医療法人 王子総合病院は、1910年に王子製紙株式会社が工場を開設した際に、けがをした社員を治療するための病床数37床の病院をつくったのがはじまりです。
開院以来、地域に根ざした医療を提供してきた歴史ある同院は、1967年に王子製紙株式会社から独立し法人化、1997年に現在の場所に移転しました。
そんな同院では、現在どのような取り組みを行っているのでしょうか。理事長と院長を兼任される大岩 均先生にお話を伺いました。
当院は、王子製紙株式会社の厚生施設として開設されましたが、開院当時は地域にほかの病院がなかったため、公的な役割を担う形で医療を行ってきました。
苫小牧市は、工場で働く若い世代が多い一方で、高齢化も進んできています。そういった地域のニーズに応えるため、22の診療科と病床数440床を擁し、介護老人保健施設などの関連施設と連携を図りながら地域住民の医療と福祉を支えています。
当院は地域で唯一の心臓血管外科を構える病院です。年間手術総数は350〜400件ほどであり、そのうち心臓手術は90〜120件ほど行っています。
また、当院は心臓血管外科専門医認定機構修練基幹施設に指定されているため、若手医師の育成機関としての役割も担っています。
当院は、地域がん診療拠点病院に指定されており、地域のがん診療を主体となって行っています。疾患の数としては胃がんや大腸がん、肺がんなどが多く、手術は年間約700件行っています。患者さんの負担が少ない、内視鏡手術も数多く行っています。
女性の乳がんに関しても積極的に治療を行っています。札幌の病院で手術を行ったあと、放射線治療を当院で行う患者さんも珍しくありません。
治療以外にも、がん相談支援室を設置し、疾患や治療に関する情報提供をしたり、患者さんやご家族の悩みや不安を解消するために相談に応じたりしています。がん化学療法認定看護師や緩和ケア認定看護師を配置し、治療生活における相談などを受けるがん看護相談窓口も設置しています。
当院では、救急外来に年間約3,000台の救急搬送を含む6,000人を超える救急患者を受け入れています。苫小牧市内だけでなく、日高地域からも搬送されてきます。
2007年頃は、救急外来に3,100台を超える救急搬送を含め、10,000名以上もの患者さんが受診するという、いわゆる「コンビニ受診」が多かったのです。
そのため、当時は医師の疲弊が問題となっていました。それを解決するため、医師会が中心になって苫小牧市夜間・休日急病センターをリニューアルし、そのタイミングで住民の方々への啓蒙活動を始めたのです。その甲斐あって、現在の受診患者数に落ち着きました。
一次救急は苫小牧市夜間・休日急病センターへ、二次救急は当院と苫小牧市立病院へ搬送するという住み分けができるようになったのです。
苫小牧市には、当院と苫小牧市立病院という2つの大きな病院があります。二次救急医療はこの2つの病院で輪番制をとっており、それぞれの病院の強みをいかす形で、バランスをとりながら地域の医療を支えています。
たとえば、苫小牧市立病院は小児科や膠原病が強いので、それに関わる診療に関してはお任せしています。一方で、当院は眼科の硝子体手術や心臓手術ができるため、その部分をカバーしています。
また、苫小牧市は札幌市が近く、札幌市内には大きな病院も多いため、そちらへかかる患者さんも多くいます。
2017年現在は、外来患者数は1日1,000名ほどですが、今後は安定した患者さんを市内の開業医の先生方に紹介して外来患者数を少しずつ減らし、入院加療が必要になった際には、改めて当院に逆紹介してもらう形をめざし、入院加療を主体とした病院にシフトして行く計画です。
当院の課題は、患者さんの退院支援です。苫小牧市はご夫婦のみの世帯が多く、急性期を過ぎた患者さんが自宅に戻ろうと思っても、老老介護になってしまうという現状があります。
この地域には回復期の病床を持っている病院が少ないため、地域医療構想という観点でも、当院を含めた地域医療機関の病床機能を今後どう変化させていくか、考えていかなくてはなりません。
当院は急性期病院のため、介護施設などと協力して退院後の患者さんのケアをサポートしていこうと考えており、2017年4月に開設した医療介護連携センターとの連携を取って行きたいと思っています。
当院は地域がん診療拠点病院として高度ながん医療の提供に努めており、救急医療も行っているため、さまざまな症例をみられることがメリットではないかと思います。教育方針としても、精力的に多くの手技を経験させるような形をとっているため、しっかりと実力を付けることができるでしょう。
また当院は、経験豊かな麻酔科担当医のもと脳神経外科や心臓血管外科などの外科系診療科が充実した病院として若手の先生方に人気があります。
ほかにもさまざまな診療科があるため、幅広い経験を積んで自分の土台をしっかりとつくることができる病院だと思っています。
「地域のみなさまの医療・福祉を支えて行く病院でありたい」という思いは、当院の開院以来変わらない信念です。これからも地域のみなさまに愛され、患者さんに「王子総合病院にかかってよかった」といっていただける病院をめざしたいと思っています。
王子総合病院 理事長・院長
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。