神経膠腫(グリオーマ)とは、脳の内部から発生する脳実質内腫瘍の一つです。神経膠腫の治療では、手術、放射線療法、化学療法(抗がん剤など、薬を使ったがんの治療法)が主な治療法となります。
今回は、山形大学医学部脳神経外科の教授である園田 順彦先生に、神経膠腫の治療の選択肢についてお話しいただきました。
神経膠腫の分類や症状については記事1『神経膠腫(グリオーマ)とは? 病気の分類・症状を解説』をご覧ください。
記事1でお話ししたように、神経膠腫は、世界保健機関(WHO)が決めたグレード(基準)によって、悪性度別にⅠ〜Ⅳに分類されます。
このグレードは、病理学的悪性度と臨床学的悪性度によって決定されます。まず病理学的悪性度では、顕微鏡を用いて腫瘍を観察し、その悪性度を評価します。さらに臨床学的悪性度では、患者さんがどれくらい生存できるかを評価し、悪性度をはかります。
この2つを加味し、神経膠腫のグレードは決定されます。
神経膠腫の診断では、MRI(磁気を使い、体の断面を写す検査)が有効です。昔であれば、神経膠腫が脳卒中(のうそっちゅう)と間違われるケースも少なくありませんでした。しかし近年では、MRIの精度が向上しているため誤診は減っていると考えられます。
神経膠腫の診断において、2018年現在、遺伝子検査は日本では保険適用になっていません。しかし世界では、神経膠腫の診断に遺伝子検査を取り入れている国もあります。
日本でも遺伝子検査ができる医療施設もあり、神経膠腫の正確な診断ができるようになってきています。
今後は日本でも、遺伝子検査によって、より正確な診断を可能にすることができるのではないかと期待されています。
神経膠腫の治療法は、主に手術、放射線療法、化学療法(抗がん剤など、薬を使ったがんの治療法)になります。原則的には、切除できない場所に腫瘍がある場合を除き、手術が第一選択となります。
手術とともに、放射線療法や化学療法による治療を組み合わせるケースが多いでしょう。
一般的に、薬が使用されるのは、グレードⅢとⅣの神経膠腫です。
近年では、有効な薬が登場し、神経膠腫の患者さんに使用される薬の選択肢は広がりつつあります。
神経膠腫の治療における手術の役割は、症状を悪化させずになるべく腫瘍を取りのぞくことであると考えられています。
したがって、手術が重要な役割を果たすといっても、神経膠腫を切除すると麻痺が悪化してしまうようなケースでは手術することは難しいでしょう。このような場合は、手術は診断を確定させる程度の最小限の摘出にとどめ、放射線治療を選択するという判断の仕方もあります。
手術するかどうかは、病状とともに仕事や手術後の生活なども含め判断されるでしょう。
私は、神経膠腫の解明を目指す研究を続けています。たとえば、神経膠腫はほとんど転移することがありません。しかし、脳の別の場所や脊髄(せきずい)に転移することがまれにあることがわかっています。この場合、どのようなメカニズムで転移が発生するか研究に取り組んできました。
今後、解明が進められれば、より有効な治療法の開発につながるかもしれないと期待しています。
神経膠腫と一言でいっても、ステージによって症状や進行のスピードはそれぞれ異なります。お話ししたような手術、放射線療法、化学療法のうち、有効な治療の組み合わせも患者さんによって異なるでしょう。
信頼できると感じる主治医とともに神経膠腫の治療に取り組んでほしいと思います。
山形大学 医学部 脳神経外科学講座 教授
関連の医療相談が10件あります
神経鞘腫とは
19歳。鼠蹊部のしこりが気になり大きな病院でCTを受けたところ、しこりはなんともなかったですがたまたま脊椎?右側に神経鞘腫の可能性と言われました。 今のところ何の症状もないので驚いています。 病院の先生に大丈夫なのか質問したところ、悪いものではない、心配しなくてもいいとのことでした。 特に経過観察もありません。 ですがネットで調べると悪性などと出てきてとても怖いです。 質問なのですが、 ①CTで神経鞘腫はわかるのか ②経過観察と言われなかったがそのままでいいのか? ③悪性?悪い癌になってしまうのか を伺いたいです。
小児がんサバイバーの寿命と晩期合併症について
1歳の頃、神経芽腫(右後腹部)と診断されました。 手術で腫瘍を摘出後、約3年間2か月に一度、放射線治療と抗がん剤治療を受けました。 その後15歳まで定期検診を続けましたが、再発はしていません。 43歳の頃、子宮筋腫と卵巣腫瘍の手術を受けましたが、卵巣腫瘍は良性でした。 小児がんサバイバーは、二次がんや成人病のリスクが高く、寿命も少し短いという情報をネットで読んだことがあり、不安を感じています。 以下の点について、ご教示・ご助言頂きたく、どうぞよろしくお願い致します。 ①平均寿命は、統計的には何歳くらいですか? ②現状では定期的に健康診断を受け、気になる症状があれば該当科を受診していますが、他に留意すべき事があれば教えて下さい。
膝裏からアキレス腱の痺れ、痛み
約2年前にふざけて子供に左膝裏を叩かれた時に電気が走ったような痺れがあり、触ってみるとコブのようなものが…。大きい病院の整形外科でエコ-検査を受けると4つ腫瘍があると言われました。 今は経過観察で1年に1回のペースでMRI検査を受けています。自分でも触らなくても見てわかるほど腫瘍は大きくなっていて、膝は曲げるのに困難だし この頃はアキレス腱も痛く曲げると激痛が走ります。 担当の先生は膝裏は神経が沢山かよっていて手術すると歩けなくなるから手術は出来ない!!と最初から真剣に話を聞いてくれません。 1年まって診てもらっても数分で終わる診察、こんなに左膝が巨大になってきてるのに何も処置はないのか、と不安でしかなりません。 他の病院にも行って診てもらった方がいいのでしょうか?教えてもらいたいです。
がん検診に関する質問です
血液一滴から各種がんを早期発見するシステムがあると聞いたのですが、既に実用化されているのでしょうか? まだ実用化されていないのなら、いつ頃、どこで、いくらぐらいで利用可能か推定できませんか? 現在のがん検診は苦痛が大きくあまり受けたくないので、この新技術を待つべきかの判断の一助にしたいと思っています。
※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。
「神経膠腫」を登録すると、新着の情報をお知らせします
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。