院長インタビュー

救急医療と高度急性期医療で地域を守る国立病院機構 高崎総合医療センター

救急医療と高度急性期医療で地域を守る国立病院機構 高崎総合医療センター
小川 哲史 先生

高崎総合医療センター 院長

小川 哲史 先生

目次
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高崎総合医療センターは、高崎・安中医療圏で唯一の公的な急性期病院であり、24時間365日体制で対応する救命救急センターを持つ三次救急医療機関(命に関わる重症患者の救急医療を担う医療機関)です。併せて、がんや脳神経、循環器、呼吸器、消化器などの急性期医療機関として、最新の治療や技術を取り入れながら地域の患者さんを支えています。同院の役割や今後について、院長である小川 哲史(おがわ てつし)先生に伺いました。

当院は、1873年に東京鎮台第一分営高崎営所病院として創設され、1936年に高崎陸軍病院に改称されました。その後、2009年に新病棟が完成し、それまでの国立病院機構高崎病院から国立病院機構高崎総合医療センターとなり、2024年に創設から151年目を迎えます。当院は、高崎・安中医療圏で唯一の三次救急医療機関であり、32診療科485床を擁し、救急医療と急性期医療を中心に地域の医療を支えています。

当院の救命救急センターは、1983年に県内初のセンターとして開設されました。“断らない救急”を目標に日々患者さんを受け入れており、2022年度には救急車の応需率*が95%を越えました。また、もう1つの大事な使命である高度急性期医療についての充実も図っており、手術支援ロボットなど新たな医療機器も取り入れながら治療を行っています。さらに、地域がん診療連携拠点病院として、がんをはじめとする悪性腫瘍(あくせいしゅよう)に対する集学的治療(手術、放射線、薬物、免疫療法を組み合わせた治療)を推進しており、院内におけるチーム医療はもちろん、地域連携にも積極的に取り組んでいます。

*応需率:救急車の受け入れ要請に対し、何台受け入れができたかの割合。

当院の救命救急センターは、外来部門にCT、MRI、血管撮影室に隣接した初療室や観察室を備え、効率よく診療が行えるよう環境を整えてあります。また、入院病床として集中治療病床(8床)と救命救急病床(21床)を備えており、個室もあるため感染症の場合や家族の付き添いが必要な場合にも対応が可能です。2013年9月からはドクターカーの稼働も開始し、プレホスピタルケア(病院前治療)で、救命率の向上と後遺障害の軽減に努めています。

当院では、がんをはじめとする悪性腫瘍に対して積極的に集学的治療を実施しています。集学的治療を行ううえでは各診療科による協力が重要となりますが、当院では消化器病センター、乳腺・甲状腺センター、放射線治療センター、画像診断センターなどいくつかのセンターも備えており、診療科の垣根を超えたチーム医療体制を整えています。また、当院が我が国で最初に導入した3Dマンモグラフィや、高エネルギー放射線治療装置など、集学的治療を行ううえで必要なさまざまな機器もそろえています。

がんの手術件数において、特に消化器病センターと乳腺・甲状腺センターの手術件数が高い水準で推移しています。消化器病センターでは毎週、カンファレンス(消化器キャンサーボード)を実施し、手術や治療方針について複数の診療科医師とメディカルスタッフによる検討を行っています。2022年度の手術件数は、胃の悪性腫瘍63件、大腸(虫垂を含む)の悪性腫瘍184件が特筆されます。

また、乳腺・甲状腺センターでは3Dマンモグラフィで高精度の乳がんの診断が可能で、2022年度の手術件数は乳腺の悪性腫瘍277件(内視鏡下によるものを含む)となっています。

当院では2023年11月より、手術支援ロボット“ダヴィンチXi”を導入し、前立腺がんに対するロボット支援前立腺全摘除術を始めました。さらに、肺がん大腸がんなど呼吸器や消化器外科、さらに婦人科でも使用を開始しました。

また、当院では医療の標準化と可視化を図るため、クリニカルパス(より質の高い医療を提供するため入院から退院までの検査・治療の予定を記した計画表)やDPCデータ(患者さんの臨床情報や診療行為等に関する情報)を活用し、患者さん個々に適切な治療を実施しています。

当院では2020年の別館の完成に伴い、“患者サポートセンター”を開設しました。同センターはこれまでの地域医療支援・連携センターと入退院センターを統合し、さらに相談支援センターを加えた新しい部門で、病気についての説明や入院中の治療計画(クリニカルパス)について理解していただくことが主な役割です。

入院が決まった患者さんにはまず患者サポートセンターへ行っていただき、そこで使用中の薬についての確認や、歯や口腔内のチェックなど一通りスクリーニングを行います。術前から患者さんの状態を把握することで退院までをスムーズに、安心して過ごしていただけるよう取り組んでいます。さらに、アキュートペインサービス(術後疼痛管理チーム)として、手術を受けた患者さんの痛みや吐き気などの苦痛を緩和する取り組みも行っています。

現在、同センターには医師2名に看護師が20名以上、メディカルアシスタント(医師事務作業補助者)が2名、ソーシャルワーカー16名が在籍し(2024年1月時点)、地域の中核的な病院としての機能の充実とより質の高い安全な医療の提供を目指しています。

当院は“患者さんから信頼される病院”を理念に、救急の患者さんや紹介の患者さんを可能な限り受け入れ、高崎・安中地域の皆さんの命と健康を全力で守っております。特に高崎市には市民病院がないので、当院が市民病院のような存在になっていると考えています。

また、当院は地域の先生方と連携を密にしていますので、地域の皆さんにおかれましては“かかりつけ医”をしっかり持っていただき、かかりつけの先生からの紹介のうえで当院へお越しいただければと思います。

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