糖尿病性腎症とは糖尿病の合併症の1つで、高血糖状態が続いたことで腎機能が低下した状態のことです。多くは糖尿病になってからおおよそ10〜15年以上経過してから発症するといわれています。糖尿病性腎症の初期はほとんど無症状のため、早期発見のために糖尿病の方は症状の有無にかかわらず定期的な尿検査が重要となります。治療法は食事療法や運動療法を基本とし、病気の段階(ステージ)に合わせた適切な治療が検討されます。
本記事では、糖尿病性腎症のステージと治療方針を解説します。
ステージ(病期)とは、病気の進行度を表した指標のことです。糖尿病性腎症のステージは、尿検査で分かる“尿タンパク(アルブミン)”と、血液検査から分かる“糸球体ろ過量(GFR:Glomerular Filtration Rate)”によって決められます。
尿タンパクとは、尿中に必要以上のタンパク質が出ていることです。腎臓には、血液をろ過するフィルターのような役割をする“糸球体”があり、体に必要なものを残して老廃物などの不要なものを排泄するはたらきをしています。
腎機能が正常な場合、タンパク質が尿に排泄されることはほぼありませんが、腎機能が低下すると尿中に漏れ出てきます。そのため、尿中に出てくるタンパク質が多いほど、腎臓に異常がある可能性が高いと判断されます。
糸球体ろ過量(GFR)とは、1分間に腎臓でろ過される血液量のことをいいます。
本来、GFRを正確に調べるには24時間の畜尿や採血が必要ですが、負担が大きいため、通常は1回の採血で分かるクレアチニン(筋肉内で作られる老廃物)値から性別や年齢などを用いて算出した“推算糸球体ろ過量(eGFR)”で評価することが一般的です。この数値が低いほど、腎臓に異常があると考えられます。
糖尿病性腎症は、それぞれの病期によって治療方法が異なります。
自覚症状はほとんどなし。
食事療法を基本とした、血糖をコントロールする治療が検討される。
自覚症状はほとんどなく、ごく微量のタンパク質(微量アルブミン)が漏れ出てくる。適切な治療によってタンパク質が漏れ出ない状態に戻すことができると考えられている。
食事療法を基本とした、血糖をコントロールする治療や血圧をコントロールする治療などが検討される。
むくみや息切れ、胸苦しさ、食欲不振、満腹感などの自覚症状が出てくる。第3期以降では、進行を遅らせることはできてもよい状態に戻すことはできないといわれている。
食事療法や運動療法を基本とした、血糖や血圧をコントロールする治療などが検討される。
顔色が悪い、嘔気あるいは嘔吐、筋肉の強直、つりやすい、筋肉や骨の痛み、手のしびれや痛み、腹痛と発熱などの自覚症状が出ることがある。
血圧コントロール、低タンパク食、透析療法導入などが検討される。
透析療法中
ステージ5でもステージ4と同様の自覚症状が出ることがある。
透析療法や腎移植などが検討される。
症状を悪化させないためには、早期に治療を開始することが大切です。治療の基本は、食事療法や血糖値を下げる経口血糖降下剤やインスリン(血糖値を一定に保つホルモン)などを正しく使用して血糖コントロールをすることです。糖尿病性腎症は、早期であれば厳密な血糖コントロールによって進行を遅らすことができるといわれています。
治療方針は患者のステージや状態によって異なるので、医師と相談しながら決めていくことが大切です。不明点があれば、かかりつけ医に相談しましょう。
イーヘルスクリニック新宿院 院長、帝京大学大学院公衆衛生学研究科 非常勤講師、久留米大学医学部公衆衛生学講座 助教
日本内科学会 認定内科医日本腎臓学会 腎臓専門医・腎臓指導医日本抗加齢医学会 抗加齢専門医日本医師会 認定産業医
埼玉医科大学卒業後、都内の大学附属病院で研修を修了。東京慈恵会医科大学附属病院、足利赤十字病院、神奈川県立汐見台病院などに勤務、研鑽を積む。2016年より帝京大学大学院公衆衛生学研究科に入学し、2018年9月よりハーバード大学公衆衛生大学院(Harvard T.H. Chan School of Public Health)に留学。予防医療に特化したメディカルクリニックで勤務後、2022年4月東京都新宿区に「イーヘルスクリニック新宿院 (eHealth clinic 新宿院)」を開院。複数企業の嘱託産業医としても勤務中。
天野 方一 先生の所属医療機関
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今の状態をこのまま、ほうっておいて良いのか?
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