院長インタビュー

全国唯一の完全オープンシステムで地域の医療機関との強い連携を図る徳山医師会病院

全国唯一の完全オープンシステムで地域の医療機関との強い連携を図る徳山医師会病院
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

目次
項目をクリックすると該当箇所へジャンプします。

山陽新幹線の徳山駅に近い市街地に位置する徳山医師会病院は、病院に登録したかかりつけの先生が主治医として患者さんを診療し、同院の医師とともに共同診療を行うという、全国で唯一の“オープンシステム”を採用している病院です。

オープンシステムのメリットや同院が描く地域医療の形について、病院長である中村 和行(なかむら かずゆき)先生にお話を伺いました。

当院の前身は、1947年に徳山市(当時)で開設されたオープンシステム博愛病院です。同院は日本初のオープンシステムを採用した病院でした。その後1966年に徳山医師会が同院を引き継ぎ、以降は徳山医師会立の病院として運営されています。当院は病床数306床(うち急性期87床、回復期143床、慢性期76床)、21の診療科を標榜する総合病院であり、周南二次医療圏(周南市、下松市、光市)の救急患者を一手に引き受けている徳山中央病院と機能を分担しつつ地域医療支援病院として重要な役目を果たしています。

当院の特徴は、何と言ってもオープンシステム(開放型病床)を採用していることです。オープンシステムとは、病院のベッドを当院にご登録いただいているかかりつけの医師に開放し、当院に入院された患者さんをその先生と当院の医師が一緒に診るシステムのことです。アメリカではこのシステムを採っている病院が多いのですが、日本では病床の一部にオープンシステムを採用している病院はいくつかあるものの、全病床を開放しているのは当院だけであり、全国的に見ても非常に珍しい診療体制を持った病院だと言えます。

オープンシステムの最大のメリットは、かかりつけ医が患者さんを診つづけることができる点です。患者さんが不調を感じたらまずかかりつけ医に外来でかかり、詳細な検査や入院、手術が必要になったら設備が揃っている当院へ来ていただいてかかりつけ医が診療に当たります。

患者さんにとっては普段から信頼しているかかりつけ医が診続けてくれる安心感がある一方で、深い専門知識やスキルが必要な症例の場合でも当院の各科にいる11名の常勤医や山口大学等から来ているコンサルタント医が共同で診させていただくので、医療の質が落ちる心配が少ない仕組みと言えるでしょう。

当院で急性期の治療が終われば、その後は引き続き当院の地域包括ケア病床や回復期リハビリテーション病床で治療を受けたり、当院が立ち上げ徳山医師会在宅支援部と連携する周南ケアねっとに加入している介護・福祉機関へ入っていただいたり、ご自宅に戻って療養していただきます。もちろん、いずれの場合も定期的にかかりつけ医の診察を受けることになります。

このように当院のオープンシステムは地域全体と連携して機能しており、信頼している先生が常に自分を診るというメリットも併せて考えると、今後この地域の高齢化が進むなかで医療の質を保ち続けるための解の一つではないかと思っています。

地域全体の高齢化に併せ、当院では徳山中央病院と連携しながら心不全等の循環器疾患、脳血管障害、消化器内科・外科に力を入れて、スタッフを増やしています。また当院は昭和40年代にリハビリテーション科を設置した歴史を持ち、現在は53名のリハビリテーションの専門職が在籍して患者さんの機能回復に尽力しています。2023年4月から循環器の先生が赴任し、より進んだ心臓リハビリテーションを提供できるようになりました。

当院は診療だけでなく、治験や臨床研究にも力を入れています。一例を挙げると、私がこれまで研究してきたテーマの一つに軽度認知機能障害(MCI)があり、その診断は問診が中心です。当院では現在、MCIの前兆を検診で検知できるようにするバイオマーカーの治験を行っており、当院にいらっしゃる患者さんやご家族に詳しく治験の内容を説明して許可をいただいた方を対象とさせていただいています。この治験の結果がMCIの診断確度の向上に寄与し、MCIから認知症への進行を遅らせることができればと願っています。

なお、当院ではこのような治験、臨床研究に医師だけでなく看護師や検査技師といった多職種が参加できるよう改革に着手しています。そのようなモデルづくりも当院の役目だと考えています。

当院では、地域の医療関係者を対象にした研修会を行っています。テーマはさまざまで、新型コロナウイルス感染症の流行時にはZoomを使ってその対策について専門家が講演をしましたし、先日は電子カルテのセキュリティについて民間企業の専門家にレクチャーをいただいています。

この研修会には多くの他の病院、クリニックの先生方が参加いただくほか、その職員やご家族の方までもご来場いただき、毎回数百名を超える参加者となっています。病院主催の研修会でこれほど参加者の幅が広く、人数も多い例はなかなかないのではないでしょうか。これも当院がオープンシステムを採用し、地域に開かれた病院であるためではないかと思っています。

私は、皆が均等に医療の情報を閲覧できたり、患者さんやご家族がいつでも医療従事者に相談できたり、彼らが持つ専門知識にアクセスできるような社会になれたらいいと考えています。その第一歩として、当院のホームページも、わかりやすい内容に更新すべく準備をしているのでご期待ください。

当院は日本唯一の完全オープンシステムの病院として、地域のかかりつけ医が心地よく患者さんを診られる、患者さんが安心して利用できる、地域の皆さんの健康の拠り所として今後も尽力していきます。

実績のある医師をチェック

Icon unfold more