院長インタビュー

“おとなとこどもの総合医療センター”として、よりよい医療提供を目指す――沖縄県立南部医療センター・こども医療センター

“おとなとこどもの総合医療センター”として、よりよい医療提供を目指す――沖縄県立南部医療センター・こども医療センター
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

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2006年4月に開設された沖縄県立南部医療センター・こども医療センターは、全国でも珍しい“こども病院を併設した医療機関”であり、大人と子ども両方のための総合医療センターとして幅広い医療を提供しています。

沖縄県南部地域において、さまざまな機能と役割を担う同院の強みや、注力している取り組みなどについて、院長である福里 吉充(ふくざと よしみつ)先生にお話を伺いました。

外観

沖縄県立南部医療センター・こども医療センターは、1959年に設立された琉球政府立那覇病院を前身としており、2006年4月に開設されました。沖縄県の県立病院としては、もっとも新しい病院です。

当院の最大の特徴は“こども病院を併設した、大人とこどものための総合医療センター”であるという点です。こども病院(小児医療施設)を併設している医療機関というのは全国でもきわめて稀な形態です。胎児から高齢者まで全ての年代をカバーし、幅広い医療提供をできる点が当院の一番の強みといえるでしょう。

当院の機能・役割は開院以来どんどん拡大してきており、現在では救命救急医療、高度・多機能病院機能、小児医療、周産期医療、離島・へき地医療、精神身体合併症医療、臨床研修病院機能、新興感染症対策、災害医療拠点病院機能、移行期医療支援といった10の大きな機能・役割を担うまでになりました。

また、県内に3病院しかない救命救急センターの1つとして24時間365日体制で救急対応を行っています。県内唯一のこども病院としても、最後の砦として小児救急医療を担うとともに、小児の先天性心疾患に対する診断・治療・手術も行っています。

2024年4月からは血管透視装置と手術室の機能を備えたハイブリッド手術室を新設したことで、より多岐にわたる治療が可能となり、 TAVI(経カテーテル的大動脈弁留置術)も行えるようになりました。また、同年8月にはECMO(体外式膜型人工肺)センターを立ち上げ、重症の心不全や呼吸不全の患者さんに対し、より迅速かつ適切な対応を行える体制を整えました。

内観

当院は、日本脳卒中学会より脳卒中センターとしての指定を受けているだけでなく、沖縄地域におけるPSCコア施設(脳卒中センターの中でも核(コア)となる施設のこと)としても指定を受けており、24時間365日体制で脳卒中の患者さんを受け入れています。

脳卒中の代表格である脳梗塞(のうこうそく)は、以前と比べ救命率が向上していますが、できる限り後遺症を残さないようにするためには、発症から治療開始までの時間をいかに短縮できるかが重要となります。

当院では、すぐに血栓回収などの適切な治療ができるよう、十分な人数のスタッフを配置し、さらに日頃から脳卒中チームの連携を強化することで、迅速に治療を開始できるようしています。また、当院に入院中の患者さんが脳梗塞を発症した場合には、専門医のスマートフォンに一斉連絡できるストロークコール機能を活用し、30分以内に血栓回収できるよう体制を整えています。

ドクターかー

解離性胸部大動脈瘤のような急性期の大動脈疾患は致死率の高い疾患であり、脳卒中と同様に治療は一刻を争います。そのため当院では、心臓血管疾患に特化したドクターカー・(Mobil CVS:モービル)を運用しています。

近隣の医療機関より要請を受けたらすぐ、心臓血管外科医師・集中治療看護師・臨床工学技士で構成されるMobil team(モービルチーム)が紹介先まで出向き、迅速な救急搬送と早期の治療介入を行います。

子どもセンター

子どもセンター

当院は沖縄県内で唯一のこども病院として、先天性心疾患や重症疾患の小児患者さんを県全域から受け入れており、検査・診断から治療まで一貫して行っています。小児集中治療室(PICU)を有する医療機関は県内では当院のみという地域事情もあり、当院が県内で果たす役割は非常に重要なものと自負しています。

また、小児医療から成人医療への移行(移行期医療)はしばしば課題となることも多いですが、当院は“こども病院を併設した、大人とこどものための総合医療センター”であることから、小児患者さんの成人後も引き続き診療できるという特長があります。小児医療から成人医療への移行を円滑に行えるよう、2018年6月には成人先天性心疾患外来を開設し、2021年4月には移行期医療支援センター準備委員会を発足するなど、さまざまなサポート体制を推進しています。

小児患者さんの中には、入院生活が長期にわたる患者さんも多くいます。当院では、そうした患者さんに少しでも楽しい時間を過ごしてほしいという思いから、ハロウィンイベントやクリスマス会、お正月の餅つきなどのイベントも積極的に開催しています。

イベント

イベント

当院は災害拠点病院として、災害対策にも注力しています。東日本大震災を経験した医師が中心となって災害本部の立ち上げや災害訓練などを実施し、いざという時に迅速な対応ができるよう努めています。

近年では、2023年の台風6号で当院も停電してしまい、すぐに自家発電に切り替えたものの“より迅速な対応をしなければ”と身を引き締めました。その経験を生かし、現在は“空振りになってもかまわないので、暴風域に入ったらすぐに災害対策本部を立てる”という体制を取っています。

また、当院はDMAT(災害派遣医療チーム)指定医療機関として、県内外での大災害発生時などにDMAT隊員を派遣しています。2024年1月1日に発生した能登半島地震においては、当院の医師を含めた職員5名が沖縄県DMATの第一陣として石川県に出向き、医療救援活動を行いました。

当院は、スタッフのスキルアップや育成にも力を入れています。2022年には、医療者の臨床研究を推進・サポートするための臨床研修支援室を開設し、さらに2023年には看護師の特定行為研修指定研修機関の指定を受け、特定行為(医師の判断を待たずに行う一定の診療補助業務)を行える看護師の育成も行っています。

時代とともに地域医療のニーズも変化してきていますが、常に“地域が、そして地域の皆さんが医療において何を必要としているのか”という点にアンテナを張り、そのニーズに応えられる病院づくりを進めていきたいと考えております。

また、理想的な地域医療の実現には、地域のかかりつけの先生方などとの強固な連携づくりも不可欠です。顔の見える連携を心がけ、より円滑な紹介と逆紹介を行い、かかりつけの先生と当院医師の“二人主治医制”の確立ができるよう努めてまいります。

これからも当院は地域の基幹病院として、そして“おとなとこどもの総合医療センター”としての使命を果たすため、幅広い年齢層の患者さん、さまざまな疾患の患者さんの健康と命を守ることに全力を尽くします。

*写真提供:沖縄県立南部医療センター・こども医療センター

*医師や提供している医療の内容についての情報などは全て、2024年12月時点のものです。

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