鼻の乾燥:医師が考える原因と受診の目安|症状辞典
聖マリアンナ医科大学 皮膚科 教授
門野 岳史 先生【監修】
鼻の内部は繊細な粘膜で覆われており、線毛と呼ばれる細かい毛状の構造物が密生しています。線毛は、鼻の中に入り込んだほこりや細菌などの異物をキャッチして体外へ排出する重要な役割を担っています。
線毛の表面は鼻腺でつくられる粘液で覆われているため、鼻の内部は常に湿った状態となっています。しかし、鼻の内部はさまざまな原因によって乾燥することがあります。
これらの症状がみられた場合、原因としてどのようなものが考えられるでしょうか。
鼻の乾燥は、日常生活上の習慣が原因となっていることがあります。原因となる主な習慣とそれぞれの対処法は以下の通りです。
鼻は呼吸をするたびに空気が入り込むため、秋から冬にかけての乾燥しやすい時期には鼻の乾燥が引き起こされることがあります。
空気が乾燥しやすい時期は、外出時のマスクの着用や室内を適度に加湿して鼻の中の湿度を保つことが大切です。また、乾燥が気になるときは暖かい飲み物を飲んだり、湯船にゆっくり浸かったりするなどの対策も効果が期待できると考えられます。
主に口で呼吸している人は口腔内が過度に乾燥しやすく、口腔内とつながっている鼻の中も同時に乾燥することがあります。
意識的に口を閉じて呼吸をするように心がけ、就寝中など無意識に口呼吸を行ってしまうときには、マスクを着用したり室内を加湿したりして乾燥を予防しましょう。
鼻の中には鼻毛が生えているため、美容上の観点から手入れが必要になることもあります。しかし、過度なお手入れは、鼻の粘膜を傷つけて乾燥を引き起こすことがあります。
鼻毛などの処理は市販の鼻毛カッターなどを使用するようにし、無理に鼻毛を抜いてしまうことは控えるようにしましょう。また、痛みを感じた場合は手入れを中止することも大切です。
日常生活上の習慣を改善しても症状がよくならない場合は、思わぬ病気が潜んでいる可能性があります。見過ごさず、早めに耳鼻咽喉科を受診して適切な検査・治療を受けるようにしましょう。
鼻の内部はさまざまなトラブルが生じやすい部位で、鼻の乾燥の原因は多岐に渡ります。なかには、以下のような病気が原因のこともあるため注意が必要です。
鼻の乾燥は、鼻腔粘膜の炎症を引き起こす病気が原因のことがあります。原因となる主な病気は以下の通りです。
花粉やハウスダストなど、特定のアレルゲンを吸い込んだり食べたりすることで生じるアレルギー症状の一種です。アレルゲンに晒されて数分~数十分後に鼻水や鼻閉などの症状が現れます。軽度な場合には自然と回復しますが、重度なアレルギーの場合には鼻の粘膜のむくみや炎症が長く続き、乾燥の原因になることがあります。
細菌やウイルスに感染することによって生じる鼻炎で、鼻汁や鼻閉などの症状と共に発熱や倦怠感などの全身症状や、咽頭痛、咳、痰などの呼吸器症状を伴うことが特徴です。
鼻粘膜の炎症によって鼻腺の機能が障害され、粘液分泌が低下することで鼻の乾燥を引き起こすことがあります。
急性鼻炎による鼻の粘膜の炎症が長引き、広範囲の線毛構造や鼻腺が障害された状態になる病気です。粘液の産生が低下することで粘膜の慢性的な乾燥を引き起こし、些細な刺激で鼻出血や感染を起こしやすくなります。
また、なかには鼻の内部にポリープを形成して重度な鼻閉や頻回な鼻出血を引き起こすこともあります。
鼻の粘膜と隔壁が萎縮して鼻腔内が広がる病気です。無症状のことも少なくありませんが、粘液の分泌低下による鼻の乾燥を引き起こしやすく、些細な刺激で微量な出血を引き起こしやすくなります。そのため、鼻の中に多量のかさぶたが形成されるのが特徴です。かさぶたは悪臭を放つことが多く、それが発見のきっかけになることもあります。
自己免疫の異常によって引き起こされる病気のひとつであり、主に上気道、肺、腎臓を中心に血管の炎症が生じます。鼻の内部に発症することも多く、膿が混ざったような鼻汁や粘膜の過度な乾燥による鼻出血を起こしやすくなります。
また、発熱や倦怠感、体重減少などの全身症状を伴うこともあります。
鼻の乾燥は、鼻の粘膜に生じる腫瘍が原因のことがあります。原因となる主な病気とそれぞれの対処法は以下の通りです。
鼻の内部の粘膜に生じるがんです。もっとも多くみられるのは扁平上皮がんであり、早期の段階では自覚症状がないことがほとんどです。
進行すると鼻閉や鼻出血を生じやすくなり、線毛構造や美腺が破壊されることで鼻の内部が乾燥しやすくなります。
鼻の乾燥は日常的によくみられる症状であるため、様子を見ながらやり過ごしている方も多いでしょう。しかし、鼻の乾燥は思わぬ病気が潜んでいる場合もあり、なかには早急に治療を始めなければならないこともあります。
特に、鼻出血が生じやすい場合や鼻閉・鼻汁などの症状が強い場合、発熱などの全身症状を伴う場合などは、なるべく早めに病院を受診するようにしましょう。
受診に適した診療科は耳鼻咽喉科です。受診の際には、いつから鼻が乾燥しているのか、乾燥の誘因、随伴する症状や現在罹患している病気などを詳しく医師に説明するようにしましょう。
翌日〜近日中の受診を検討しましょう。
気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。