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FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症

最終更新日:
2020年03月30日
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2020/03/30
更新しました。
2020/03/27
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概要

FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症とは、血液中のリン濃度調整ホルモンであるFGF23の作用が強くなることで腎臓のはたらきに異常が生じ、尿に大量のリンが排泄され、血液中のリンが不足することで生じる“くる病骨軟化症”のことです。

くる病・骨軟化症とは、リンの不足によって骨の石灰化(骨を強くする作用)が妨げられ、骨が弱くなる病気です。遺伝子の変異などにより生まれつき持続する低リン血症が生じる場合には、主に脚の骨が変形して歩行障害や低身長などを引き起こすくる病を発症します。一方で成人となって骨端線が閉じた後に、腫瘍(しゅよう)などの原因により持続する低リン血症が生じた場合には、骨のひびのような骨折である偽骨折や骨折を全身に生じ、全身に痛みが起きる骨軟化症を発症します。くる病・骨軟化症の原因は、腸からリンとカルシウムが血中に吸収される際に必要なビタミンDが不足すること、リンの排泄量が増加することの二つに分けられます。

FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症は血液中のリン濃度調整ホルモンであるFGF23の作用が強くなることで、前者と後者の両方の原因によって引き起こされるくる病であり、尿のもととなる体液からリンなどの電解質を再吸収して体内に戻す腎臓の尿細管のはたらきが低下することと、活性型ビタミンDの産生が低下することが原因です。尿細管のはたらきが低下する原因としては遺伝子の変異が関与する生まれつきのもの、腫瘍や薬の副作用によるものがあります。

治療として、これまでは不足したリンや活性型ビタミンDの補給を行っていましたが、骨の脆弱性(ぜいじゃくせい)は治すことができず骨の変形が見られたり、些細な刺激で骨折したりするなどの症状が現れていました。また薬の副作用が原因である場合は、薬を中止することで徐々に症状が改善します。腫瘍が原因であれば、原因となる腫瘍が見つかった場合には腫瘍を周囲の正常組織も含めて拡大切除を行うことで完治しますが、原因となる腫瘍が見つからないことも多々あります。最近低リン血症の原因となっている過剰なFGF23に対する抗体医薬が日本でも使用可能となり、小児や成人重症例での骨の変形や低身長、偽骨折、骨折をより効率的に治療できるようになっています。

原因

FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症は、2000年に見つかったリン濃度調整ホルモンであるFGF23の作用が強くなり血液中のリンが不足することによって、骨が弱く柔らかくなってしまう病気です。リンはカルシウムと共にハイドロキシアパタイトを作って骨を強く硬くするはたらきがあるため、リンが過剰に排泄されることで血液中のリンが不足すると、骨が弱くなってしまうのです。

血液中のリンの不足は、リン濃度調整ホルモンであるFGF23の作用が強くなることで、いったん尿中に排泄されたリンを再び体内に吸収する腎臓の尿細管が正常に機能しなくなり尿中へのリンの排泄が増えることと、活性型ビタミンDの産生が低下して腸管からのカルシウムとリンの吸収が低下することで引き起こされます。FGF23は通常は骨の骨細胞で作られるホルモンですが、FGF23の作用が強くなる原因には大きく分けると次に挙げる二つのものがあります。

遺伝子の変異

FGF23関連低リン血症性くる病の原因としてもっとも多いとされているのが、性染色体の一種であるX染色体にのっている遺伝子の変異によるX染色体連鎖性低リン血症性くる病です。

そのほかにも、常染色体にのっている遺伝子の変異による常染色体優性低リン血症性くる病、常染色体劣性低リン血症性くる病などが存在することも分かっています。

これらの遺伝子の変異による骨細胞でのFGF23産生が過剰となって発症するFGF23関連低リン血症性くる病は遺伝するのが特徴で、家族性低リン血症性くる病とも呼ばれています。

その他にもマッキューン・オルブライト(McCune-Albright)症候群や線維性骨異形成表皮母斑症候群、神経線維腫症1型などの先天性、後天性の遺伝子変異が原因となる疾患でもFGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症を発症する可能性があると知られています。

腫瘍や薬剤の影響

遺伝子の変異によるFGF23関連低リン血症性くる病は生まれつきの病気です。しかし、脂肪などの皮下組織、骨などの腫瘍の中にはFGF23を過剰に分泌するものがあり、それらの腫瘍ができると後天的なFGF23関連低リン血症性くる病を発症することがあり、腫瘍性骨軟化症と呼ばれています。

