鼻水が白い:医師が考える原因と対処法|症状辞典

鼻水が白い

国際医療福祉大学成田病院 耳鼻咽喉科 教授

岡野 光博 先生【監修】

鼻水は涙を流したときやあくびをしたときなど、日常生活のさまざまな場面で見られる症状です。そのため、軽く考えられがちな症状でもあります。しかし、頻繁に出る鼻水には思いもよらない原因が潜んでいることがあります。鼻水の色や性状は原因によって異なりますが、“白い鼻水”は注意すべき体のサインであることも少なくありません。

  • 就寝中に白い鼻水が喉の奥に垂れて咳が出る
  • 発熱や喉の痛みとともに白い鼻水が出るようになった
  • 鼻づまりがひどくなり、時々悪臭のある白い鼻水が出ることがある

これらの症状が見られる場合、原因としてどのようなものが考えられるでしょうか?

白い鼻水は日常生活上の好ましくない習慣によって引き起こされることがあります。

鼻の粘膜には、ウイルスや細菌などの病原体を捉えて体外へ押し出す“線毛”と呼ばれる構造が密生しています。線毛は乾燥するとはたらきが鈍くなるため、鼻の中が乾燥することで上気道炎などにかかりやすくなります。その結果、白い鼻水が出るようになることも少なくありません。

鼻の乾燥を防ぐには

鼻の中に適度な湿度を維持するには、加湿器などを用いて室内の乾燥を防ぐことが大切です。また、冬など空気が乾燥しやすい時期は外出時にマスクを着用するのも鼻の乾燥予防に役立ちます。ワセリンなどの保湿剤を小鼻の裏に塗ることも有効です。

日常生活上の対策を行っても白い鼻水が改善しない場合は、思いもよらない病気が原因のことがあります。中には鼻や副鼻腔のがんによるものもあるので軽く考えず、一度は医師の診察を受けるようにしましょう。

白い鼻水は病気によって引き起こされることがあります。白い鼻水が見られる代表的な病気は以下の通りです。

白い鼻水は、以下のような“炎症”が主体となる病気によって引き起こされることがあります。

急性上気道炎(風邪)

何らかのウイルスや細菌が喉や鼻の粘膜に感染することによって生じる病気です。発熱や倦怠感などの全身症状のほか、喉の痛み、鼻水、鼻づまりなどの症状を引き起こします。

鼻水は、発症してからの時間経過によって色や性状が変化するのが特徴であり、発症して間もない頃は透明でサラサラした鼻水が出ますが、時間が経つと鼻水の中に病原体と戦った後の白血球の死骸などが含まれるようになるため、白く粘り気のある性状に変化します。

副鼻腔炎

副鼻腔にウイルスや細菌が感染し、炎症が慢性化する病気です。主な症状は鼻づまり、顔の痛み、頭重感、発熱などですが、副鼻腔内にたまった粘液が鼻水として排出されることがあります。鼻水は白血球の死骸などが含まれるため白く粘り気があり、就寝中などに喉の奥に流れると喉の違和感や咳などの症状を引き起こすことも少なくありません。また、症状が長引くと慢性的な気管支炎を併発することがあります。

副鼻腔炎
関連記事数: 10記事

白い鼻水は、以下のような“腫瘍”を形成する病気によって引き起こされることがあります。

鼻副鼻腔がん

鼻や副鼻腔の中に生じるがんのことです。副鼻腔であればどの部位にも発生する可能性はありますが、多くは“上顎洞(じょうがくどう)”と呼ばれる部位に発生します。

早期段階ではほとんど症状がないのが特徴であり、進行してがんが大きくなると顔の痛みや鼻づまりなど副鼻腔炎と同様の症状を引き起こします。多くの場合は左右の鼻どちらかの症状か、症状に左右差が見られます。また、がんの表面の組織はもろいため乾燥など些細な刺激によって出血を起こしやすく、頻回に鼻血が出るようになります。さらに、などを伴う白い悪臭のある鼻水が見られることも少なくありません。

鼻水は泣いたときやあくびをしたとき、軽い風邪を引いたときなどにも生じる症状であるため軽く考えられがちです。しかし、白い鼻水は上で述べたような病気が背景にある可能性もあります。特に、喉の痛みや発熱など鼻水以外の症状を伴う場合、出血や悪臭を伴う場合、鼻水の影響で咳が出やすい場合などは、できるだけ早めに医療機関で検査・治療を受けるようにしましょう。

初診に適した診療科は耳鼻咽喉科です。ただし、小児の場合はかかりつけの小児科で診察を受けることができます。また、通院中の内科などがある場合、まずはかかりつけ医に相談するのもひとつの方法です。

受診した際には、いつから白い鼻水が出るようになったのか、随伴する症状はあるのか、状況や場所によって白い鼻水の出方が異なるか、詳しく医師に伝えるようにしましょう。

原因の自己判断/自己診断は控え、早期の受診を検討しましょう。