においがわからない:医師が考える原因と受診の目安|症状辞典
メディカルノート編集部 [医師監修]【監修】
においを感じる感覚である嗅覚が低下すると、味を感じにくくなったりする場合があります。
このような場合に考えられる原因にはどのようなものがあるでしょうか。
においを感じにくくなる病気には、鼻そのものの病気や全身の病気など、さまざまなものがあります。
においがわからないときの原因となりやすい病気には、次のようなものが挙げられます。
副鼻腔炎とは、鼻の穴の周りにある空洞部分(副鼻腔)がウイルスや細菌によって炎症を起こしてしまう病気です。発症すると粘り気のある黄色っぽい鼻水が出るほか、鼻や副鼻腔の粘膜が腫れて鼻づまりを起こし、においを感じる粘膜の受容体まで、におい分子が行き着かないため、においがしなくなることがあります。
副鼻腔炎には急性と慢性がありますが、急性では頭痛や眉間・頰などの痛みを感じやすく、慢性では鼻づまりや後鼻漏(鼻水が喉の方へ垂れ込んだもの)などの症状が主となります。また、慢性副鼻腔炎の場合には、鼻茸(鼻ポリープ)によってにおいを感じる機能が低下することがあるほか、好酸球性副鼻腔炎の一症状としてにおいがしなくなることがあります。
アレルギー性鼻炎とは、花粉やダニ、動物の毛、虫などのアレルギー物質によって鼻粘膜にアレルギーが生じ、不快な症状が現れる病気です。主な症状には鼻水、鼻づまり、かゆみなどがあります。慢性的に鼻の粘膜が腫れた状態になることで、においを感じにくくなる場合もあります。
鼻中隔湾曲とは、左右の鼻の穴を隔てている仕切りの部分(鼻中隔)が強く曲がっている状態のことを指します。多少の曲がりであれば支障がないことがほとんどですが、曲がりが強い場合には鼻の通りが悪くなり、においがわかりにくくなることもあるといわれています。
感冒とはいわゆる風邪のことです。風邪を引いている最中には、鼻づまりなどでにおいを感じないことがよくあります。しかし、風邪が治ったあとにも症状が続くことがあります。この場合は、風邪のウイルスにより、においを感知する細胞が変性してしまうことが原因と考えられています。
頭や顔を強く打つけがをすると、神経が通っている頭蓋骨が骨折したり、それによってにおいを感じる神経が傷ついたりすることがあります。それが原因となって、においを感じにくくなる場合があります。また、頭蓋骨に骨折があると脳の周りの液体(脳脊髄液)が漏れ出し、さらさらした液が鼻から出てくることがあるため、こういった症状がある場合には注意が必要です。
アルツハイマー病やパーキンソン病はいずれも脳・神経の病気ですが、これらの症状のひとつとしてにおいがわからなくなることがあります。
アルツハイマー病は認知症のひとつで、主には記憶があいまいになったり、時間や場所がわからなくなったり、妄想などの症状が主となる病気です。
パーキンソン病は、脳の黒質という部分の神経細胞が徐々に減り、それによってドーパミンという物質が不足して起こる病気です。ドーパミンは体の運動などを調節しているため、これが減少することで体がこわばったり、うまく動かなくなったりするようになります。手足のふるえ、動きが遅くなる、転びやすくなるなどの症状が初期には現れやすいとされています。
妊娠などホルモン状態の変化に伴い、においが感じにくくなる・普段と違って感じられるということはよくあります。多くは妊娠初期に見られる症状ともいわれています。
また、加齢によってにおいを感じる神経の感度が落ちてくることで、においが感じにくくなることもあります。
高血圧治療薬、抗菌剤などの服用でにおいを感じなくなることがあります。内服開始後、比較的短時間で症状が出る場合や、内服開始後、大分経って(長期内服後)においがしなくなる場合もあります。新たに内服薬を開始した際、症状が出てしまった場合には、すぐに処方医に相談して下さい。
以前と比べてにおいがわかりにくい、感じにくいと感じたら一度耳鼻科を受診しましょう。
受診の際には、いつからにおいがわからないと感じているか、風邪やケガ・アレルギーなどの心当たりがあるか、他にどのような症状があるかなど、できるだけ詳しく医師に伝えるようにしましょう。
翌日〜近日中の受診を検討しましょう。
気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。