便が黒い:医師が考える原因と対処法|症状辞典
急ぎの受診、状況によっては救急車が必要です。
どうしても受診できない場合でも、翌朝には受診しましょう。
翌日〜近日中の受診を検討しましょう。
気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。
埼玉医科大学病院消化管内科 診療部長 教授
今枝 博之 先生【監修】
便の色が突然黒くなったとき、伴う症状などによっては注意が必要です。
このような症状が現れたとき、考えられる原因にはどのようなものがあるでしょうか。
便が黒いと感じたとき、なんらかの病気が原因となっていることもあります。
黒い便の原因となる胃腸の病気には、主に以下のようなものがあります。
胃潰瘍や十二指腸潰瘍は、ヘリコバクター・ピロリ菌の感染や消炎鎮痛剤などによって胃粘膜の強度が落ち、それぞれの部位が胃酸によって損傷した症状です。この病気で黒い便が出るのは、粘膜の傷が血管に及ぶと出血を起こし、血液が胃酸と反応し黒くなったものが便と共に排出されるためです。
胃潰瘍や十二指腸潰瘍では、空腹時にみぞおち辺りが痛むことが多いといわれています。また、胸焼けやげっぷ、吐き気などもよくある症状です。
がんが血管を傷つけ出血すると、上記と同様の理由で黒い便の原因となることがあります。
胃がんは初期には自覚症状があまりないことも多くありますが、胃の痛みや胸やけ、気分不快、体重減少などが現れることもあります。
いわゆる便秘の状態となると、腸内で便の腐敗や酸化が起こる、水分が抜けることなどによって便の色が濃褐色となることがあります。
主な便秘の症状としてはお腹の張りや食欲不振のほか、腰痛や体の疲れ、肌荒れなどさまざまな症状が挙げられます。
大腸がんは赤い血便がみられたり、便が細くなったり、便秘などがみられますが、小腸に近い盲腸や上行結腸にできると黒い便が出ることがあります。
まれに小腸の潰瘍や血管の病変、腫瘍などにより赤い血便だけではなく、黒い便が出ることがあります。
上記以外にも、黒い便が出る可能性が考えられるケースがあります。
貧血などの治療薬として、鉄分を配合したいわゆる鉄剤を造血剤として用いることがあります。鉄剤を服用すると、吸収されない鉄分の色によって便が黒くなるケースがあります。
特別害のない黒い便ですので貧血の治療が優先されることも多いですが、鉄剤を内服していて黒い便が気になる場合、主治医に相談してみるとよいでしょう。
基本的に、鉄剤の内服などの心当たりがないのに黒い便が続く、特にドロドロとした真っ黒な便が出たときには必ず受診しましょう。このような便は胃などからの出血が原因となっている可能性があります。
受診科目は消化器内科がよいでしょう。
受診の際には黒い便がいつ・どの程度の量出たか、繰り返しているのか、他に症状があるかどうかなどを伝えるようにしましょう。
普段の食事が原因で黒い便が出ることもあります。
たとえば、海藻類をたくさん食べたときには、消化しきれずにそのまま色素が反映されて黒い便が出ることがあります。また、イカスミやチョコレート、ココアなどをたくさん摂取したときも色素がそのまま腸に届くため、黒い便となることがあります。
同時に肉類や脂質の摂りすぎは腸内の悪玉菌を増加させ、便の変色や酸化といった現象を起こし、便の色が濃褐色となることがあります。
上記にあげたうち、肉類や脂質の摂りすぎの場合は腸内環境を乱している可能性があります。この状態を改善するためには、肉類や脂質を抑えてバランスのよい食事を心がけることが大切です。
たとえば、腸内環境や蠕動運動を活性化させる食物繊維は、水溶性、不溶性をどちらも摂るのがよいでしょう。水溶性食物繊維は海藻やオクラなどに多く含まれ、不溶性食物繊維は野菜やキノコ類などに豊富です。
食事などを改善しても症状がよくならないときには、思いもよらぬ原因が潜んでいるかもしれません。一度内科や消化器内科で相談してみましょう。