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局所療法や放射線療法、薬物療法などを組み合わせて行う肝臓がんの治療

局所療法や放射線療法、薬物療法などを組み合わせて行う肝臓がんの治療
沼田 和司 先生

横浜市立大学附属市民総合医療センター 消化器病センター 診療教授

沼田 和司 先生

目次
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肝臓がん肝細胞がん)の治療法には、外科切除、穿刺(せんし)局所療法、薬物療法、放射線療法などがあります。横浜市立大学附属市民総合医療センターでは、これらの方法を組み合わせることにより、一人ひとりの患者さんの容体や希望に応じた治療法を行っています。引き続き、同院消化器病センター 担当部長の沼田和司先生にお話しいただきました。

肝臓がんには、肝臓の細胞(肝細胞)から生じた原発性肝臓がんと、他臓器に発生したがんのがん細胞が肝臓に転移し、肝臓で大きくなる転移性肝臓がんの2種類があります。

さらに、原発性肝臓がんは、がんが発生した箇所により、肝細胞がん肝内胆管がんに細分されます。本記事では、原発性肝臓がんの9割を占める肝細胞がんの治療法を中心に解説します。なお、肝細胞がんと胆管がん、転移性肝臓がんの治療方針はそれぞれ大きく異なるので注意が必要です。

肝細胞がんの治療には、外科切除(手術)、穿刺療法(ラジオ波焼灼術)、放射線療法(定位放射線治療)、肝動脈塞栓術、化学療法(分子標的治療薬)などがあります。このうち、早期のステージの肝細胞がんに適応され、根治を目指せる治療法は、切除、穿刺療法、放射線療法の3つです。当院では、これら3つの治療法を組み合わせることで、より確実にがんを取り切れるように努めています。

実際の治療選択では、腫瘍のサイズおよび患者さんの肝機能の状態などから、一人ひとりに適切な治療法を判断していきます。肝臓がんの治療には複数の方法があり、複数の方法が適応となる場合は、患者さんのご希望に合わせて治療法を選択することが可能です。

年齢が若く体力のある方で、がんが3個以下の場合は、外科切除が推奨されます。一方、腫瘍が4個以上ある場合はすでに広範囲にがんが広がっている可能性が高く、外科切除をしても再発までの期間が短い可能性が高いため、手術は基本的に推奨されません。

肝癌診療ガイドライン2017年版では、3cm以下かつ単発の肝細胞がんに対しては、第一選択として外科切除、第二選択としてラジオ波焼灼が推奨とされています。ただし、手術とそのほかの治療法のどちらが有用であるか、多施設での前向きな検討が国内で実施されており、局所再発率には有意な差がないとの報告もありますが、生存期間についてのエビデンスはまだ得られていません(2019年10月時点)。外科切除以外の治療も進歩を続けており、やがてこの順番がなくなるかもしれません。

​ラジオ波焼灼術(RFA:radiofrequency ablation)は、穿刺局所療法と呼ばれる治療法の1つです。超音波(エコー)ガイド下で肝臓がんの位置を確認しながら、皮膚表面より電極針を腫瘍に刺し入れて治療を行います。電極針からはラジオ波という高周波が発生し、この電波によってがんを焼灼することができます。

ラジオ波焼灼術は通常開腹せずに行うため、手術が適応できない場合にも、体に大きな負担をかけずに行うことのできる治療法であり、当院でも積極的に実施しています。

このように、ラジオ波焼灼術をはじめとした穿刺局所療法は、がんを局所的に焼灼することができる侵襲性の低い治療法です。しかし、穿刺療法は、超音波ガイド下で位置を確認しながら、がんまで治療用の針を刺す必要があります。そのため、がんが見えづらい位置にできている場合や、がんの近くに太い血管がある場合は、穿刺療法を行うことが難しいといえます。

穿刺治療の実施が困難な肝細胞がんであり、がんの直径が5cm以内でほかに転移が見られないものに対しては、定位放射線治療(SBRT:stereotactic radiotherapy)を検討することがあります。また、門脈腫瘍塞栓や胆管塞栓のあるケースでほかの治療法が適応できない場合にも、放射線治療が選択されることがあります。

当院は大船中央病院と連携体制を築いており、放射線治療を行う場合は大船中央病院に依頼する形で実施します。

ただし、肝機能が良好ではない患者さんの場合(Child-Pughスコア8点以上)は、原則的に放射線治療は適応外となります。がんがほかの消化器官の近くにある場合は、以前は放射線治療の対象外でしたが、近年では胃薬を予防的に飲みながら、1回の照射量を減らし、その分、照射回数を増やすことで消化管へのダメージを減らすことが可能となりました。

原発性肝細胞がんに対する放射線治療の適応

  • ほかの局所療法(穿刺療法など)が適応困難である
  • 腫瘍の数は原則ひとつで、直径4cm以下であり、転移がない
  • 肝機能が良好である(原則Child-Pugh分類におけるAまたはB7)

肝動脈化学塞栓療法(TACE)は、太ももの付け根の動脈から肝動脈までカテーテルを挿入し、血管から塞栓物質と抗がん剤を入れてがん細胞を栄養する血管を塞ぐことで、がんを治療する方法です。肝動脈の血流を塞栓しても、門脈(栄養や酸素を含む血液が流れる静脈)の血流は保たれるので、正常肝細胞へのダメージは少ないといわれています。

ほかの治療法と併用して実施することもありますが、肝動脈化学塞栓療法を繰り返すと肝機能悪化のリスクが高まることが分かってきています。そのため、当院ではできる限りラジオ波焼灼術や定位放射線治療でがんを消失させ、肝予備能がCP A(Child-Pugh分類「A」)の方の場合は、その後は後述する化学療法を行いながら、必要に応じて肝動脈化学塞栓療法を選択するようにしています。

外科切除や穿刺局所療法、定位放射線治療が適応されない進行肝細胞がんに対しては、化学療法として、分子標的治療薬(TKI:tyrosine kinase inhibitor)を用いた薬物治療が行われます。肝細胞がんに対して2019年10月現在用いられている分子標的治療薬は、ソラフェニブ、レンバチニブ、レゴラフェニブの3種類です。

2009年のソラフェニブの登場以降、進行肝臓がんに対する分子標的治療が続々と登場しています。2019年6月には、ラムシルマブが血清AFP値400ng/mL以上の進行肝細胞がんの二次治療薬として承認を受けました。

近年では、免疫チェックポイント阻害剤(ペムブロリズマブなど)と分子標的治療薬の併用療法に関するさまざまな研究が進められており、手術後またはラジオ波焼灼術後の再発予防として、肝機能が良好な進行肝細胞がんを対象にした併用療法の治験を実施中です(2022年研究完了予定)。肝臓がんに対する化学療法は、分子標的治療薬と免疫チェックポイント阻害剤の併用療法を含め、今後もさらに拡大・発展していくと予想しています。

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