鼻血:医師が考える原因と対処法|症状辞典
急ぎの受診、状況によっては救急車が必要です。
どうしても受診できない場合でも、翌朝には受診しましょう。
翌日〜近日中の受診を検討しましょう。
気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。
新潟大学大学院医歯学総合研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学分野 教授
堀井 新 先生【監修】
鼻血は子どもから大人まで性別問わず経験する方が多い出血の一つです。転倒して鼻を負傷したときや強く鼻をかんだときなど、鼻血の症状が現れる場面はさまざまですが、場合によっては血管や血液に関連する病気が原因となっていることがあります。
このような症状があるときはどのようなことに気を付ければよいのでしょうか。
鼻血は数分〜数十分で止まるあまり心配のないものがある一方、症状の出方によっては医師による早急な処置が必要なものがあります。
通常の鼻血はたらたらと垂れるように出る静脈からの出血であることがほとんどですが、時には吹き出すようにして止まらない動脈からの出血が起こることがあります。
また、特に転倒など頭部や顔に強い衝撃を受けた後にさらさらとした色の薄い出血が止まらないようなときには、頭蓋底骨折などの可能性もあります。
これらの場合では医師による早急な処置が必要ですので、症状を確認次第すぐに医療機関を受診しましょう。
鼻血で考えられる病気はアレルギーによるものから血液に関連するものまで多岐にわたります。
その中でも以下は鼻血の症状が現れる代表的な病気の例です。
アレルギー性鼻炎とは、花粉やダニ、動物の毛などの原因物質によってくしゃみや鼻水、鼻づまりの症状が頻繁に出てしまう鼻粘膜に生じるアレルギー疾患です。上記の症状のほか、耳やのど、鼻のかゆみ、頭痛の症状を伴うこともあります。
鼻水が出ることで鼻をかむ回数が多くなったり、かゆみで鼻腔内をいじったりすると、鼻粘膜の血管が破れて鼻血が出やすくなります。アレルギー性鼻炎がある方は鼻腔内を傷つけないよう、鼻水やかゆみへの対処の仕方に気をつけましょう。
高血圧は、血液が流れることでかかる血管への圧力が高い状態のことを指します。具体的には140mmHg/90mmHg以上が続く状態のことをいいますが、高血圧の程度によっては血管に負担がかかり、鼻血が出やすくなる場合があります。
オスラー病(遺伝性出血性末梢血管拡張症)とは、各臓器の血管に異常があるために出血してしまう遺伝性の病気です。鼻血はもっとも多く見られる症状で、このほかにも肺や脳、脊髄をはじめ、口腔内や皮膚から出血することがあります。
正常な血管を作る遺伝子に異常があることが原因と考えられている病気のため、診断には医師による詳細な診察・検査を経る必要があります。
上に挙げた病気のほか、以下のような血液関連の出血しやすくなる病気、または服用している薬の影響によって鼻血が出ている場合も考えられます。
特発性血小板減少性紫斑病とは、止血のはたらきをする血小板が減少し、出血しやすくなったり、止血しにくくなったりする病気です。
この病気には鼻血のほか、あざができやすくなる、月経時の出血が増えるなどの症状が挙げられていますが、重症の場合は脳や内臓からも出血することがあるため注意が必要です。
白血病とは、血液細胞が作られる途中でがん化し、正常な血液細胞が減少してしまう病気です。血液細胞に異常をきたすことから、鼻血をはじめとする出血が多くなります。ほかにも免疫力低下による感染症にかかりやすくなったり、貧血になったりします。
治療のために医師から抗凝固剤や抗血小板薬を処方されている場合は服用中、鼻血が出やすくなることがあります。
これらの薬は血液をかたまりにくくするため、服用していないときより鼻血が出やすくなる場合があることが理由ですが、自己判断で服用を中止することはやめましょう。鼻血が気になるようであれば、まず処方を受けている医師に相談しましょう。
1時間以上止血をしても止まらない、痛みを伴う、通常より出血量が多い、鼻以外からも出血しているなどの状況が続くようであればなるべく早めに受診しましょう。また、一旦止まっても鼻血を何度も繰り返しているような場合や、体のほかの場所からの出血やあざが気になるような場合にも受診が必要です。
受診科目は耳鼻咽喉科が適していますが、体の他の場所からの出血や身に覚えのないあざが目立つような場合には内科での相談がよいでしょう。
受診の際は出血し始めた時間やきっかけとなった出来事があるかどうか、服用中の薬があるか、繰り返している鼻血の場合には頻度やそのほかの症状など、できる限り詳しく医師に伝えるようにしましょう。
病気の他にも日常での行動や環境が鼻血の原因となっている場合もあります。
鼻の中が乾燥すると鼻粘膜が傷つき、鼻血が出やすくなることがあります。
まずは室内環境を適度な湿度に保つようにして、鼻の中が乾燥するのを防ぎましょう。
鼻の中に綿棒などで薄くワセリンを塗って保湿する方法もあります。
鼻の中の粘膜は非常にデリケートなため、指でいじったり、強く鼻をかんだりすると傷ついて出血することがあります。
むやみに鼻の中をいじらないようにしましょう。
そして、鼻をかむときは息を大きく吸い込み、片方ずつゆっくり吹き出します。力を入れずに行うのがポイントです。
普段からの行動や環境を見直しても改善が見られない場合は、思いもよらない原因が潜んでいる場合もあります。一度医療機関を受診するようにしましょう。