記事1『心筋梗塞、脳卒中を引き起こす脂質異常症とは?』では、脂質異常症の原因や診断などを、記事2『脂質異常症の予防法――コレステロール制限について』では、コレステロール含有量が少ない食事など、脂質異常症の予防法についてお伝えしました。それでは、脂質異常症と診断された場合には、どのような治療を行うのでしょうか。本記事では、横須賀市立うわまち病院における脂質異常症の治療法について、同院の循環器内科部長である岩澤孝昌先生に伺いました。
当院では食事療法・食事指導・運動療法など、生活習慣の改善のためのサポートを行っています。生活習慣の改善だけではコントロールが難しいと判断した場合は、併せて薬物療法を行います。
当院では、急を要さない病態であれば、すぐに薬物療法を行うのではなく、できる限り栄養指導や運動療法といった生活習慣の改善による治療を行っていきたいと考えています。なかでも中性脂肪の数値が上昇している原因は、食生活に起因することが多いといえるため、特に生活習慣の改善による治療を積極的に行っています。
当院で行っている栄養指導には、実際に日々食事を作られているご家族の方にも必ず立ち会っていただいています。
また、外食が多い方には、コンビニエンスストアやファストフード店、居酒屋などでどういったメニューを選べばよいのかをお伝えしています。
生活習慣の改善だけでは治療が難しいような場合は、薬を飲むことのメリット・デメリットなどをしっかりとご説明し、理解していただいたうえで、薬物療法を行います。
当院では、まずスタチンという薬を投与します。スタチンでもコントロールが難しい場合には、エゼチミブという薬を投与します。エゼチミブは、食事で摂取したコレステロールを、腸に吸収させず便として排出させる薬です。主にこれらの薬を用いて、コレステロール値を目標値に近づけていく治療を行っています。
〈薬の副作用〉
薬には副作用があります。もし、心当たりがない筋肉痛などが現れた場合は、かかりつけ医にご相談ください。また、薬を変えても副作用がつらい場合や、もともと持たれている病気によって薬が飲めない患者さんの場合は、PCSK9阻害薬という薬を注射する治療法などの選択肢もあります。
当院の役目としては、目標とするコレステロール値に到達させるだけではなく、それが維持されているかどうかを、定期的にフォローすることだと考えています。そのため、患者さんが、当院から患者さんのご自宅近くのクリニックや診療所などの先生のところへお戻りになる際には、しっかりと連携をとり、情報共有をしています。
飢饉など食料不足に伴う病気は、現代の日本ではかなり少なくなりました。いま、飽食の時代に私たちは生きており、脂質異常症や高血圧、糖尿病といった病気が増えています。この時代において、私たちが健康のためにできることとは、自分で何を食べるのかをきちんと選択していくことです。「You are what you eat(あなたの食べているものが、あなたの体を作っている)」という言葉どおり、自分が選んで口にした食べ物が、数か月後や来年の体を作っていきます。脂質異常症は、体が「余分な栄養が体の中に入ってきている。このままでは動脈硬化性疾患になってしまう」というサインを出しているということですから、そのサインとしっかり向き合い、生活習慣、特に食生活を改善していただきたいと思います。
横須賀市立うわまち病院 副病院長・循環器内科 部長
「脂質異常症」を登録すると、新着の情報をお知らせします
本ページにおける情報は、医師本人の申告に基づいて掲載しております。内容については弊社においても可能な限り配慮しておりますが、最新の情報については公開情報等をご確認いただき、またご自身でお問い合わせいただきますようお願いします。
なお、弊社はいかなる場合にも、掲載された情報の誤り、不正確等にもとづく損害に対して責任を負わないものとします。
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。