子どもの血便:医師が考える原因と対処法|症状辞典

子どもの血便

受診の目安

夜間・休日を問わず受診

急ぎの受診、状況によっては救急車が必要です。
どうしても受診できない場合でも、翌朝には受診しましょう。

  • どうあやしても泣き止まない、泣くことを繰り返している
  • 赤い粘液のような(イチゴジャム状)便が出ている
  • 顔色が悪い、ぐったりしている、お腹を触ると泣くなどの様子がある

診療時間内に受診

翌日〜近日中の受診を検討しましょう。

  • 嘔吐、下痢などがある
  • 便が硬く、便の表面に少し血がついている

場合によって受診を検討

気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。

  • トマト、イチゴなど赤いものを多量に食べた後で、普段どおり元気にしている

メディカルノート編集部 [医師監修]【監修】

血便とは、胃や腸、肛門などの消化管から出血した血液が便に混ざったものです。赤い食べ物が原因で便が赤くなることがありますが、これは食べ物の色素などによる赤みで血便ではありません。

本当に便に血が混ざっているのであれば、どこからか出血していることを示しています。子どもに血便がみられることはまれではなく、心配ない場合も多いです。

しかし、なかには緊急を要する病気が隠れていることもあります。

  • 子どものおむつを替えるとき、ドロッとしたジャムのような便がついていた
  • 子どもが昨日の夜から腹痛・嘔吐・下痢があって、今日は赤色の水様便が出た
  • トイレットペーパーに血がついていたらしく、肛門が痛いと言っている

突然、子どもに血便が起きた場合、保護者の方は驚き心配になることでしょう。上で挙げたようなケースでは何が原因であり、どのような場合に病院を受診したほうがよいのでしょうか。

血便は、年齢を問わず誰にでも起こりうる症状で多くは原因が共通していますが、子どもに特有のものもいくつかあります。

血便の原因として考えられる病気のうち、子ども特有のものには以下があります。

腸重積(ちょうじゅうせき)

腸重積とは、口側の腸管が肛門側の腸管に入り込んでしまう状態を指します。2歳くらいまでの子どもに好発し、発症すると腹痛が現れ、痛みは数分~20分程度の間隔で強くなったり弱まったりを繰り返します。発症してから時間が経つと、嘔吐や粘血便なども認めるようになります。腸重積が起きて時間が経過すると、腸は次第に血液が流れなくなるために組織が死んでいきます。このような腸の状態になる前に治療を急がなければなりません。

メッケル憩室(けいしつ)

メッケル憩室とは、胎生早期の赤ちゃんの回腸に生じた袋状の突起物のことです。メッケル憩室があったとしても無症状のことが多いですが、憩室から出血すると血便を認めるようになります。

また、メッケル憩室の合併症として、メッケル憩室炎や腸閉塞、腸の穿孔(せんこう)(穴が開く)などがあります。このような合併症を発症した場合には、嘔吐や腹痛、発熱などの症状が現れます。

メッケル憩室
関連記事数: 1記事

若年性ポリープ

消化管の粘膜の一部がイボ状に盛り上がったものをポリープといい、主に入学前の子どもに発生するポリープを若年性ポリープといいます。ポリープに出血が起こると血便下血(げけつ)(肛門からの出血)の症状が現れ、ときにポリープが肛門から脱出することもあります。

IgA血管炎(血管性紫斑病、アレルギー性紫斑病)

IgA血管炎とは、血管の壁にIgA抗体という抗体が沈着することで、血管に炎症が生じて紫斑(しはん)(皮膚にできる紫色の皮下出血)が起こる病気です。3~10歳の男の子によくみられます。

紫斑が主な症状ですが、腹痛や関節痛、吐き気・嘔吐、血便、下血などの症状を伴うことも多くあります。ただし、このような症状は紫斑が現れる前に現れることもあります。

IgA血管炎
関連記事数: 2記事

大人にも子どもにもみられる頻度の高い病気としては、以下のようなものがあります。

裂肛(れっこう)

裂肛とは、いわゆる切れ痔のことで、便秘や下痢が続くなどして肛門から近い部分が切れてしまった状態です。

肛門の上皮が切れて出血が生じることで、トイレットペーパーに血が付着したり、便に血が混じったりするようになります。このような出血症状だけでなく、通常は肛門に痛みを自覚します。

切れ痔
関連記事数: 13記事

感染性胃腸炎

感染性胃腸炎は、細菌やウイルスといった病原体によって腸が炎症を起こす病気です。病原体が付着した手を口に入れたり、汚染された食品を食べたりするなどして感染します。

原因となる病原体によって特徴的な症状は異なりますが、血便は主に細菌性の胃腸炎にみられ、腹痛や下痢、発熱などの症状を伴う場合が多くあります。

感染性胃腸炎
関連記事数: 9記事

炎症性腸疾患

炎症性腸疾患とは、長期にわたって腸に原因不明の炎症や潰瘍が起こる病気の総称で、含まれる病気には潰瘍性大腸炎クローン病があります。

炎症によって下痢や腹痛、血便、発熱などがみられ、再燃(再び症状が悪化する)と寛解(症状が落ち着く)を繰り返すのが特徴です。炎症部位からの出血が続くと貧血になることもあります。

潰瘍性大腸炎
関連記事数: 26記事
クローン病
関連記事数: 29記事

便が真っ赤になるほどに多量の出血がある、腹痛や下痢など、ほかの症状を伴う場合には速やかに病院を受診したほうがよいでしょう。また、小さな子どもは自分で症状を的確に訴えることができません。元気がない、激しく泣いているなど、普段と比べて様子がおかしいと感じる場合も早めの受診がすすめられます。気になる症状がなく普段と変わらず元気であれば、様子をみながらの受診で問題ないでしょう。

内科や小児科を受診し、診察の際には症状が現れ始めた時期、子どもの様子、便の色や状態などを医師に伝えましょう。このような情報が診断の参考になることがあります。便に関しては口頭で伝わりにくいため、便をそのまま持参するか、写真に撮っておくとよいでしょう。

病気以外にも日常生活上の原因で便が赤くなることがあります。原因としては以下が挙げられます。

トマトやイチゴなどの赤い食べ物を多量に食べた場合、消化されずに残ったものや色素が便に混ざって赤くなり、血便と勘違いすることがあります。

食べたものに心当たりがある場合

赤っぽい便が出ても、上記のような食べ物を多量に摂取した心当たりがあれば、便の色は食べ物由来である可能性があります。少し様子をみてみましょう。

血が混じっているような便が続いている場合、繰り返すような場合には、原因が食べ物以外にあるかもしれません。一度病院を受診したほうがよいでしょう。

原因の自己判断/自己診断は控え、早期の受診を検討しましょう。