概要
13トリソミー症候群とは、13番目の染色体が過剰に存在することでさまざまな形態異常や成長障害などがみられる染色体異常症の1つです。染色体異常症の中では頻度が高く、5,000~12,000人に1人の割合で生まれるといわれています。
13トリソミー症候群は受精時の卵子か精子の染色体数に異常があるために起こり、高年齢がリスクであるといわれています。重度の心疾患や成長障害がみられることが多く、1年を超えて生存している13トリソミー児はまれといわれてきました。しかし、近年では積極的な治療を行うことでより長期に生存する例も増えてきており、10年以上にわたって生存することもあります。
原因
13トリソミー症候群は、通常2本のペアである13番目の染色体が過剰に存在し、3本になった状態のことです。染色体は両親それぞれから1本ずつ受け継がれますが、何らかの異常でいずれかの染色体が2本存在し、受精後にトリソミーの状態となることがあります。
染色体異常は母親側の卵子が原因になることが多いですが、父親側の精子に起こることもあり、いずれの場合も、年齢が高くなるにつれて染色体異常が増えることが知られています。染色体異常は13番染色体に限らず、さまざまな染色体にみられることがあります。多くの場合、染色体異常は胎児の発生に致命的な影響を及ぼし、流産や死産に至ります。13トリソミー症候群は染色体異常の中でも出産に至る可能性があるものの1つであり、さまざまな形態異常や成長障害を伴った新生児が誕生します。
染色体異常は加齢によって発生頻度が高くなるものの、どの年代でも一定の割合で起こりうるものです。必ずしも遺伝が関係するものではありませんが、トリソミーをもつ子どもの妊娠や流産・死産を繰り返す場合は母親か父親のいずれかに染色体の異常がある場合もあります。
症状
13トリソミー症候群ではさまざまな身体的な異常が見られます。代表的な症状には、以下のものがあります。
など
身体的な異常のほかにも成長障害や重度の発達の遅れがみられることが多く、先天性心疾患や中枢神経系の病気(けいれんなど)をはじめとして全身の臓器にさまざまな合併症がみられることがあります。
検査・診断
13トリソミー症候群の診断は、出生前に行われるものと出生後に行われるものがあります。
出生前の検査・診断
出生前に行われる検査は出生前検査とも呼ばれ、染色体異常の有無やリスクを調べる遺伝学的検査や、超音波で脳や心臓などの形態学的な状態を調べる超音波検査があります。
出生前検査として行われる超音波検査は一般的な妊婦健診で行われるものに対して、超音波断層法検査と呼ばれ、より胎児の形態を詳しく調べる検査です。
遺伝学的検査は特別な理由や強い希望があった場合にのみ実施されます。遺伝学的検査には、母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査(NIPT)、妊娠初期コンバインド検査、絨毛検査、母体血清マーカー検査、羊水検査などがあり、それぞれ検査が受けられる妊娠週数が限られています。
このうち、NIPT、コンバインド検査、母体血清マーカー検査は染色体異常のリスクを調べるものであり、確定検査ではありません(非確定検査)。非確定検査で陽性となった場合は、診断を確定させるために絨毛検査や羊水検査といった確定検査が必要になります。
出生後の検査・診断
出生後には、新生児の外見から13トリソミー症候群が診断できることもあります。診断を確定させるためには、新生児の血液から染色体異常を確かめる必要があります。
治療
13トリソミー症候群に対する根本的な治療はなく、症状に応じた治療を行います。一般的に予後不良であるため、保温や栄養補給のみの処置に限り、積極的な治療を行わないことも少なくありません。
しかし、近年ではより積極的な治療を行うことで長期間に生存する可能性も報告されています。たとえば、呼吸困難に対して人工呼吸器、気管切開などの呼吸管理や酸素療法、栄養補給のために胃ろうの形成や中心静脈栄養と呼ばれる点滴による栄養補給などを行います。症状に応じて強心薬、利尿薬、抗不整脈薬、抗血小板薬、抗凝固薬、末梢血管拡張薬などのさまざまな薬剤を用いることもあります。
また、先天性の心疾患がみられることも多く、外科手術などによる治療が行われることもあります。ただし、どのような治療介入を行うかは医療機関によっても意見が分かれており、特に体の負担が大きい心臓血管手術を行うか否かなどは、子どもの最善の利益を優先し、家族の意思をもとに慎重に検討を重ねたうえで決定されます。
医師の方へ
「13トリソミー症候群」を登録すると、新着の情報をお知らせします