概要
眼内に炎症を起こす病気をぶどう膜炎といいます。ぶどう膜炎は炎症をおこす部位によって、前部ぶどう膜炎・中間部ぶどう膜炎・後部ぶどう膜炎に分けることができます。このうち、虹彩毛様体炎は前部ぶどう膜炎に分類され、虹彩(角膜と水晶体の間にある薄い茶色い膜)と虹彩に隣接する毛様体という部位に炎症を起こす病気です。
原因
虹彩毛様体炎を起こす原因はさまざまです。大きく分けると感染症と非感染症のものがあります。感染性虹彩毛様体炎で代表的なものはヘルペスウイルス、梅毒、結核などがあります。非感染性のものであればベーチェット病、サルコイドーシス、強直性脊椎炎に伴うぶどう膜や炎症性腸疾患関連ぶどう膜炎のようなHLA B27関連ぶどう膜炎、若年性関節リウマチに伴うぶどう膜炎などがあります。これらはそれぞれの病気の特徴があり、治療の方法も異なります。
虹彩毛様体炎をおこすぶどう膜炎を、下記にまとめました。
急性
炎症が治療開始後3ヶ月以内に治まるものを急性ぶどう膜炎と定義します。
- 感染性:ヘルペス、梅毒
- 非感染性:ベーチェット、サルコイドーシス、HLA B27関連ぶどう膜炎など
慢性
炎症が治療開始しても3ヶ月以上経過しても炎症が残るものを慢性ぶどう膜炎と定義します。
- 感染性:サイトメガロウイルス、結核、(梅毒)
- 非感染性:サルコイドーシス、炎症性腸疾患、若年性関節リウマチなど
症状
急性の虹彩毛様体炎は充血や眼痛を伴い、炎症の程度が強い場合には視力低下が現れるのが一般的です。一方、慢性の虹彩毛様体炎では、充血は強くなく視力低下や飛蚊症(目の前にゴミが飛んでいるようにみえる状態)を訴え、来院されることが多いです。
また、慢性の場合(特に小児)では、症状がそこまで強く現れないケースもみられます。
検査・診断
上述した通り、虹彩毛様体炎は感染性・非感染性ともにあるため、治療前にしっかりと病態を把握することが重要です。後述しますが、感染性虹彩毛様体炎を非感染性と間違って診断し抗炎症薬であるステロイドのみで治療を行うと症状は悪化してしまうので、感染症かどうかの判断が非常に重要になってきます。まずは病歴から、関節炎、消化器疾患、呼吸器、皮膚など全身に虹彩毛様体炎をきたす病気を合併しているかどうか判断します。
次に炎症を起こした眼球を観察し、病気に特徴的な所見を探していきます。採血では、結核や梅毒等の感染症の検査を行います。それに加えて、疑った病気に対する血液検査や画像検査があれば追加します(たとえばサルコイドーシスを疑った場合は採血で血中アンジオテンシン転移酵素、胸部レントゲンなどを行う)。また、ヘルペス等の感染症を疑った場合は眼内の水(房水)を採取してウイルスの遺伝子を検出する検査方法(ポリメラーゼ連鎖反応)を行います。
治療
治療は感染性か非感性性かによって異なります。感染性の場合は、感染症を治療します。たとえば、ヘルペス虹彩毛様体炎であれば抗ヘルペス薬の内服治療を行います。一方、非感染性の場合は、ステロイド点眼を中心とした抗炎症治療を行います。炎症が点眼等の局所治療では不十分な場合はステロイドの内服を行うこともあります。また、強直性脊椎炎や若年性リウマチなどの全身疾患の症状の一つとして虹彩毛様体炎が生じている場合は、膠原病内科や小児科と連携して全身疾患の治療を行います。
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