かんぼつにゅうとう

陥没乳頭

最終更新日:
2023年05月25日
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2023/05/25
更新しました
2018/08/15
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概要

陥没乳頭とは、乳頭が突出しておらず、乳輪の奥に入り込んだり先端がくぼんだりしている状態のことです。程度は人によってさまざまで、指の刺激で引き出すことができる軽いものから、吸引器などを使っても出すことができない重度のものまであります。

陥没乳頭の多くは生まれつきで、男女問わず現れます。また、生まれつきの陥没乳頭は家族からの遺伝が多く、先天性陥没乳頭の約半分は遺伝であるともいわれています。生まれつきではない場合でも、成長に伴う乳房の変化や炎症、外傷、乳房に対する外科治療などによって陥没乳頭になることがあります。

この病気で問題になることは、見た目(整容性)や授乳、感染です。指や吸引器などで刺激を与えても乳頭が引き出せないような重度の陥没乳頭は母乳育児に影響を及ぼすことがあります。また、くぼんでいるところは清潔が保ちにくいため、垢がたまり感染を起こしやすく、乳輪の下に(うみ)がたまってしまう乳輪下膿瘍(にゅうりんかのうよう)の原因になることも問題です。その場合、切開して膿を出すと一時的に改善しますが、繰り返し起こる可能性もあります。

この病気の注意点は、くぼみの原因として、乳がんなどの悪性腫瘍(あくせいしゅよう)が陥没乳頭を引き起こしている場合があることです。乳頭からの分泌物や乳房のしこりなどの症状がみられる場合は、早めに受診しましょう。

原因

陥没乳頭の原因には先天性(生まれつき)と後天性(後から起こるもの)の2つがあります。

先天性の陥没乳頭は乳腺と呼ばれる母乳を作る組織と、母乳が通る乳管の発達のバランスが悪く、乳頭を内側に引き込んでしまうことによって起こります。また、索状物と呼ばれる固い組織が乳頭を内側に引っ張ることで発症することもあります。

後天性の陥没乳頭は、乳房に対する打撲や突然の体重減少、乳腺炎の後遺症、乳房への外科治療などで乳房の形が変わることでも引き起こされます。一方、乳がんや乳房パジェット病、乳管内乳頭腫、乳管腺腫、乳頭部腺腫といった治療が必要な病気が原因になることもあります。

症状

先天性の陥没乳頭は乳頭が陥没していることが主な症状です。また、先天性の陥没乳頭はその程度により、以下のように分けられます。

  • 軽症:陥没乳頭を簡単に指で引き出せるが、いずれまた陥没するもの
  • 中等症:ピンセットなどで何とか引き出すと突出するが、離すとすぐに陥没するもの
  • 重症: 指ではまったく引き出せず、手術をしなければ乳頭が出てこないもの。くぼんでいるところに汚れがたまり感染を起こすと、赤くなったり腫れたり、乳頭や乳輪からが出ることもあります。炎症を繰り返すと固さを触れることもあります。

後天性のうち、乳がんなどの悪性の病気が陥没乳頭の原因となっている場合は、乳頭から透明または血が混じった分泌物が出たり、乳頭がただれたり、しこりを触れることもあります。これらの病気が原因となっている場合は、陥没乳頭の手術を行うことでがんの発見を遅らせることがあるため、検査などによる鑑別診断が重要となります。受診時は、正確な症状を主治医に伝えるようにしましょう。

検査・診断

陥没乳頭の症状は外観に関するものであるため、思春期以降に自分や家族などが見た目を気にして病院を受診することがほとんどです。特別な検査はありませんが、吸引器を用いることで陥没の程度を調べることができます。乳輪の下にがたまっているときは、超音波検査などで状態を調べます。後天性の陥没乳頭の場合は乳がんなどの悪性疾患が原因となっていることもあるため、鑑別診断のための検査を行うことがあります。

通常、陥没乳頭の診療は形成外科で行われますが、悪性疾患が疑われる場合は乳腺外科での検査が必要になり、マンモグラフィ、乳房超音波検査、MRI、CT、細胞診、組織診などが行われます。

治療

思春期より前に発症したものは、成長とともに軽快することもあります。女性では妊娠・出産を機に陥没が自然修正されることもあります。また、形や授乳機能に問題がある場合、手術適応になります。保存的治療と外科治療があります。

保存的治療

乳頭に小さなスポイトのような器具を装着して、乳頭を吸引します。軽症例では、持続的に吸引することによって乳頭の突出が維持できるようになることがあります。

治療期間はさまざまで、数か月から数年程度必要になることもあります。

外科治療

保存的治療を行っても症状が改善しない場合に手術が行われます。乳管を傷付けないように乳頭を切開し、陥没の原因を取り除いたのちに縫合します。手術後は突出させた乳頭をブラジャーの圧などでつぶさないように保護するとよいでしょう。重症の場合は手術を行っても再び陥没することもあり、吸引治療の併用が必要になることもあります。

がたまっている場合、切開して膿を出すだけだと再発の可能性が高いです。そのため、Seton法という感染の原因になっている乳管にナイロンの糸を通して膿を出すことで落ち着かせる方法があります。落ち着いた後は、陥没乳頭の形態を整える手術をするとともに、その原因部分を切除します。

悪性疾患が原因の陥没乳頭の治療

乳がんなどの悪性疾患が陥没乳頭の原因となっている場合は、形態を整える手術を行うのではなく、外科手術、化学療法(抗がん薬治療)、分子標的療法、放射線療法などの悪性疾患に対する治療を行います。

参考文献

  1. 酒井成身,他.PEPARS 美容外科・抗加齢医療ー基本から最先端までー.2015;99:41-53.
  2. 酒井成身,他.形成外科 Vol.53 2010年増刊号 形成外科の治療指針 update 2010.2010;53:S133.
  3. 梶川明義,他.形成外科 Vol.62 2019年増刊号 形成外科の治療指針 update 2019.2019;62:S138.
  4. 津川浩一郎.乳癌の臨床.2016;31(5):405-405.
  5. 小宮貴子,他.PEPARS 実践的局所麻酔ー私のコツー.2012;72:20-27.

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