JA長野厚生連 北アルプス医療センター あづみ病院(以下、北アルプス医療センター あづみ病院)は中山間地域にある中規模の病院で、地域の皆さんに信頼される医療の提供を目指す総合病院です。さらに、内科、精神科、整形外科などの診療科を中心に専門的な診療が可能な医療体制の構築を続けています。
同院の診療体制の特徴や強み、地域貢献への取り組みなどについて、統括院長の畑 幸彦先生にお話を伺いました。
当院は、北アルプス地域を中心に地域の総合病院として、二次救急、がん診療および在宅医療をはじめ、多岐にわたる地域医療を行っています。また、当院では専門分野のセンター化(女性骨盤底医学センター、肩関節治療センター、循環器病センター、認知症疾患治療センター)を推進しています。これは、地域の患者さんに分かりやすい医療、つまり当院でどのような専門的な医療を受けることができるのかを患者さんに分かっていただき、そのうえで安心してお越しいただけるような診療体制を改革・構築し続けています。幸いなことに、専門医に年々集まって来ていただいていると感じているので、さらにセンター化を進めていこうと考えています。
当院は、70年近く地域の医療に携わりながら徐々に拡大し、一般病床が200床で精神病棟が120床、合わせて320床(2020年2月時点)の中山間地域にある中規模病院です。定年のない農業や林業に従事する方が多いこの地域にあるからこそ、症状を軽減・改善するだけではなく現職に復帰して長く働き続けられる状態へと戻すことが大切だと考えて日々の診療を行っています。
患者さんの“働き続けたい”という期待に応えることができた時が、私たちの医療が地域貢献につながっていると実感できる瞬間でもあります。
私の理想は“「地方でもこんな近くの病院でさまざまな専門的な医療を受けられるんだ」と地元の方たちに喜んでもらえる”ことであり、当院はその理想に向かって職員一丸となって日々精進しています。
当院では“肩関節治療センター”を開設し、骨折や脱臼、肩腱板断裂、変形性肩関節症、五十肩、スポーツ障害など、肩に関する病気の治療を行っています。若い患者さんから高齢の患者さんまでスポーツや職場への完全復帰を目指して、手術からリハビリテーションまで全ての治療を医師とコメディカルスタッフによる肩専門チームで実施しています。当センターには専属リハビリテーションスタッフが17名在籍しており、肩関節に特化した治療を提供しています(2020年2月時点)。また、手術件数は244件(2019年1月~12月)の実績をあげ、県外からも患者さんが来られます。さらに、手術後10年以上が経過した患者さんにははがきなどで連絡して受診してもらい、診察と画像検査による長期的なチェックを現在も続けています。
当院のように総合病院の中にある精神科・心療内科の特徴は、身体症状を合併している患者さんのさまざまな精神疾患をほかの診療科と協力して幅広く対応・治療できることです。外来や入院以外に訪問看護、作業療法、デイケアなども行っており、手厚く機能的な医療の提供に努めています。また、“認知症疾患医療センター”を開設して、認知症の診断や治療だけではなく、認知症外来作業療法(リハビリテーション)も提供し、認知症になっても住み慣れた地域で安心して暮らすためのお手伝いをいたします。
当院は、2019年4月から厚生労働省指定の“地域がん診療病院”として、より地域のがん診療に取り組む体制と役割を担うこととなりました。都道府県がん診療連携拠点病院である信州大学医学部附属病院を中心とする連携グループの一員として、ほかの拠点病院とも連携しつつ、専門的ながん医療の提供、相談支援や情報提供を行っています。当院では緩和ケアにも取り組み、“緩和医療外来”を持つとともに医師、看護師、薬剤師、理学療法士、管理栄養士、ソーシャルワーカーによる緩和ケアチームを構成しています。さらに“がん相談支援センター”も設置し、患者さんやご家族の方をサポートしています。今は入退院支援が中心ですが、最終的にはベッドコントロール機能を持つようにしたいと考えています。
医療と医学は両輪という考えと、若い職員や研修医の新しい経験と自信につながればという思いから、学会活動も積極的に行っています。2019年度には10月25日、26日の2日間にわたり、全国規模の学会である『第46回 日本肩関節学会 学術集会(会長:畑 幸彦)』と『第16回 肩の運動機能研究会(会長:高橋 友明)』を当院主導にて開催しました。約80名の職員の皆さんにボランティアとして協力していただいたおかげで、全国から1,590名の参加者を迎えて大成功のうちに終わりました。こうした活動を通じて職員の団結力を高めるとともに、病院全体のレベルアップにつなげていきたいと考えています。
当院では、患者さんの目線に合わせてお話を伺うといった基本の徹底など、接遇の向上への努力を続けております。最近では患者さんや提携先の皆さんからも、当院の接遇がよくなったという声が聞かれるようになり、それが職員の自信や励みになっています。ほかにも、病院の食事改革も進めています。調理師と管理栄養士がペアを組み、毎月1回“旬の彩り御膳”として、季節の食材を盛り込んだお食事を提供しています。これを院内でコンテスト化し、患者さんにも点数を付けていただいたところ、スタッフのやりがいや向上心を刺激してよい効果が表れています。これらはレシピ付きで当院のHPで公開中です。
また、医師なども含めた働き方改革のひとつの例として会議の効率化を推し進めた結果、会議の質と参加率が上がり、超過勤務の時間が減ってきました。これからも多方面から当院のレベルアップを目指し、さまざまな事柄に取り組んでまいります。
当院には、専門分野のセンター化により肩関節治療センター、認知症疾患医療センター、循環器病センター、女性骨盤底医学センターの4つがあります(2020年2月時点)。センター化することによって、当院でどういった専門的な医療が受けられるのかがガラス張りになって分かりやすくなり、受診していただく皆さんのメリットにつながると考えています。もちろん、都会とは異なるこの地域のニーズに合わせた医療の提供も、地域の皆さんへの貢献になっていると自負しております。今後はたとえば、手術(骨折や筋腱断裂の治療、切断肢の再接着、血管柄付き複合組織移植など)からリハビリテーションまで行う上肢再建外科センターや消化器内科(上部・下部内視鏡手術など)と消化器外科(腹腔鏡手術など)を合わせた消化器疾患治療センターなど、さらにセンター化を進めていきたいと考えています。地域の皆さんにより信頼される病院を目指して、さらなる努力を続けてまいります。
今、医療のスタートラインにいる若い人たちに伝えたいことは「指名される医師になろう。求められる医師になろう」ということです。これからは患者さんが医師を選ぶ時代なのだから、選ばれる医療を提供できるような人材になりましょう。経験を積んで10年後、20年後に「この先生に診てほしい」と言われたら最高です。そのためには、診療(診断力、治療技術)も研究(学会活動、〈和・英〉論文作成)も、どちらも頑張っていきましょう。