京都市中央区にある京都市立病院は、この地域にあった2つの病院が統合される形で1965年に開設されました。地域の高度急性期医療を担い、間もなく創設60周年を迎える同院が果たす役割や今後の展望について、院長である黒田 啓史先生にお話を伺います。
当院は1882年に設立された上京公立避病院という伝染病院を前身とし、1965年に京都市立病院として生まれ変わりました。上京公立避病院が開設した年から数えますと、130年以上に及ぶ長い歴史があります。
当院は地域の高度急性期医療を担い、37の診療科と548床の病床を有し、幅広い病気に対応しています。多様ながんに対するロボット支援手術を実施しているほか、京都府内では白血病や再生不良性貧血などの造血器疾患に対する造血細胞移植を小児から成人までのすべての年齢層で実施できる、数少ない病院でもあります。また伝染病院を前身としている歴史的背景により、第2種感染症指定医療機関として感染症の診療にも力を注いでいます。このような取り組みの成果もあり、2022年4月からは、大学病院本院に準じた診療密度と一定の機能を有すると評価され、DPC特定病院群に指定されています。
当院では地域の医療機関と密に連携を取りながら“2人主治医制”に取り組んでいます。2人主治医制とは文字どおり、1人の患者さんに対して“地域のかかりつけ医”と“当院の医師”の2施設の主治医が連携して治療にあたることを言います。地域のかかりつけ医が日常的な診療を担い、高度な検査や医療が必要になった場合には、当院の医師が診療を担当させていただく……。地域の医療機関と役割を分担し、お互いに連携することにより、地域にお住まいの方が必要な医療を適切に受けられる体制づくりを進めています。地域の医療機関と当院の主治医が協力しながら患者さんの検査や治療を継続して行ってまいります。
患者さんが満足感を得られる病院とはどういう病院かを考えた時、まずは働いている職員が「毎日充実しているな」、「ここで働いてよかったな」と思える病院であることが重要と考えています。
職員の気持ちは、患者さんやご家族に敏感に伝わります。ピリピリした雰囲気は、不安な気持ちにさせてしまいますが、反対に職員が笑顔で仕事をしていれば、患者さんやご家族も安心して病院を利用できることでしょう。
当院では職員が笑顔で働けるように、患者さんやご家族に安心して当院をご利用いただけるようにと考えさまざまな取り組みを行ってきましたが、数年前より、職員が業務改善のために行った“Good Job”を取り上げ、表彰する場を設けています。これまでには患者さんから寄せられた声に対応する形で病棟内の案内表示の改善を行ったほか、無料の院内Wi-Fiを整備するなど、来院される方々に快適にお過ごしいただけるような環境づくりを進めています。
当院は地域がん診療連携拠点病院・小児がん連携病院の指定を受けており、院内の各部門が連携して良質ながん診療を提供しています。手術支援ロボット・ダヴィンチを使用した低侵襲手術をはじめ、がんゲノム医療、がん薬物治療、放射線治療、緩和ケアなど、それぞれの患者さんに適した医療をご提案できる点が強みです。
近年のがん手術においては患者さんへの負担が少ない低侵襲手術が主流となっており、腹腔鏡手術からロボット支援手術へと移行しつつあります。当院でもいち早く手術支援ロボット・ダヴィンチを導入し、前立腺がん、膀胱がん、肝がん、胃がん、直腸がん、肺がんを対象にロボット支援手術を行ってきました。
ロボット支援手術では患者さんの体に小さな穴を開け、術者は3D映像を見ながらロボットを遠隔操作して手術を行います。ロボットが人間の複雑な手の動きを再現するのはもちろん、アーム部分(人間の手首の関節にあたる部分)が360度回転するなどの高い操作性を生かして、人間の手が届かない部位にもアプローチできることが強みです。
当院ではすでにダヴィンチXiによる手術が年間300症例を超える*までになったことから、より多くの手術に対応するべく2台目となるダヴィンチSPを導入し、2024年2月より2台体制での運用をスタートしました。ダヴィンチSPの導入は全国で6番目、関西圏では初導入となります。
ダヴィンチSPの“SP”はシングルポート(単孔式)を意味し、より精度の高い治療を行えるだけでなく、手術時の傷口が最少1つで済むというメリットがあります。何より大きな特徴は、患者さんの体に優しい手術であることで、小さい傷口で済むため整容性に優れ、早期の回復が期待できます。このように、低侵襲かつ整容性に優れている特性を生かして、今後は婦人科症例にも適応範囲を広げていきたいと考えています。
*2023年度ロボット支援手術実績/泌尿器科:165件(内9件SP)、呼吸器外科:48件、消化器外科:105件(内4件SP)計:318件(内13件SP)
医師の中には、医師が患者さんの病気を治していると考える方がいますが、私はそうではないと思っています。私が日頃から若い先生方に伝えているのは「患者さんの病気は、患者さんが自身の力で治すのであって、医師はそれを支えているに過ぎない」ということです。
また、患者さんはある意味で私たち医師の“先生”であるとも考えています。なぜなら、医師は患者さんを診療することでさらに学び、さらに成長できるからです。
若い医師の皆さんにはぜひ、常に謙虚な気持ちで患者さんに寄り添っていただきたいと思います。日々の診療の中で “どう支えていくのか”を熟慮しながら、一人ひとりの患者さんに適した医療を提供していただきたいと思います。
当院は、以下の3つのことを理念として掲げています。
・市民のいのちと健康を守ります
・患者中心の最適な医療を提供します
・地域と一体となって健康長寿のまちづくりに貢献します
この理念にあるように、当院はこれからも地域の医療機関をはじめとするさまざまな機関と連携を図りながら、患者さんの気持ちに寄り添った医療を提供してまいります。病院を利用される患者さんやご家族の皆さんに“この病院で治療を受けてよかったな”と思っていただけるような病院づくりを目指し、自治体病院としての使命を担ってまいりますので、引き続きご支援を賜りますようよろしくお願い申し上げます。
*病床数、診療科、提供する医療の内容等についての情報は全て、2024年5月時点のものです。
京都市立病院 院長
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現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。