舌が黄色い:医師が考える原因と対処法|症状辞典

舌が黄色い

明海大学歯学部 病態診断治療学講座 口腔顎顔面外科学第2分野/明海大学歯学部付属病院 歯科口腔外科 教授

坂下 英明 先生【監修】

舌は筋肉で構成される味覚の感覚受容器であるとともに、咀嚼(そしゃく)や発語にも関与する重要な器官です。健康な舌は薄紅色を呈し、表面には数多くの細かい乳頭と呼ばれる組織が密生しています。

舌の色調は、健康状態を示すバロメーターであるとも考えられており、特に東洋医学では重要な身体所見の1つとされています。舌の色はさまざまに変化することがありますが、中には黄色くなるケースもあります。

  • 舌に黄色の膜のようなものができ、口臭が気になるようになった
  • 口や目が乾きやすく、舌が黄色みを帯びている
  • 舌や頬粘膜に白っぽい付着物があり、舌がやや黄色っぽく見える

これらの症状が見られた場合、原因としてどのようなものが考えられるでしょうか。

舌が黄色くなる原因として、日常生活上の好ましくない習慣が考えられることがあります。原因となる主な習慣とそれぞれの対処法は以下のとおりです。

口の中は食べカスや細菌の繁殖などによって不衛生になりやすい部位です。不衛生な状態が続くと舌苔がたまりやすくなって舌が黄色くなることがあります。

口腔環境を維持するには

毎食後ごとの丁寧なブラッシングはもちろんのこと、歯間ブラシやデンタルフロスも併用して歯の隙間の汚れもしっかり落とすようにしましょう。また、セルフケアでは落としきれない歯垢などは定期的に歯科医院でクリーニングしてもらうことも大切です。

カレーなど黄色い色素が含まれる飲食物を多く取ると、舌苔が変色して舌が黄色に見えることがあります。

舌苔を黄色くしない秘訣とは

黄色い色素のある飲食物を取った後は口腔内をゆすぎ、必要であれば歯ブラシなどで舌苔を撫でるようにして汚れを落とすようにしましょう。

日常生活上の対処法を講じても症状が改善しなかったり悪化したりした場合には、思わぬ病気が潜んでいる可能性も否定できません。

軽く考えずに早めにそれぞれの症状に合った診療科を受診し、適切な検査・治療を受けるようにしましょう。

舌の色はさまざまな体調の異常によって変化することがあり、中には黄色みを帯びた色調を呈することがあります。舌の色が黄色くなる(舌が黄色に着色する)原因は多岐にわたりますが、治療を要する病気が原因のこともあるため注意すべき症状の1つといえます。舌の色がやや黄色くなる病気には以下のようなものが挙げられます。

舌が着色する原因は口の中に発症する病気である場合があります。原因となる主な病気は以下のとおりです。

口腔カンジダ症

カビの一種であるカンジダが口腔内で異常増殖する病気です。カンジダは皮膚や口腔内に常在しているカビですが、体調不良時や疲れがたまったときなどに免疫力が低下すると異常増殖を引き起こして口腔カンジダ症を発症することがあります。

発症初期には頬粘膜や舌などに白っぽい偽膜を形成するのが特徴で、拭うと簡単に取れますが、粘膜のびらん(ただれ)や出血を引き起こすことがあります。また、偽膜は飲食物などに影響によって黄色く見えるようになることもあります。進行すると偽膜は見られなくなりますが、舌の表面が委縮してヒリヒリと痛み、舌が赤みを帯びるようになります。

口腔カンジダ症
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歯周病、虫歯など

舌の表面を覆う乳頭には細菌や食べカスなどが固まった舌苔が付着しています。本来の舌苔は白っぽい色味を帯びていますが、長期間過剰に蓄積した状態が続くと飲食物などの影響によって黄色く変色することがあります。

歯周病や虫歯などによって口腔内の細菌が増えると舌苔が肥厚することがあり、舌を黄色くする原因となることも少なくありません。

歯周病
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舌が黄色くなる原因として、口の中ではない部位に生じる病気が原因のことがあります。原因となる主な病気は以下のとおりです。

脱水症

水分摂取不足や大量の発汗、頻回の嘔吐下痢などによって体内の水分が減少する病気です。脱水症を発症すると唾液の分泌量が減少して口の中が乾くようになり、唾液による自浄作用が行われにくくなるため不衛生な状態となります。その結果、舌苔が肥厚して舌が黄色くなることがあります。

脱水症
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シェーグレン症候群

自己免疫の異常による病気の1つであり、唾液腺や涙腺に慢性的な炎症が引き起こされます。唾液線や涙腺の機能が低下することで唾液や涙の分泌量が低下し、口の中や目が乾きやすくなります。口腔内環境の悪化による歯周病や虫歯、結膜炎を発症しやすくなり、舌が黄色みを帯びることも少なくありません。

シェーグレン症候群
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黄疸(おうだん)(肝臓、胆道、膵臓(すいぞう)の病気)

肝臓で生成される胆汁には脂肪を分解する消化酵素が含まれており、胆嚢に貯留された後に胆管を通って十二指腸に排出されます。胆汁には黄色い色素を持つビリルビンと呼ばれる物質が含まれており、排出路に閉塞(へいそく)が生じてうっ滞すると血液中のビリルビン濃度が上昇して皮膚や粘膜が黄色くなる黄疸()が見られるようになります。通常は目の粘膜などに見られますが、進行すると全身の皮膚や粘膜が黄色くなり、舌が黄色っぽく見えるようになります。

原因となる病気には肝臓がん、胆道結石、胆道がん膵臓がんなどが挙げられます。

膵臓がん
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舌の色調の変化は特に痛みなどの症状を伴わない限り軽く思われがちで、舌が黄色くなったからといって病院を受診する人はまずいないでしょう。しかし、中には思いもよらない病気が潜んでいる場合もあるので注意が必要な症状でもあります。 

特に、口腔内に痛みを伴う病変がある場合、何らかの全身症状を伴う場合にはなるべく早めに病院を受診して検査・治療を開始するようにしましょう。

受診に適した診療科はそれぞれの症状によって異なり、口腔内の粘膜の病気によるものや歯・歯茎のトラブルによるものは口腔外科や一般歯科、何らかの全身症状がある場合にはかかりつけの内科などで相談するのも1つの方法です。受診の際にはいつから舌が黄色いのか、思い当たる誘因、随伴する症状、現在罹患している病気や治療歴を医師に詳しく説明するようにしましょう。

受診の目安

診療時間内に受診

翌日〜近日中の受診を検討しましょう。

  • 痛み、ひび割れなどがある
  • 味がわかりにくい
  • 舌だけでなく頬の粘膜などにも黄色い部分がある

場合によって受診を検討

気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。

  • うがいや舌磨きなどでよくなり、その後繰り返さない
原因の自己判断/自己診断は控え、早期の受診を検討しましょう。