めいそうしんけいはんしゃ

迷走神経反射

目次

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概要

迷走神経反射とは、長時間の起立やストレスをきっかけとして発症し、一時的な低血圧となって脳への血流が減少することで失神に至る病気です。「神経調節性失神」と呼称される場合もあります。なお、ここでいう失神とは、脳への血流が減少することで発症する一時的な意識障害のことを指しています。

迷走神経反射が起こると、失神をきっかけに転倒する恐れがあります。その際の外傷には注意が必要です。

原因

人の意識が正常に保たれるためには、脳への血流が担保されていることが重要です。脳への血流が減少すると、意識を保つことが難しくなり、一時的な意識消失(失神)が引き起こされます。1年間に、1,000人あたり6.2人の方が失神を起こすといわれています。

迷走神経反射は、本来は迷走神経がはたらくべき状況ではないにもかかわらず反射的にはたらくことで、低血圧をきっかけとした失神が引き起こされる病気です。迷走神経がはたらく状況とは、体が休息に入っている状態です。このとき、心拍数は落ち着き、血管が広がって血圧も落ち着く傾向があります。こうした状況は、就寝前などリラックスしているときに生理的にもみられます。

しかし、迷走神経反射は、学校の朝礼で長時間起立している場合などに起こることがあります。本来は重力に逆らって血液を脳に供給することが必要ですが、起立をしていると、迷走神経反射をきたして失神に至ると考えられます。また、疲れているとき、睡眠不足のとき、肉体的・精神的ストレスがかかっているときなどに、迷走神経反射は生じやすくなります。

症状

迷走神経反射が起こるとき、多くの場合、前兆(前駆症状)が現れます。

  • 気分が悪くなる
  • 吐き気がする
  • あくびが出る
  • 急に眠くなる
  • 視野が少しずつぼやけていく

前兆(前駆症状)を過ぎると一時的な意識消失に至ります。状況によっては、意識消失をきっかけに転倒し、外傷をきたすことがあるので注意が必要です。そこで、以上のような症状を自覚したら、なるべく安全なところに避難して、横になるか少なくとも座るようにしましょう。

検査・診断

失神が生じる状況についての詳細な問診が重要です。前駆症状の有無や、失神に至った経緯などが確認されます。迷走神経反射の可能性が高いと判断された場合は、追加の検査を行う必要がないこともあります。

しかし、失神を引き起こす原因にはさまざまなものがあるため、鑑別診断が重要となります。たとえば、急性心筋梗塞、不整脈、弁膜症などの重篤な病気が原因となっていることがあります。このような病気が隠れていないかどうかを確認するため、心電図やホルター心電図、心臓エコー検査が行われることがあります。その他、糖尿病の神経症状として失神が生じることもあるため、血液検査によって糖尿病が原因かどうかを確認することがあります。

迷走神経反射を含む神経調節性失神の検査としては、自律神経のはたらきを調べるティルト試験(ヘッドアップティルト試験)や、迷走神経を刺激する頸動脈洞マッサージなどが行われることもあります。また、薬剤やヒステリーが原因となることもあるため、こうした観点からの問診も重要です。

治療

迷走神経反射は、それ自体が命にかかわるわけではありません。横になって安静を保つことで、前駆症状や意識消失を含め、症状の自然回復が期待できます。しかし、転倒時などのケガには十分な注意が必要です。前駆症状を自覚したときは、ケガが起こらない状況を早く確保するようにしましょう。

また、迷走神経反射をきたす誘因としては、長時間の起立、精神的・肉体的なストレス、脱水などがあります。迷走神経反射による失神を繰り返す場合は特に、こうした誘因を避ける努力が大切です。失神の原因が迷走神経反射以外にあると考えられる場合には、鑑別に基づいた適切な治療が必要です。