舌が割れる:医師が考える原因と対処法|症状辞典
メディカルノート編集部 [医師監修]【監修】
舌は筋肉で形成される器官であり、味覚を感知する感覚器であると共に、発語の調節も担っています。舌の色調や形状などは健康状態を示すバロメーターとも考えられており、身体診察上重要な視診項目です。
舌には慢性的にさまざまな刺激が加わるため、トラブルを生じることも少なくありません。中には「舌が割れる」といった症状がみられることもあります。
これらの症状がみられた場合、原因としてどのようなものが考えられるでしょうか。
「舌が割れる」症状は、日常生活上の習慣によって引き起こされていることがあります。原因となる主な習慣とそれぞれの対処法は以下の通りです。
過度な水分不足やアルコール・塩分の過剰摂取は脱水を引き起こして唾液分泌量を低下させ、口腔内乾燥による舌の割れの原因になることがあります。
口腔内に適度な潤いを与えるには、こまめに水分摂取を行い、アルコールや塩分の摂取は適量に止めることが大切です。仕事中や外出先などで水分補給が十分にできないときには、飴やガムを口にして唾液分泌を促したり、保湿効果のある口腔用スプレーなどを使用したりするのも有用です。
口の中は食べカスなどが溜まりやすく、不衛生になりやすい部位です。不衛生な状態が続くと繁殖した細菌によって舌に炎症が生じ、溝状舌の原因となることがあります。
毎食ごとのブラッシングはもちろんのこと、ブラッシングのみでは除去できない歯垢などは半年に一度程度の頻度で歯科医院を受診し、クリーニングを受けるようにしましょう。
日常生活上の対処法を講じても舌の割れが改善しない場合は、思いもよらない病気が潜んでいる可能性もあります。軽く考えず、症状に合った診療科を受診して早めに治療を開始するようにしましょう。
舌は飲食物の刺激や咀嚼・発声による物理的なダメージが加わりやすいため、さまざまなトラブルを生じることがあります。以下のような病気によって「舌が割れる」症状がみられることもあります。
「舌が割れる」症状は、舌に生じる病気によって引き起こされることがあります。原因となる主な病気は以下の通りです。
舌の表面に多数の深い溝やシワが形成され、舌が割れたように見える病気です。先天的な形態異常が主な原因ですが、舌への外傷や炎症などが原因になることもあります。
通常は形状の異常以外に症状はありませんが、溝やシワの内部に汚れが溜まって細菌感染を引き起こし、痛みや腫れを生じることもあります。
皮膚や口腔内の常在菌であり、カビの一種であるカンジダが口腔内で異常増殖する病気です。体調が優れないときや疲れが溜まっているときなど、免疫力が低下しがちなときに発症しやすいのが特徴です。
発症すると、口腔粘膜や舌に白く硬い偽膜を形成します。症状が長引くと、舌に形成された偽膜が肥厚して舌に亀裂を生じることがあり、痛みや出血などを引き起こします。また、味覚障害を伴うことも少なくありません。
口腔内に表面が白い偽膜で覆われた発疹を生じる病気です。虫歯や入れ歯などによる慢性的な刺激、やけど、咬傷(咬まれた傷)、喫煙習慣、ウイルス感染症など原因はさまざまです。口内炎は舌に形成されることもあり、悪化すると表面の偽膜がはがれて出血や強い痛みを引き起こします。その結果、舌の一部に亀裂が走ったように見えることがあります。
舌に発生するがんです。早期の段階ではほとんど自覚症状はありませんが、進行すると舌に大きなしこりを形成し、しこりの表面が割れたカリフラワーのような潰瘍病変を呈することがあります。出血や痛み、膿による悪臭を伴い、舌が割れたようになることがあります。
「舌が割れる」症状は、口腔内以外の部位に生じる病気によって引き起こされることがあります。原因となる病気は以下の通りです。
舌は唾液によって潤いが維持されており、唾液の分泌低下によって口腔内が過度に乾燥すると、舌の表面に亀裂を生じることがあります。痛みや出血を伴うことが多く、口臭の原因となることも少なくありません。
また、自己免疫性疾患の一種であるシェーグレン症候群では、唾液腺や涙腺に慢性的な炎症が生じることで唾液と涙の分泌が低下するため、口腔内の乾燥だけでなく目の乾燥による痛みや充血などを伴うのが特徴です。
舌の上皮はターンオーバーによって日々生まれ変わっていますが、新たな上皮の生成に必要なビタミン類やタンパク質などが極端に不足した状態が続くと、正常な上皮が生成されずに舌の菲薄化を引き起こすことがあります。また、それに伴って表面に多くの亀裂を生じることも少なくありません。
通常の生活を送っていれば舌に症状がみられる栄養不良になることはまずありません。しかし、胃腸炎やがんなどによる栄養吸収障害や神経性食思不振症などによる栄養摂取量の極端な減少が生じる場合に発症することがあります。
「舌が割れる」症状は比較的よくみられる症状であり、痛みや出血などの随伴症状がない場合は病院を受診せずにやり過ごしている方が多いでしょう。しかし、「舌が割れる」症状は、何らかの重篤な病気によって引き起こされていることがあるので注意が必要です。
特に、舌に出血や白斑、口内炎などの症状がある場合、しこりが形成されている場合、何らかの全身症状がある場合はなるべく早めに病院を受診しましょう。
受診に適した診療科は口腔外科や一般歯科、皮膚科などですが、口腔内以外の部位に何らかの症状がある場合はかかりつけの内科などで相談するのもひとつの方法です。受診の際には、いつから舌が割れているのか、随伴する症状、割れる誘因、現在罹患している病気や内服中の薬などについて詳しく医師に説明するようにしましょう。
翌日〜近日中の受診を検討しましょう。
気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。