赤ちゃんの血便:医師が考える原因と受診の目安|症状辞典
急ぎの受診、状況によっては救急車が必要です。
どうしても受診できない場合でも、翌朝には受診しましょう。
翌日〜近日中の受診を検討しましょう。
気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。
メディカルノート編集部 [医師監修]【監修】
血便とは、血液が混じった便のことで、胃や腸、肛門などの消化管からの出血が原因となります。
赤ちゃんに血便がみられることも珍しくなく、原因としてはさまざまなものが考えられます。中には、まれではあるものの重大な病気が隠れていることもあります。
こういった場合は何が原因で、どのようなときに病院を受診すべきなのでしょうか。
血便は大人にも赤ちゃんにも起こりうる症状で、考えられる病気の多くは誰でも発症する可能性のあるものですが、なかには赤ちゃん特有のものもあります。
血便の症状がみられる病気のうち、赤ちゃん特有のものは主に以下があります。
乳児良性直腸出血とは、何らかの原因によって直腸の粘膜の代謝が活発になることで、微量の出血を起こすもので、母乳栄養の場合に多いことが知られています。
直腸からの出血によって便に筋状や点状の血液が混じりますが、通常はほかの症状を伴いません。
また、全身状態が良好であることが特徴です。ほとんどの場合、自然に治癒していきます。
新生児乳児消化管アレルギーとは、新生児や乳児が食べ物に対してアレルギー反応を起こす病気です。
牛乳由来のミルクが原因の大半を占めており、母乳が原因になることもあります。そのほか、米や大豆、卵なども原因になりえます。
嘔吐、血便、下痢の3つが主な症状で、このような症状は一般的に原因となるものを摂取してから数時間〜数日で現れます。
腸重積とは、小腸が大腸にはまり込んでしまう病気です。2歳までの赤ちゃんに多くみられ、進行すると腸が壊死(死んでしまうこと)してしまうため緊急を要します。
典型的な症状は腹痛で、痛みは数分~十数分の間隔で強くなったり弱くなったりを繰り返すことが特徴です。腹痛のほか、嘔吐や血便(粘血便)がみられることも多くあります。
メッケル憩室とは、妊娠初期の段階で赤ちゃんの消化管の一部に生じた袋状の突起物を指します。メッケル憩室があっても多くは無症状で経過しますが、メッケル憩室から出血を起こすと血便の症状がみられる場合があります。
また、合併症としてメッケル憩室炎や腸閉塞、腸重積、穿孔(穴が開くこと)などがあり、発症すると嘔吐や腹痛、発熱などが現れます。
壊死性腸炎とは、腸への血流が障害され、それに細菌感染が加わることで腸が壊死する病気です。
早産で生まれた赤ちゃんや低体重で生まれた赤ちゃんに発症することが多く、1,500g未満の赤ちゃんが全体の約80%を占めるとされています。
症状は進行状況によって3段階に分けて考えられ、初期にお腹が張る、飲みが悪くなるなどの症状が現れます。進行するとお腹の張りが強くなるほか、血便がみられ、さらに進行すると血圧低下などのショック症状が起こる場合もあります。
大人にも起こりうる頻度の高い病気としては、以下のようなものがあります。
裂肛とは、肛門から近い部分が切れてしまう病気で、いわゆる“切れ痔”のことです。
便秘によって便が硬くなったり、下痢便で頻回に排便したりした際に起こることが多く、排便に伴って痛みや出血が現れます。出血は肛門の皮膚からみられますが、便に混じることもあります。
感染性腸炎とは、細菌やウイルスなどに感染し、腸に炎症が生じる病気です。主に病原体が付着した物や手を口に入れたり、汚染された食べ物を摂ったりした場合に感染が起こります。
症状は原因となる病原体によって異なりますが、血便は基本的に細菌性のもので現れ、併せて腹痛や下痢、嘔吐などもよくみられます。
炎症性腸疾患とは、明らかな原因がなく腸の粘膜に炎症や潰瘍が起こる慢性疾患の総称で、潰瘍性大腸炎とクローン病の2つの病気からなります。
症状は腹痛と下痢がよくみられ、腸からの出血によって血便を認める場合もあります。また、長期にわたって罹患していると、肛門や腸に関連した合併症が起こることもあります。
赤ちゃんに血便がみられても普段と変わらず元気であれば、それほど心配は要らず、様子を見ながら翌日〜近日中に病院を受診して問題ないでしょう。
ただし、嘔吐や下痢、お腹の張りなど、ほかの症状を伴う場合や元気がない、母乳やミルクを飲まない、泣き方がひどいなど、様子がおかしいと感じる場合には早急に受診することがすすめられます。
受診先としては小児科がよいでしょう。夜間や休日で閉まっている場合には、救急外来を受診する・場合によっては救急車を呼ぶなどの対応が必要なこともあります。
受診の際には、血便が起こり始めた時期や頻度、ほかの症状、赤ちゃんの様子などについて、できるだけ詳しく医師に伝えましょう。
また、便の状態が診断の参考になることが多くあります。オムツごと持参するか、携帯やデジカメなどで写真を撮っておくとよいでしょう。