舌のできもの:医師が考える原因と対処法|症状辞典
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メディカルノート編集部 [医師監修]【監修】
舌は味覚を感じる器官であると同時に、形を自在に変えて発音や咀嚼の補助を行う器官でもあります。筋肉でできており、表面には「舌乳頭」と呼ばれる細かい突起が密生しています。また、裏面は粘膜で覆われており、小唾液腺が分布して唾液を分泌しています。
舌は常に飲食物や唾液などの刺激や、歯などの物理的な衝撃を受けやすい器官であるため、さまざまなトラブルが起こりやすいことが特徴です。
これらの症状が見られた場合、原因としてどのようなものが考えられるでしょうか。
舌はできものができやすい器官ですが、中には以下のような病気が原因の場合があります。
舌自体の病気によってできものが形成されることがあります。原因となる主な病気には次のようなものが挙げられます。
口腔粘膜や舌に炎症が生じてできものができる病気です。原因はさまざまで、口腔衛生が保たれていないこと、栄養不足、ストレス、咬合不全や虫歯などによる物理的な刺激などが挙げられます。
日常的によく見られる症状であり、表面が白い偽膜で覆われる「アフタ性口内炎」や粘膜の発赤や水膨れが見られる「カタル性口内炎」などがあり、痛みを伴うのが特徴です。また、悪化すると潰瘍となって悪臭を放つ口臭の原因になることもあります。
虫歯や入れ歯などの刺激が慢性的に加わることや喫煙の刺激によって粘膜が肥厚し、白い板状・斑状の病変を形成する病気です。
舌の縁にできることが多く、舌がんの前病変とも考えられています。通常、痛みやかゆみなどは伴いませんが、悪化すると粘膜のびらんや潰瘍に進行することもあります。
舌にできるがんのことで、発症原因として遺伝や喫煙、物理的な刺激などが挙げられています。発症初期には前述の口内炎と区別がつかないこともよくあります。
口内炎であれば基本的には1週間、遅くとも2週間程度で自然に治癒します。しかし、舌がんは自然に治るどころか硬いしこりが触れてくる、しこりや潰瘍が大きくなるなど“大きくなりこそすれ、小さくなることがない”のが最大の特徴です。また、進行すると頚部リンパ節に転移して頸にしこりが触れるようになることも少なくありません。
舌のできものは以下のような全身性の病気によって引き起こされることもあります。
手足口病やヘルペスなどのウイルス感染症やカンジダなどの真菌感染症などによって舌にできものができることがあります。症状はそれぞれの感染症によって異なりますが、手足口病やヘルペスは小児に多く見られ、痛みを伴います。また、発熱や倦怠感などの全身症状が見られることも少なくありません。
一方、カンジダは舌の表面に白く固いできものができますが、通常は無症状で無理に剥がそうとすると出血や皮膚の剥離を引き起こします。
自己免疫の異常による病気で、口腔粘膜のアフタ性潰瘍、外陰部潰瘍、皮疹、ぶどう膜炎などの症状が見られる病気です。アフタ性口内炎は強い痛みを生じ、再発を繰り返すのが特徴です。
自己免疫の異常による病気で、全身のさまざまな臓器に炎症による多様な症状を引き起こします。症状はよくなったり悪くなったりを繰り返し、腎炎や神経障害など重篤な合併症を生じることもあります。口腔内には潰瘍を形成する口内炎を引き起こしますが、痛みを伴わないことが多いとされています。
舌のできものは日常的によく見られる症状であるため、発症したからと言って病院を受診する人は少ないでしょう。自然によくなるのを待ったり、市販薬を使用して対処したりする人が大部分です。
しかし、悪化する舌のできものは、思わぬ病気が潜んでいる可能性も否定できません。できものに強い痛みを伴う場合、再発を繰り返す場合、発熱など口腔外の症状がある場合などは放置せずに病院を受診するようにしましょう。
受診に適した診療科は口腔外科・頭頸部外科や皮膚科です。しかし、身体のどこかに別の症状があるなど全身性の病気が疑われる場合は内科やかかりつけ医で相談するのもよいでしょう。
また、受診の際には、いつからできものができたのか、痛みの有無、他部位の症状、患っている病気や家族歴などを詳しく医師に伝えるようにしましょう。
舌のできものは、日常生活上の好ましくない習慣が原因となることがあります。主な原因とそれぞれの対処法は以下の通りです。
口の中は飲食物や雑菌などによって衛生環境が乱されやすい部位です。このため、適切な口腔ケアを怠ると口腔内衛生環境が悪化して口内炎を生じやすくなります。
口腔ケアの基本は食後や就寝前のブラッシングです。しっかりと習慣づけて行うようにしましょう。また、歯周ポケットや歯の隙間などに溜まった歯垢はブラッシングだけでは除去できないので、定期的に歯科医院でクリーニングを受けることがすすめられています。
口の中は汚れが溜まりやすい部位ですが、唾液が分泌されることで自浄作用を保っています。脱水などによって唾液の分泌量が低下すると口腔内の自浄作用が低下して不衛生な状態となり、口内炎ができる原因になることがあります。
口の中の潤いは適度な水分補給を行うことで維持することができます。特に夏場や運動中は思わぬほど体内の水分を失っていることがあるので、こまめに水分補給するようにしましょう。また、塩分やアルコールなど、口腔内が渇きやすくなる飲食物は控えめにし、禁煙することも大切です。
日常生活上の習慣を改善しても症状がよくならない場合や再発を繰り返す場合は、思わぬ病気が原因になっている可能性があります。早期からの治療が望ましい病気もありますので、放置せずに早めにそれぞれの症状に合った診療科を受診して治療を受けるようにしましょう。