概要
眼筋麻痺とは、目の動きをつかさどる筋肉(眼筋)が何らかの原因でうまく動かなくなる状態を指します。
目の周りには、内直筋や外直筋、上直筋、上斜筋、下直筋、下斜筋の6種類の筋肉がついており、これらの筋肉を総称して“眼筋”と呼びます。目は脳からの信号が神経を通って眼筋に伝わることで動きます。病気などによってこの神経が通る経路のどこかに障害を受けると、眼筋が動かなくなって眼筋麻痺となります。
眼筋麻痺の症状としては、複視(ものが二重に見えること)がもっとも多くみられます。また、目の奥に痛みが生じたり、まぶたが腫れたり垂れたりすることもあります。
眼筋麻痺の治療では、原因となる病気に対する治療と眼症状に対する対症療法が行われます。
原因
眼筋麻痺は、さまざまな原因により引き起こされます。
目を動かす筋肉である眼筋は、脳からの信号が神経を通り筋肉に伝わって動きます。そのため、脳梗塞や脳腫瘍などの病気によって脳からの信号が筋肉に伝わらなくなると眼筋麻痺を生じます。
また、眼筋麻痺は眼筋自体が障害を受けることでも発症します。眼筋に障害を起こす病気としては、甲状腺眼症、外眼筋炎、筋ジストロフィー、ミトコンドリアミオパチーなどがあり、さらに重症筋無力症などの神経と眼筋のつなぎ目に起こる病気も原因となります。
そのほか、動脈瘤や副鼻腔炎、眼球を取り囲む周囲の骨(眼窩壁)の骨折などによる眼神経の圧迫や、眼筋の骨折部への陥頓(はまりこむこと)、糖尿病、高血圧、ギラン・バレー症候群といった病気が原因になることもあります。
症状
眼筋麻痺では、目の動きの調節がうまく行われなくなり、複視といわれるものが二重に見える症状が現れます。
人はものを見るために同時に両方の目を無意識に動かし、左右それぞれの目に映った像を1つに融合することでものを1つの像として認識します。
眼筋麻痺では何らかの原因によって眼筋が動かなくなり、両方の目の視線が一致しなくなることで左右の像を1つのものとして認識(融像)できず、複視が起こります。また、複視以外にも目の奥の痛みや、まぶたが腫れたり垂れたりする症状のほか、原因となる病気による症状がみられることもあります。たとえば脳梗塞やギラン・バレー症候群が原因となる場合は手足の感覚異常や麻痺などを伴います。
検査・診断
眼筋麻痺を診断するために、詳しく眼球運動の変化を確認したり、対光反射(光を当てると瞳孔が小さくなる反応)や、まぶたが下がっていないかなどを調べたりします。
また、眼筋、眼筋につながる神経、眼筋と神経のつなぎ目のどこに異常が生じているかを特定するために目に映る像のズレを調べる複像検査や、脳や眼球周りの異常の有無などを調べるために頭部CTや頭部MRIといった画像検査、原因として考えられる糖尿病や甲状腺、重症筋無力症などの病気を確認するために血液検査などが行われることもあります。
治療
眼筋麻痺では、原因となる病気を特定し、その病気に対する治療と、眼症状に対する対症療法を行います。
たとえば、脳動脈瘤が原因の場合には脳血管内治療(コイル塞栓術)、重症筋無力症の場合にはステロイドや免疫抑制薬による薬物療法、胸腺摘除術などによる手術治療が検討されます。炎症性の病気に対してはステロイドの全身投与、血流が下がることで生じた場合にはビタミンB12や脳循環代謝改善薬の内服、ステロイドの内服・点滴が行われます。
対症療法としては、眼帯やコンタクトレンズで片目を遮ったり、プリズムメガネを使用したりするほか、最終的には手術で両目の向き(眼位)を整えて複視の軽減を図ります。
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