院長インタビュー

世田谷区唯一の地域医療支援病院・関東中央病院の取り組み

世田谷区唯一の地域医療支援病院・関東中央病院の取り組み
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

目次
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公立学校共済組合 関東中央病院は田園都市線・用賀駅から徒歩25分、自然の豊かな広い敷地に建つ総合病院です。古くは公立学校の教職員の健康管理を目的に建てられた病院でしたが、近年は世田谷区民の健康・安全を守る地域の中核的な病院として、地域医療支援病院の役割を果たしています。

今回は、関東中央病院の沿革や診療科の特徴、病院の取り組みについて、病院長の竹下(たけした) 克志 (かつし)先生にお話を伺いました。

関東中央病院は1953年、前身である「世田谷三楽病院」が開院したことにより歴史が始まります。元々公立学校共済組合の教職員とその家族の健康管理、特に結核を治療するために作られた結核病棟という背景もあり、ゆっくりと静養できるような、桜並木のある自然豊かな環境に位置しています。
その後当院は1956年より名称を関東中央病院に変え、1959年には地域の患者さんにも本格的に医療を提供するようになりました。このころにはすでに結核が治療で治るようになっており、当院もさまざまな診療科を増設し始め、幅広い医療を提供できる中核的な病院に変化していきました。

現在は診療科が全31科、病床数384床の総合病院として世田谷区民の健康を守っています。

当院の大きな柱の1つに、救急医療があります。年間で4,000件から5,000件ほどの救急の患者さんを受け入れており、世田谷区にお住まいの方々の安心を守る拠点としての役割を担ってきました。

特徴的なのは、やはりご高齢の患者さんが非常に多いという点です。高齢者の方々は、おひとりでいくつもの病気を抱えていらっしゃることが珍しくありません。たとえば、血液をサラサラにする抗凝固薬を飲まれている方が転んでけがをされると、出血が止まりにくく、治療には細心の注意が必要になります。

こうした難しい判断が求められる現場でも、循環器内科と心臓血管外科が連携しながら、患者さんの状態に応じた治療を行っています。脳神経外科においても、血管の中から処置を行う治療と、直接頭を開けて行う手術の両方を手がける医師が在籍しており、それぞれの患者さんに適した治療法を検討できる体制を整えています。

消化器外科では、お腹の急な痛みで苦しまれる腸閉塞(ちょうへいそく)イレウス)に対応する外来を、2022年から設けています。お腹の動きが悪くなるこの病気は、特にご高齢の方に増えているため、専門的に診る窓口を設け、保存的な治療から必要に応じた手術まで一貫して対応しています。

加えて、お薬などでは改善が難しい肥満症の方に対しては、適応を判断したうえで外科的なアプローチによる治療も行っています。生活習慣病の改善につなげることを目指した取り組みとして、消化器外科のチームが力を入れている診療の1つです。

さらに、当院ならではの特徴として欠かせないのが、メンタルケアの体制です。もともと教職員の皆さんを支える病院として歩んできた歴史があるため、心の健康を守るノウハウが蓄積されています。
現在は「メンタルヘルスセンター」という専門医師、臨床心理士、スタッフからなるチームを作り、東日本の教職員のメンタルヘルスを統括しています。2018年にはメンタルヘルスセンターとしての新たな建物が完成し、東京都とも連携しながら、教職員の方だけでなく地域の皆さんを受け入れ、お仕事を休まれている方の社会復帰を支える「リワークプログラム」を積極的に展開しているところです。
このメンタルヘルスセンターでは多職種で一人ひとりの患者さんを支える体制ができており、当院の大きな特徴の1つだといえるでしょう。

現在、私が病院全体で取り組んでいるのが、救急医療体制のアップグレードです。世田谷区は95万人近い人口を抱えながら、実は救急を受け入れる病床数が不足しているという課題があります。先日、区長とも直接お会いして、この地域の救急をどう支えていくかというお話をさせていただきました。
建物などのハード面はもちろんですが、人員配置といったソフト面の見直しも進め、より多くの患者さんをスムーズに受け入れられるようにしたいと考えています。

私たちが目指しているのは、地域の二次救急をしっかり支えながら、必要に応じて二.五次(2.5次)レベルまで対応できる病院です。1分1秒を争う場面で、患者さんを長くお待たせしてしまうことは、あってはならないことです。
実は以前、救急車の中で12分ほどお待たせしてしまった事例があり、消防庁からご連絡をいただいたことがありました。私はそのことを非常に重く受け止めています。待機時間をできるだけ少なくし、多くの方が安心して医療サービスを受けられるようにすること。それが、今まさに病院全体で取り組んでいる課題です。

救急医療と並行して、私がライフワークとして取り組んでいきたいのが「運動器」の健康を守ることです。私は日本運動器科学会の理事長を務めており、長年、ロコモティブシンドローム、いわゆるロコモの対策に携わってきました。

せっかく病気が治っても、足腰が弱って寝たきりになってしまっては、その方らしい生活を送ることはできません。ロコモやフレイル(虚弱)を予防し、いかにご自身の足で歩き続け、元気に過ごしていただくか。これは超高齢社会における大きなテーマだと考えています。

当院では、理学療法士だけでなく、看護師など幅広い職種が運動器のリハビリテーションに関わることができるよう、人材育成にも力を注いでいます。専門的な研修を受けたスタッフを増やし、入院中からしっかりとリハビリテーションを行える体制を整えたいのです。

今後は病院としてロコモ対策にもさらに取り組み、地域の皆さんが長く元気に生活できるよう、予防の視点からも貢献していきたいと思っています。

院長に就任して以来、自分たちのあり方を常に問い続けています。これまで地域医療を担ってきたことに、どこか甘えていた部分があったのではないかと反省することもあります。

私たちは、もっと地域の住民の皆さんの声に耳を傾け、より利用しやすく、より安心して受診していただける病院へと変わっていかなければなりません。皆さんからのご意見やお叱りの言葉こそが、病院をよくしていくための大切な糧になります。ぜひ率直なお声を届けていただければと思っています。

医療において大切なのは、単に検査の数値や画像、つまり「病気」だけを診ることではありません。その方がどのような人生を歩み、今どんな不安を抱えているのかという、「人」そのものに向き合うことが何より重要だと思っています。

当院には、私の祖母と同じくらいの世代の方々も診されています。そうしたお一人おひとりに、安心して医療を受けていただける病院でありたい。その思いをスタッフ全員で共有しながら、患者さん目線の病院づくりを進めていきたいと考えています。

地域の皆さんと手を取り合いながら、少しずつでもよりよい病院へと変わっていければと思っています。

*本記事の内容は全て2026年4月時点のものです。
 

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