また、一部の注射の鉄剤の副作用として骨細胞でのFGF23産生が過剰となり、結果としてこの病気を発症するケースがあることも報告されています。

症状

FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症では、リンの不足によって骨の石灰化がうまく行われなくなるため、主に立位や歩行を開始した後に体重の負荷がかかりやすい大腿骨(だいたいこつ)脛骨(けいこつ)腓骨(ひこつ)(すねの骨)などの脚の骨がO脚/X脚に変形したり、低身長になったりします。また些細な刺激によって、ひびのような骨折で強い疼痛を生じる偽骨折や通常の骨折を起こしやすくなるなどの症状が現れます。

また、遺伝性の場合は、生まれたときから骨が正常に発育しないため、歩行の遅れや歩行の異常が生じることも少なくありません。さらに、遺伝性の場合は、成人後に股関節や膝関節での関節部分やアキレス腱付着部位の骨の異常な骨化による骨棘や、背骨の異常な骨化による脊柱靭帯骨化症を起こすことで正常な関節運動ができなくなったり、痛みを生じたりすることもあります。

この病気は歯の形成にも異常が生じやすく、虫歯になりやすいとされています。そのほかに、この病気では尿に過剰なリンが含まれるため、特に従来の活性型ビタミンDやリン製剤での治療が過剰になると尿路結石や腎臓の石灰化、多尿などが起こりやすくなります。

検査・診断

幼児期の脚の変形や歩行の遅れなどからくる病が疑われると、発症原因によらず次のような検査が行われます。

X線検査

FGF23関連低リン血症性くる病に限らずビタミンDの不足によるくる病であっても、骨端線閉鎖前の小児の症例では下肢のX線検査を行うとO脚/X脚様変形が見られ、骨頭の辺縁部に毛羽立ちのようなものが目立つなど特徴的な変化が描出されます。

このため、くる病が疑われた場合は原因にかかわらず脚のX線検査が行われます。

血液検査

くる病・骨軟化症が疑われた場合、一般的には血液中のリンやカルシウム濃度、活性型ビタミンD濃度、カルシウム、リンの代謝をつかさどるインタクトPTHと呼ばれるホルモン濃度、尿素窒素やクレアチニンなど腎機能を示す指標、骨の状態を示すアルカリフォスファターゼ、および骨型アルカリホスファターゼなどの測定が行われます。これらの検査結果は原発性くる病・骨軟化症の診断のために必要であるばかりでなく、そのほかのくる病・骨軟化症の原因を特定するための判断材料ともなります。

これらの検査結果や家族歴なども含めてFGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症が疑われる場合は、さらに次のような検査が行われます。

血液検査

持続する低リン血症が認められた場合には、その原因を明らかとするために血中のFGF23を測定します。低リン血症が存在するうえでFGF23が30 pg/mL以上であった場合にFGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症の診断となります。

尿検査

この病気になると尿中のリンとカルシウムが増えるため、診断の手がかりのひとつとして尿中のリン、カルシウム、クレアチニン濃度を調べることがあります。この尿検査と血液検査の結果を利用して尿細管でのリンの最大再吸収率を示すTmP/GFRを計算することができます。FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症ではTmP/GFRが低値となります。

治療

一部の注射製剤の鉄剤による骨細胞からのFGF23過剰産生によって起こるFGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症は原因となる鉄剤を中止することで、低リン血症は改善し、骨の病態も徐々に改善します。また腫瘍(がFGF23を過剰に産生することによる腫瘍性骨軟化症では、原因腫瘍が見つかった場合、周囲の組織も含めて拡大切除を行うことで低リン血症は改善し、骨の病態も徐々に改善します。しかし実際には原因腫瘍が見つからない場合や、種々の理由で腫瘍の拡大切除ができない場合があります。

このような完治できなかった腫瘍性骨軟化症や遺伝子の変異によるFGF23関連低リン血症性くる病に対しては、これまでは活性型ビタミンDの内服と同時にリン製剤を1日4~6回に分けて内服して加療していましたが、これらの病態では治療に応じてFGF23が血中リン濃度を低下させるよう増加してしまい、血中のリン濃度の正常化は困難でした。

近年、日本でも小児や成人の重症例を対象として坑FGF23抗体医薬の注射製剤が使えるようになり、小児のO脚/X脚や低身長、および小児・成人の偽骨折、骨折をより効率的に予防し、また治癒させることができるようになりました。従来の活性型ビタミンDとリン製剤による治療、また新規の坑FGF23抗体による治療いずれにおいても、成長、体重増加に伴い薬剤の使用量が変わってきますので、定期的に血液検査を行って血中のリン濃度を調べ、また体重測定を行い、治療薬の投与量を適宜調整していく必要があります。

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