便に関する悩みは人それぞれですが、なかには軟便で悩んでいる人もいます。軟便は正常の便より柔らかい状態を指しますが、一口に軟便といっても捉え方や感じ方は人によってさまざまです。主な原因には、食事内容やストレスなど生活習慣によるもののほか、病気や薬の服用などがあります。また、原因によっては便の色に特徴が現れたり、腹痛や吐き気、発熱などの症状を伴ったりすることもあります。
このページでは軟便の定義やメカニズム、対処方法などについてお伝えします。
軟便とは便に含まれる水分が増えることによって、便が柔らかくなることをいいます。
軟便は下痢の一種ということができ、水分を多く含む液状またはそれに近い糞便を排泄する状態で、排便回数あるいは排便量の増加を伴う場合が多いことを下痢症と呼びます。
人間の便は、含まれる水分量によってさまざまな形状になります。この形状を7つのタイプに分類することができ、その指標を“ブリストル便形状尺度”と呼びます。
ブリストル便形状尺度は便秘や下痢を診断する際の1つの目安として使用されており、タイプ1がもっとも水分量が少なく、タイプ7がもっとも多い水分を含んでいます。なかでも、正常な便はタイプ3~5で、水分量が70~80%含まれています。一方で、軟便はタイプ6~7に分類され、水分量が80%以上だと軟便、あるいは下痢といわれます。
軟便は大腸のはたらきに異常があるときに生じるといわれています。
大腸とは、水分やミネラルなどの栄養素を吸収し、便を作り出す臓器であるほか、便の硬さを調整する役割も果たしています。便の硬さを調節するのは、蠕動運動、便の水分の吸収、大腸からの水分の分泌といった3つのはたらきによるものです。
蠕動運動とは腸が伸び縮みすることを指し、このはたらきによって大腸にある内容物を移動させます。しかし、何らかの原因によって蠕動運動が活発になりすぎた場合は、内容物が腸にとどまる時間が短くなることで、大腸が十分に便の水分を吸収できなくなるため、軟便や下痢などが生じやすくなります。反対に、蠕動運動が不十分である場合は、内容物が腸にとどまる時間が長くなり、大腸が水分を吸収しすぎることで、便秘が生じやすくなります。
また、腸からの水分の分泌とは、大腸から分泌されるさまざまな水分のことを指します。何らかの原因によって、この水分が過剰に分泌されると、大腸の水分の吸収が追いつかなくなるため、下痢を生じることとなります。
軟便の主な原因として、食事やストレスなどの生活習慣のほか、病気や薬の服用などがあります。
消費期限の切れた食べ物を食べた場合などの食あたりや、消化に悪いものを食べすぎた場合の消化不良、あるいは飲酒をした場合などに軟便が生じることがあります。また、日頃飲み慣れない水などを飲んだ場合には、水あたりも考えられます。
さらに、精神的なストレスや気温の変化などによる体へのストレスが原因で軟便が生じることもあります。
一時的な軟便は、ウイルスや細菌による感染症(いわゆるお腹の風邪)によって生じることもあります。また、長期にわたる軟便の原因となる病気としては、過敏性腸症候群やクローン病、潰瘍性大腸炎などが考えられます。
なお、抗菌薬などの治療薬を服用することによって軟便が生じることもあります。
一時的な軽い軟便であれば、食事内容やストレスなどの生活習慣が原因と考えられます。そのため、生活習慣を改善し、お腹を温める、消化のよい食べ物を食べるなど腸をいたわるようにすれば、数日で軽快することが期待できます。
一方、便の色がいつもと違う場合や、腹痛、吐き気などの症状が強い場合、数日経っても軟便が治らない場合などには、思わぬ原因で軟便が生じている可能性もあるため、早めに病院を受診することも検討しましょう。受診する際の診療科は、内科や消化器内科が望ましいでしょう。また、まずはかかりつけ医に相談してみるものよいでしょう。
軟便は便が柔らかいというだけでほかに特徴がない場合もあれば、色などに特徴が現れることもあります。たとえば、便に血が混じっている場合や便が黒っぽい、白っぽいという場合には、何らかの病気が隠れている可能性があります。
軟便には腹痛・吐き気・発熱・発疹などの症状が伴うことがあります。特に発熱がある場合には食中毒が生じている可能性があるほか、吐き気が強く、嘔吐が頻回で水分が取れない場合には脱水症状を起こす可能性が考えられます。
軟便は食事・ストレスなどの生活習慣によって引き起こされることもあれば、病気や薬の服用によって生じることもあります。一時的な軽い軟便であれば、生活習慣の改善や腸を安静に保つことによって軽快することが予想されます。
ただし、便の色がいつもと違う場合や、軟便以外にも気になる症状が強くでている場合、軟便が続く場合には、病気の可能性も考えて放置せずに内科や消化器内科、もしくはかかりつけ医に相談するようにしましょう。
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