滋賀県にある近江八幡市立総合医療センターは、2006年10月に現在地へ移転するとともに近江八幡市民病院から改称を行い、新たなスタートを切りました。
同センターは、地域住民の皆さんが住み慣れた地域で自分らしい生活を続けられるよう、救命救急医療や周産期医療などの診療体制の充実や、入退院支援などのホスピタリティ向上に取り組み続けています。
同センターの診療体制や、独自の取り組みで心がけていること、採用教育体制などについて、事業管理者の宮下浩明先生にお話を伺いました。
少子化と2025年問題による人口構造と医療に対するニーズの変化を考え、救命救急医療や周産期医療、がん診療などを中心とした急性期医療が実施可能な体制を構築しました。
また、急性期を脱したあとに療養生活に向けたリハビリテーションなどの準備や相談支援を行う地域包括ケア病棟も導入しています。
当センターの救命救急センターは、救命センター救急外来、HCU、ICUの3ユニット構成で、「救急搬送を断らない病院」をモットーに、緊急度と重症度が高いと判断された患者さんを受け入れて診療する三次救急医療を行っています。救急外来専属の医師と研修医が搬送者を受け入れて、重症度ごとに搬送や治療の優先度をつけ、必要に応じて各診療科へと取り次ぐ、北米型ERと呼ばれる方式を採用しています。
職員を対象に講習会や勉強会も開催しているほか、周辺地域の救急体制の整備や救急救命士に対する指導も行うなど、院内他部門に限らず地域とも積極的に関わり合っていることも当センターの救急医療体制の特徴です。
また、当センターは災害拠点病院としての機能も有しています。院内には、災害発生後48時間以内に結成・活動開始できるDMATチームを4チーム編成しています。このチームは災害医療に対する特別な訓練を受けた職員で構成されていて、災害現場では緊急対応や病院支援などに従事します。
地域の少子化を食い止めたいという思いから、周産期医療の充実にも力を入れています。
当センターの産婦人科は、2005年4月に滋賀県地域周産期母子医療センター、2006年4月に日本周産期新生児医学会の指定研修施設に認定されました。産婦人科と小児科の医師が24時間体制で勤務しており、妊娠出産にリスクのある妊婦さんも受け入れ可能です。
産婦人科外来、妊婦健診、助産師外来、母親教室を行っています。
当センターでは、お産そのものや分娩前後の医療処置、出産後の赤ちゃんとの過ごし方などの希望を伝えるバースプランをお受けしています。お産のときに、ご自身のバースプランを助産師にお伝えください。
腎臓病は自覚症状に乏しいことが多く、代替療法による治療が必要になることもあります。そのため当センターでは「Total Kidney Care」と銘打って、根治療法を積極的に行って人工透析まで至らせることのないよう、腎臓病の検査や診断のほか、病期に応じた治療方法を腎臓センターでご案内しています。
医師だけでなく、看護師、臨床工学士、薬剤師、栄養師がそれぞれ協力しあうチーム医療で患者さんを支えます。
残念ながら腎不全へと進行した患者さんには、腎代替療法である人工透析や腎移植をご案内しています。症状が安定してきた患者さんには、ご自宅近くの医療機関をかかりつけ医としてご紹介させていただくこともあります。
循環器内科で診る心臓や血管の異常の中でも、急性冠症候群や急性心不全のように特に緊急度・重症度の高いものは、発症後いかに早く処置を行うかということが重要になり、処置の早さがその後の生活に大きな影響を与えます。そのため、当センターではカテーテルインターベンションなどの処置や治療を行える体制を敷いて、24時間体制で患者さんを受け入れています。
心臓血管外科との連携を強化したことで、発症した病気や患者さんの状態に合わせて治療方法を選択肢するなど、より柔軟に対応が可能になりました。
ほかにも、高血圧や脂質異常症のように動脈硬化を招くリスクも日頃からしっかり管理するなど、循環器の治療をするだけでなく「そもそも病気にならないようにする」といった予防策にも力を入れています。
消化器内科では、食道から大腸と肝臓・胆のう・膵臓まで幅広い領域を診療します。当センターの特徴は、救急診療やがん診療などを集中的に行っていることです。地域におけるがん診療を支える中心的存在として、滋賀県地域がん診療連携支援病院の指定を受けています。
患者さんの早期退院や社会復帰を実現するために、内視鏡を使用する低侵襲治療を導入しています。低侵襲治療は、通常の開腹手術よりもはるかにやさしく、出血量が少ないため、早期のがんにも適しています。
当センターでは病床をより合理的かつ有効に使えるよう、産婦人科と小児科を除いたすべての診療科で混合病棟制を導入しています。この制度により、病棟は全診療科の共有物であることを医師に再認識してもらうと同時に、救急外来を含めて入院が必要な患者さんを受け入れやすくなりました。
患者総合支援課では、当センターに入院される患者さんに対して、入院前検査や入院生活での注意事項や、禁煙指導、抗凝固薬などの一部の薬剤を使用されている場合には休薬についてなど、さまざまな説明をしています。病状が安定してきた患者さんには、地域の医療機関や福祉機関へ取り次いだり、療養生活に関するご相談をお受けしたりしています。
治療に関連するサポートを一括して行えるようになったことで、病棟看護師の業務負担が軽減したほか、当センターとしても人件費削減など、患者さん・看護師・当センターそれぞれにとっての「三方よし」を実感しています。
心身の不調を抱える方とご家族が利用される病院だからこそ、ホスピタリティが重要になると考えています。
当センターの1階エントランスにはピンク色のユニフォームを着た「何でも相談員」が常駐しています。車椅子を使用されている患者さんの補助や、探し物をしている方へのお声かけなど、利用者の皆さんの「困った」になるべく早く対応できるようにしています。
当センターは救命救急医療、周産期医療、がん診療などを手がけているため、地域の医療機関から患者さんをご紹介いただくことも多いです。さまざまな病気を抱える患者さんが集まりやすい傾向があることから、毎年大勢の医学部生や研修医が当センターでの研修を志望していますが、密度の濃い指導ができるよう、あえて採用人数は少数に限定しています。
医療機関の使命とは、地域の抱える医療ニーズに最大限応えることにあります。そのためには、本来のキャパシティ以上に背伸びすることも、反対に地域からの要望を断ることも避けなければなりません。当センターで研修される方には、医療が持つ責任と重みについて考えると同時に自発的に行動していただきたいと考えています。
これから医師として長い人生を歩んでいく皆さんに、先輩医師と事業管理者という2つの立場からお願いしたいことがあります。
まず、働き方改革が注目されていますが、知識と技術をブラッシュアップするための時間と手間は決して惜しまないでください。次に、目の前の患者さんを自分の身内のように思って接してください。そして、自分が提供したい医療ではなく、その患者さんに喜んでもらえる医療を実践してください。
「木を見て森を見ず」という言葉がありますが、「病気を診て人生を見ず」となることなく、自分らしく毎日を過ごせる幸せを患者さんに届けてください。
2025年問題に代表されるように、日本全体で高齢化が急激に進行しています。これからの医療体制を支えていくためには、地域の医療機関がそれぞれの特性をいかした相互連携が重要です。
当センターは、救命救急医療、周産期医療、がん診療などを幅広く手がけています。この地域の医療体制を支える礎として職員一同努力を重ねてまいります。医療や健康のことで不安なことがあれば当センターにご相談ください。解決策や治療のゴールを共に考えましょう。
近江八幡市病院 事業管理者
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。