子どもの便秘:医師が考える原因と対処法|症状辞典

子どもの便秘

受診の目安

夜間・休日を問わず受診

急ぎの受診、状況によっては救急車が必要です。
どうしても受診できない場合でも、翌朝には受診しましょう。

  • お腹がパンパンに張っている
  • 機嫌が悪く、お腹を触られるのを嫌がる

診療時間内に受診

翌日〜近日中の受診を検討しましょう。

  • 1週間に2回以下しか出ない
  • 排便時に泣く・機嫌が悪くなる
  • 便が硬く血が付くことがある

場合によって受診を検討

気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。

  • 一時的なもので、様子に変わりなく食べたり眠ったりできている

メディカルノート編集部 [医師監修]【監修】

便秘とは排便が順調に行われない症状のことで、排便の回数や排便量の減少がみられます。毎日排便がみられた場合でもごく少量のみであり、腹部膨満(ぼうまん)感などの症状がある場合は便秘と考えられます。

子どもは消化管の機能が未熟であり、排便習慣も整っていないことが多いため、便秘になりやすいといえます。しかし、中には何らかの病気が原因で便秘となることもあるため、注意が必要です。

  • 排便が3日以上ないものの、腹痛や膨満感などの症状を伴わない
  • 便秘になったと同時に発熱を生じた
  • 便が硬く、便意があるにも関わらず排便に至らない

これらの症状がみられた場合、原因としてどのようなものが考えられるのでしょうか。

子どもは便秘になりやすいものですが、以下のような病気によって排便がうまくいかなくなることがあります。

小腸や大腸などの病気によって便秘が引き起こされることがあります。子どもが発症しやすい病気には、以下のようなものが挙げられます。

ヒルシュスプルング病

腸管の蠕動(ぜんどう)運動を司る神経が生まれつき欠落しているため、飲食物の正常な消化が行われず、重度な便秘を引き起こす病気です。乳児期に発見されることが多く、便秘のほかにも腹部膨満や嘔吐がみられます。また、大腸の拡張が生じるため、重症な場合には大腸穿孔を引き起こすケースもあります。

ヒルシュスプルング病
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鎖肛(さこう)

生まれつき、肛門の形状に異常がみられる病気です。便の排出路が閉塞・狭窄することで新生児の頃から重度な便秘や嘔吐、腹部膨満などがみられます。

鎖肛
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便意はさまざまな神経によって司られており、実際に排便する際には、いきむ力も必要となります。これらに異常がみられる場合にも便秘が引き起こされることがあり、主な病気としては以下のものが挙げられます。

二分脊椎(にぶんせきつい)髄膜瘤(ずいまくりゅう)など

便意は、直腸内に便が侵入して直腸の壁が広げられることが刺激となって発生します。直腸で発生した刺激は、脊髄神経で感知されて脳へ伝えられ、便意を感じるようになります。

このため、二分脊椎や脊髄瘤などのように脊髄神経に異常が生じる病気がある場合には、うまく便意が生じないために便秘を生じることがあります。

二分脊椎
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ダウン症候群

染色体異常の一種であり、21番染色体が1本多いために、さまざまな症状を引き起こす生まれつきの病気です。

主な症状は精神発達遅滞と特徴的顔貌ですが、先天性心疾患や低身長、肥満、難聴など多岐に渡る症状が現れます。症状のひとつとして筋力の弱さが目立つこともあり、腹筋の力が弱いことで排便がうまくできずに便秘を引き起こすことがあります。

ダウン症候群
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クレチン症

生まれつき、甲状腺ホルモンの分泌が低下する病気です。

甲状腺ホルモンは、全身に器官を活性化させる作用があり、分泌が低下すると疲労感や悪寒、むくみ、抑うつ気分などの症状が現れるようになります。また、腸管の蠕動運動が低下することで便秘を引き起こすことも少なくありません。

子どもの便秘はよくみられる症状であるため、特にほかの症状がない場合は軽く考えられがちな症状のひとつです。しかし、中には思いもよらない病気が潜んでいることもあるため、見過ごすことのできない症状でもあります。

特に、便秘とともに強い腹痛や発熱などの症状を伴う場合、便の性状に異常がある場合、頻回の嘔吐がみられる場合などは、なるべく早く病院を受診するようにしましょう。

受診する診療科は小児科がよいです。ぐったりしているなど緊急性が高いと思われる症状がある場合には、休日・夜間問わず救急外来を受診することがすすめられます。

また、受診の際には、どれくらい便秘が続いているのか、便秘以外の症状、普段の排便習慣などについて詳しく医師に説明するようにしましょう。

子どもの便秘は日常生活上の習慣が原因になっていることがあります。主な原因とそれぞれの対処法には以下のものが挙げられます。

便の硬さは摂取した水分量によって異なり、水分量が少ないと便が硬くなる傾向があります。その結果、排便時に硬い便が肛門を傷つけたり、大きくなった便が肛門から排出できずに便秘を引き起こしたりすることがあります。

便を柔らかくするには

便が硬くなるのを防ぐには、十分な水分補給を心がけることが大切です。子どもは思いもよらない場面で大量の汗をかき、脱水傾向になることがあります。そのため、外出時なども、こまめに水分を摂るようにしましょう。

偏食によって野菜を始めとした食物繊維が含まれた食品の摂取量が少ないと、便秘の原因となることがあります。

食物繊維を多く摂るには

食物繊維を多く摂るには、野菜やこんにゃく類、穀物などを積極的に取り入れるようにしましょう。

子どもは排便習慣が整っていないことが多く、突然の便意をもよおすことがあります。学校などで排便することに抵抗感がある場合は、便意を我慢して便秘のきっかけとなることも少なくありません。

排便習慣を整えるには

朝や晩など落ち着いて排便ができる時間帯に、トイレにゆっくり入る練習をするとよいでしょう。実際に排便に至らなくても、トイレに座る習慣が身につけば、自然と排便習慣ができ上っていきます。

日常生活上の習慣を改善しても便秘が解消しない場合は、下剤の服用などが必要なケースもあり、中には思わぬ病気が原因となっていることもあります。軽く考えずに早めに病院を受診するようにしましょう。

原因の自己判断/自己診断は控え、早期の受診を検討しましょう。