは内科や総合診療科または小児科などへ、休日・夜間であれば救急外来を受診したほうがよいでしょう。
Ⅱ度・Ⅲ度の症状がある場合は早急な受診が求められます。熱中症は急速に症状が進行し、死に至ることもあります。そのため、Ⅱ度・Ⅲ度の症状が見られたらすぐに救急外来を受診するか救急車を呼ぶなどの対応が必要です。病院を受診するまでの間、救急車の到着を待っている間も水分補給や体を冷やし続けるようにしましょう。ただし、意識がない場合は無理に水を飲ませてはいけません。
熱中症による死亡者は年平均で500人程度といわれています。緊急を要する場合もあるので、重症化を防ぐために早い段階で異常に気づき、応急処置を行うことが重要です。Ⅰ度の症状が見られたら水分補給はもとより、涼しい場所で体をしっかりと冷やし、重症化を防ぎましょう。改善しない場合などでは病院を受診することを検討しましょう。
なお、体温調節機能が十分とはいえない小児や高齢者においては、症状の目立たないうちにⅡ度以上の熱中症を生じることがあります。そのため、特に暑い季節においては家族や関わる専門職の方が熱中症予防への意識を十分に持って行動することが重要です。
ゆきあかり診療所 所長
菅波 祐太 先生の所属医療機関
小林 聡史 先生の所属医療機関
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2年前の夏に熱中症にかかりました。 数ヶ月くらいだるさがあったのですが治りました。 しかし、それから暑い場所に行くとフラフラしたり、気持ち悪くなったりする事が増えました。 熱中症の後遺症というのはあるのでしょうか?
熱中症、自律神経
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