院長インタビュー

高度な医療と地域医療の両立を目指す湘南鎌倉総合病院の取り組み

高度な医療と地域医療の両立を目指す湘南鎌倉総合病院の取り組み
篠崎 伸明 先生

湘南鎌倉総合病院 院長

篠崎 伸明 先生

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1988年11月に湘南鎌倉病院として開設された医療法人 沖縄徳洲会 湘南鎌倉総合病院は、救急医療やがん診療をはじめとした医療を提供している病院です。1994年に総合病院に、2010年2月に医療法人 沖縄徳洲会 湘南鎌倉総合病院(以下、湘南鎌倉総合病院)となり、病床数658床と51の診療科で地域住民の方々の健康を支え続けています。

新しい医療の提供に努めつつも、常に地域医療を念頭に置いている同院の取り組みについて、院長である篠崎(しのざき) 伸明(のぶあき)先生にお話を伺いました。

湘南鎌倉総合病院 外観
湘南鎌倉総合病院 外観

当院は、全国各地に病院を構える徳洲会グループに所属する病院です。開院以来、近隣の関連機関と連携し、地域医療を支えてきました。

当院は横須賀・三浦二次医療圏に属しておりますが、実際はそれ以外に湘南東部医療圏からの患者さんも受け入れています。地域住民の方々が住み慣れた地域で医療を完結できるよう、各種診療科や救急総合診療科(ER)、オンコロジーセンターやお産センター、健康管理センターなどを備え、さまざまな医療ニーズに対応できる体制を整えています。

当院が柱とする医療のひとつが、救急医療です。“24時間365日、すべての救急車収容要請を受け入れる”という方針の下、年間約1万3,000~4,000件の救急搬送と3万名ほどのウォークイン患者さんを受け入れています(2018年2月時点)。

救急医療に関しては地域で輪番制を取っています。しかし、ほかの医療機関で対応が難しい症例に関しては、当院に搬送されてきます。この地域において救急医療の最後の砦を担っている形です。外傷に関しては、静岡や山梨といった遠方からもドクターヘリを使って搬送されてくることもあります。

こうした状況のなかで、全ての分野の救急医療を支えるために、2013年8月に外傷センターを新設しました。搬送された患者さんを全て受け入れられるよう、より充実した救急体制の構築に努めています。

湘南鎌倉総合病院 内観
湘南鎌倉総合病院 内観

当院が力を入れているもう一つの医療が、がん診療です。根治的治療から心理的・社会的サポートまで一貫して行える体制を整えた“オンコロジーセンター”を中心に、多職種が連携して患者さんをケアしています。

現在は、主に手術・放射線・抗がん剤療法を行っています。今後は、再生医療や免疫療法も進歩していくことでしょう。そういった治療方法に関しても、将来的に先端医療センターを構えることで、研究段階でも安全に実施していけるようにしたいと考えています。

がん診療に関しては患者さんの高齢化も課題のひとつです。高齢化が進んでくると、さまざまな病気を抱えた患者さんが、がんを発症することが多くなります。そのため、心臓の悪い方や認知症を患っている方などが、安心してがん治療を受けられる体制を整えなければなりません。

“何か別の病気を併発しているから治療ができない”などということがないように、当院は総合的な診療体制の構築に努めています。がんの治療からその後の生活のことまで含めて、患者さんを包括的にケアできる体制を目指します。

当院の循環器科は、さまざまな特徴ある治療を行っています。なかでも、心臓カテーテル検査・治療が強みであり、日本心血管インターベンション治療学会の研修施設にも指定されています。また、何らかの理由で感染したペースメーカーの電極を抜去するエキシマレーザーを使える施設でもあります。

こういった技術を病院外にも広く普及させるため、循環器科主任部長である齋藤(さいとう) (しげる)医師がオペレーターとなり、鎌倉ライブデモンストレーションを開催しています。ここでは、2日間にわたってさまざまな講義が行われるほか、参加者の演題発表やポスターセッションなどを企画しています。

当院は、2012年10月にJCIという国際認証を取得しています。JCIとは、医療施設を対象としたアメリカの第三者評価機関です。

この認証を取得するために、医療の質や安全など、これまで問題となっていたところを大幅に改善しました。また、病院全体が一丸となって改善活動に取り組んだため、診療科間の連携も非常によくなったと感じています。

JCIを取得して以来、海外の方が治療や検診、人間ドックを受けにいらっしゃるようになりました。これからも、ニーズがあれば海外の方の受診を受け入れていきたいと考えています。

一方で、アフリカや東南アジアの発展途上国に対して、医療の発展にも貢献したいと考えています。現地に病院や透析センターなどを設立し、そこで得た利益を日本に持ち帰らずその国で使うなど、経済面での支援も行っています。

地域住民の方々に向けて行っている活動のひとつが、医師を中心に行っている公開医学講座です。2018年現在は、毎月70件ほど開催しており、出張講演も受け付けています。これだけの数を行っている医療講演ですが、不思議なことに参加人数は減りません。むしろ、リピーターになってくださっている方もいます。

医師の顔が見えると、安心感を持って受診していただくことができます。また、病気のことを分かったうえで病院にお越しいただくと、さらに深い話をすることができます。

こうして積極的に地域に赴き、病院が持たれることの多い閉鎖的なイメージを変えたことが地域住民の方々の信頼につながっているのではないかと思っています。

当院の所属する徳洲会グループでは、“生命(いのち)だけは平等だ”という組織理念を共に支えていく人材を育成するために、教育には特に力を入れています。具体的には、当院のような基幹型臨床研修病院で経験を積んでもらい、その後、徳洲会グループのさまざまな組織・チームの一員になってもらう教育体制を構築しています。

当院の中にも、将来的に院長になる医師がいると思います。そうなれば、ただ単にプレイングマネジャーであるだけでは務まりません。経営を学び、キャリアアップしていく必要があるでしょう。病院経営やマネジメントに対する基本的な考え方を身につけてもらえるよう、当院でも勉強する機会を積極的に提供していきたいと思っています。

先生

鎌倉市には公的病院がありません(2020年6月時点)。当院はその役割を担っている一方で、地域住民の方々に支えられながら歩んでまいりました。医師や看護師をはじめとした職員は、地域で育てていただいていると思っています。当院が、今後どれ程大規模な病院になったとしても、私たちにとって大切な足場となるのは地域医療です。このことをいつまでも忘れずに、地域住民の方々へ医療を提供し続けていきたいと考えています。

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