めいそうしんけいはんしゃ

迷走神経反射

同義語
血管迷走神経反射
最終更新日:
2024年07月17日
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2024/07/17
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概要

迷走神経反射とは、長時間の立位や座位、強い痛み、疲れ、ストレスなどをきっかけに心拍数の減少や血圧の低下が生じることです。場合によっては失神に至るケースもあり、神経調整性失神の1つに含まれます。

ヒトの体は交感神経と副交感神経からなる自律神経によって支配され、活動しているときには交感神経がはたらき、心身がリラックスしているときには副交感神経がはたらきます。この2つの神経が状況に応じて切り替わることで体の状態を調整しています。

迷走神経は副交感神経の1つで、迷走神経が刺激されるとリラックス状態に切り替わり、心拍数が減少し血圧も下がります。そのためさまざまな原因によって反射的に迷走神経がはたらくことで、急激に心拍数が減少したり血圧が低下したりして脳が貧血状態となります。これによって血の気が引く、気分が悪い、冷や汗、めまいなどの症状が数分間続き、失神に至ることもあります。

失神は体を動かしているときや寝ている姿勢のときに起こることは少なく、日中(特に午前中)に立位や座位で同じ姿勢を維持しているときに生じやすいといわれています。たとえば電車内や朝礼で立っていた時、入浴時、排便後、注射を打つときなどに多くみられます。

原因

迷走神経反射は、以下のような要因によって迷走神経が反射的にはたらくことで起こります。

  • 長時間の立位や座位姿勢
  • 激しい運動
  • 痛み
  • 恐怖
  • ストレス
  • 疲労
  • 環境(人混みの中・閉鎖空間)など

上記のほか、脱水や塩分制限、飲酒、薬(α遮断薬・硝酸薬(しょうさんやく)・利尿薬・カルシウム拮抗薬など)が誘因になることもあります。

症状

多くの場合、迷走神経反射によって脳の血流量が低下すると、血の気が引く、気分が悪い、吐き気・嘔吐、あくびが出る、急に眠くなる、冷や汗、頭が重い、頭痛、腹痛、視界がぼやける、視界が暗くなるなどの症状が現れます(前駆(ぜんく)症状)。典型例では、これらの症状が数分間続きます。なお、心臓が原因で起こる失神の場合には数秒で意識を失うといわれています。

このような症状の後、気の遠くなるようなめまいや失神が起こることがありますが、横になって休むと脳の血流が回復して症状が改善し、通常1分以内に意識が回復します。そのため、脳の後遺症が起こることはありません。

しかし、失神をきっかけに転倒して地面に頭をぶつける可能性があるため、前駆症状が現れたらなるべく早く休むことが大切です。休む際には座るだけでなく、しっかりと横になる必要があります。

検査・診断

迷走神経反射の診断は問診が中心で、どのような状況で失神が起こったか、前駆症状はあったか、どのくらいの頻度で失神が起こっているかなど、詳しく確認します。ヘッドアップティルト試験という迷走神経反射を再現する検査が行われることもありますが、問診だけで診断がつく場合もあります。

また、失神は起立性低血圧や不整脈急性大動脈解離(きゅうせいだいどうみゃくかいり)大動脈弁狭窄症(だいどうみゃくべんきょうさくしょう)肺塞栓症(はいそくせんしょう)肺高血圧症脳血管障害など多様な病気によって生じる可能性があります。そのため、このような病気が隠れていないかを調べるために、心電図、24時間ホルター心電図、運動負荷心電図、心臓超音波検査、血液検査、尿検査などが行われることもあります。

治療

迷走神経反射では、長時間の立位や激しい運動、脱水、飲酒、塩分制限、寝不足などの誘因を避けることや、失神を回避する方法などの生活指導が基本となります。

また、誘因となる薬剤を使用している場合には、その薬剤の減量または中止を検討します。

そのほかの治療としては、起立調整訓練、薬物療法、ペースメーカ治療などがあります。

起立調整訓練

起立調整訓練は、両足を壁の前に15~20cmほど出して、頭、背中、お尻で後ろの壁に寄りかかり、その姿勢を30分保つ訓練です。

患者自身で毎日1~2回行う必要がありますが、継続することで長時間の立位による失神が起こりにくくなります。

薬物療法

生活指導でも失神を繰り返す場合や、転倒による外傷リスクが高い高齢者に対しては、薬物療法が考慮されます。

徐脈や血圧低下を防ぐ目的で、β遮断薬、ジソピラミド、抗コリン薬、交感神経刺激薬、鉱質コルチコイド、セロトニン再吸収阻害薬などが用いられます。

ペースメーカ治療

ペースメーカ治療は、起立調整訓練や薬物療法でも十分な効果が得られない人や、長い心停止を伴う人などに考慮されます。ペースメーカを植え込む手術を行います。

予防

失神に至るのを防ぐために、前駆症状が現れたらなるべく早く横になるか、少しでも頭の位置が低くなるようしゃがんで休みましょう。特にお風呂上がりは迷走神経反射が生じやすいため注意が必要です。疲労や寝不足、二日酔いの状態で起こりやすくなるため、休息や睡眠を十分取りましょう。

休むのが難しい場合には、立っているとき、あるいは座っているときに足を動かしたり、足を組んだり、両腕を組んで引っ張り合ったりしましょう。このような体位の変更や運動によって血流が改善し、失神を回避または遅らせることができます。

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