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術後精神病
術後精神病とは、脳以外の身体の手術後に出現する、錯乱(さくらん)、せん妄、不眠、徘徊(はいかい)、興奮、衝動行為などの総称です。インターネット上では、術後精神障害と検索されていることも多いようで...
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術後精神病じゅつごせいしんびょう (別:術後精神障害)

更新日時: 2017年04月25日【更新履歴
更新履歴
2017年04月25日
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概要

術後精神病とは、脳以外の身体の手術後に出現する、錯乱(さくらん)、せん妄、不眠、徘徊(はいかい)、興奮、衝動行為などの総称です。インターネット上では、術後精神障害と検索されていることも多いようです。せん妄とは認知症と誤認されることも多いですが、治療のためには両者の鑑別が必要です。せん妄では、精神科的な治療や対応に目がいきがちですが、第一に求められるのは、せん妄の原因を取り除くことを主眼においた身体的治療です。

原因

せん妄の原因は以下のとおり分類されます。

  • 単独で意識障害を引き起こす直接因子
  • 単独では意識障害を引き起こさないがせん妄を惹起する要因となる促進因子
  • せん妄の準備状態となる準備因子

術後せん妄では、手術による外的侵襲が直接因子となります。促進因子として、疼痛、便秘、尿閉、脱水、ドレーン、身体拘束などの身体的要因や抑うつ、不安、環境変化、不眠などの精神的要因、準備因子として、高齢、認知機能障害、重篤な身体疾患、頭部疾患の既往、せん妄の既往、アルコール多飲などがそれぞれ挙げられます。

せん妄の直接因子としては脳梗塞、脳出血、脳腫瘍、頭部外傷などの頭蓋内器質性疾患や脳炎、髄膜炎などの中枢神経系疾患、肝機能障害、腎機能障害、心不全、悪性腫瘍、貧血、低血糖、電解質異常、ビタミン欠乏症、感染症、敗血症のような全身性疾患など身体疾患によるものがあげられます。また手術による外的侵襲やアルコール、覚せい剤、大麻、麻薬への依存、連用、中断もせん妄の原因となります。また身体疾患の治療に対して使用されているステロイド、麻薬系鎮痛薬、非麻薬系鎮痛薬、免疫抑制剤、抗ヒスタミン薬、ベンゾジアゼピン系薬剤(主に抗不安薬、睡眠導入薬)もせん妄の直接因子となります。

これらが原因で起こった意識障害に疼痛、便秘、尿閉、脱水、ドレーン、拘束などの身体的要因、抑うつ、不安、環境変化、不眠などの精神的要因が促進因子となり、せん妄を引き起こします。

これらの背景には高齢、認知機能障害、重篤な身体疾患、頭部疾患の既往、せん妄の既往、アルコール多飲歴が存在することがあります。

症状

脳以外の身体の手術後に以下のような症状が現れます。

  • 錯乱(さくらん)
  • せん妄
  • 不眠
  • 徘徊(はいかい)
  • 興奮
  • 衝動行為

など

せん妄では、注意の障害、注意力および意識水準の変動性といった軽度の意識障害が現れます。また、以下のような一過性の認知機能の障害がみられます。

  • 記憶欠損(きおくけっそん)
  • 見当識(けんとうしき)
  • 言語
  • 視空間認知
  • 知覚

検査・診断

せん妄と認知症は互いに誤認される場合が多いです。治療にあたっては両者の鑑別が必要ですが、一旦せん妄が発症すると認知症の有無を含め、鑑別が困難となる場合もあります。

そのため、高齢の患者については、入院時に記銘力障害(もの忘れ)や見当識障害(日時の誤認)など認知症を疑う症状の有無について確認しておくことが有用です。

治療

せん妄の治療となると、精神科的な治療や対応のみに目がいきがちです。しかし、第一に求められるのはせん妄の原因の除去を主眼においた身体的治療です。身体状態の悪化はせん妄の重要な危険因子となり、逆に身体状態の改善はせん妄を軽快させます。

そのため原疾患(身体疾患)の治療を行うことは、せん妄の治療において必須です。感染症、炎症、脱水、低栄養状態、電解質異常、高血糖、低血糖などについては、速やかな治療(補正)が求められます。その他、疼痛、便秘など患者に苦痛を及ぼす症状についても、可能な限り緩和する必要があります。

また、睡眠・覚醒リズムの調整のため、日中は太陽光をとり入れ夜間は消灯する、日中はテレビ、ラジオ、音楽など適度な刺激を与える、時計、カレンダー、家族の写真をベットサイドに置き見当識を確保する、補聴器や眼鏡を使用して視覚、聴覚を確保する、危険物をベッドサイドから除去する、離床センサーを付けるなどの環境調整も有用です。

家族に対しては、認知症と異なり原因が除去されれば回復可能であることを説明したうえで、日中の声掛けなど家族のできるケアを提案します。辻褄の合わない言動については、無理に修正せず、話を合わせ、話題を変えることが推奨されます。

せん妄に対する薬物治療としては、2011年9月に厚生労働省から器質性疾患に伴うせん妄・精神運動興奮状態・易怒性に対して一部の薬剤の適応外使用を認めるとの通知が出されました。パーキンソン病に伴う幻覚に対しても同様に、一部の薬剤の適応外使用が認められています。

実際には、はじめに抗精神病薬を頓用で使用し効果判定を行います。効果が乏しい場合は追加投与を検討し、症状の改善が見られない場合には抗精神病薬の定時投与に切り替えます。不眠や不穏が強い場合にはベンゾジアゼピンの併用を行う場合もあります。しかし、せん妄に対する薬物治療はあくまで対症療法であるため、むやみに投薬を行わず、ごく軽度のせん妄の場合は睡眠・覚醒リズムの調整(夜間の消灯、日中の声かけなど)により改善を図ることが推奨されます。