迷走神経反射
- 同義語
- 血管迷走神経反射
概要
迷走神経反射(血管迷走神経反射)とは、長時間の立位や座位、強い痛み、疲れ、ストレスなどをきっかけとして生じる心拍数の減少や血圧の低下のことです。
副交感神経の1つである迷走神経が反射的にはたらくことで、心拍数が減少したり血圧が低下したりして脳が貧血状態となります。これによって、血の気が引く、気分が悪い、冷や汗、めまいなどの症状が数分間続き、最終的には失神に至ります。
失神は体を動かしているときや寝ている姿勢で起こることは少なく、立位や座位で同じ姿勢を維持しているときに発生しやすいです。また、日中(特に午前中)に起こりやすいといわれています。
よくあるのが、電車で通勤中であったり、朝礼で立っていた後に失神して運ばれたりするケースです。
原因
血管迷走神経反射はさまざまな要因によって迷走神経が反射的にはたらき、これに伴って心拍数や血圧が低下し、脳が貧血状態になることで失神が起こります。
ヒトの体は交感神経と副交感神経からなる自律神経によって支配され、活動しているときに交感神経がはたらき、心身がリラックスしているときに副交感神経がはたらきます。この2つの神経が状況に応じて切り替わることで体の状態を調整しています。
迷走神経は副交感神経の1つで、迷走神経が刺激されるとリラックス状態に切り替わり、急激に心拍数が減少し血圧も下がっていきます。
意識を保つには脳への十分な血流量が必要なため、急激に心拍数や血圧が低下すると脳への血流量が減ってしまい、その結果意識を失うことになるのです。
迷走神経が反射的にはたらく要因として、長時間の立位・座位姿勢、痛み、恐怖、ストレス、疲労、環境(人混みの中・閉鎖空間)などが挙げられ、学校の朝礼や通勤時の満員電車、注射を打つときなどによくみられます。
脱水や塩分制限、飲酒、薬(α遮断薬・硝酸薬・利尿薬・カルシウム拮抗薬など)が誘因になることもあります。
症状
多くの場合、迷走神経反射によって脳の血流量が低下すると、血の気が引く、気分が悪い、吐き気・嘔吐、あくびが出る、急に眠くなる、冷や汗、頭が重い、頭痛、腹痛、視界がぼやける、視界が暗くなるなどの症状が現れます(前駆症状)。これらの症状が数分間続くことが典型的です。心臓が原因で起こる失神の場合には数秒で意識を失います。
このような症状の後、気の遠くなるようなめまいや失神が起こることがありますが、横になって休めば脳の血流がよくなって症状が改善し、意識も通常1分以内に回復します。そのため、脳の後遺症が起こることはありません。
しかし、失神をきっかけに転倒して地面に頭をぶつけたりすることがあるため、前駆症状が現れたらなるべく早く休むことが大切です。休む際には座らず、きちんと横になることが大事です。
検査・診断
血管迷走神経反射の診断は問診が中心で、どのような状況で失神が起こったか、前駆症状はあったか、どのくらいの頻度で失神が起こっているかなど、詳しく確認します。
ヘッドアップティルト試験という血管迷走神経反射を再現する検査が行われることもありますが、問診だけで診断がつく場合もあります。
ただし、失神はほかの病気によっても生じ、原因疾患として起立性低血圧、不整脈、急性大動脈解離、大動脈弁狭窄症、肺塞栓症、肺高血圧症、脳血管障害など多岐にわたります。
そのため、このような病気が隠れていないかを調べるために、心電図、24時間ホルター心電図、運動負荷心電図、心臓超音波検査、血液検査、尿検査などが行われることもあります。
治療
血管迷走神経反射では、誘因(長時間の立位・脱水・飲酒・塩分制限など)を避けることや、失神を回避する方法などの生活指導が基本となります。
また、誘因となる薬剤を使用している場合には、その薬剤の減量または中止を検討します。
そのほかの治療としては、起立調整訓練法、薬物療法、ペースメーカ治療などがあります。
起立調整訓練
起立調整訓練は、両足を壁の前に15~20cmほど出して、頭、背中、お尻で後ろの壁に寄りかかり、その姿勢を30分保つ訓練です。
患者自身で毎日1~2回行う必要がありますが、継続することで長時間の立位による失神が起こりにくくなります。
薬物療法
生活指導でも失神を繰り返す場合や、転倒による外傷リスクが高い高齢者に対しては、薬物療法が考慮されます。
徐脈や血圧低下を防ぐ目的で、β遮断薬、ジソピラミド、抗コリン薬、交感神経刺激薬、鉱質コルチコイド、セロトニン再吸収阻害薬などが用いられます。
ペースメーカ治療
ペースメーカ治療は、起立調整訓練や薬物療法でも十分な効果が得られない人や、長い心停止を伴う人などに考慮される治療です。ペースメーカ植え込み手術を行います。
予防
失神に至るのを防ぐために、前駆症状が現れたらなるべく早く横になるか、少しでも頭の位置が低くなるようしゃがんで休みましょう。疲れている、寝不足である、二日酔いであると起こりやすくなるので、休みと睡眠不足には気を付けましょう。
休むのが難しい場合には、立っているとき、あるいは座っているときに足を動かしたり、足を組んだり、両腕を組んで引っ張り合ったりしましょう。このような体位の変更や運動によって血流が改善し、失神を回避または遅らせることができます。
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