鼻水が水っぽい:医師が考える原因と受診の目安|症状辞典

鼻水が水っぽい

国際医療福祉大学成田病院 耳鼻咽喉科 教授

岡野 光博 先生【監修】

水っぽい鼻水は、医学的に“水様性鼻漏”と呼ばれます。涙を流したときやあくびをしたときなどにも見られる症状であるため軽く考えられがちですが、中には思いもよらない原因が背景にあるケースも少なくなく、注意しなければならない症状のひとつです。

  • 春先になると透明で水っぽい鼻水が大量に出る
  • 体がだるく、微熱や喉の痛みとともに水っぽい鼻水が出るようになった
  • 交通事故後に水っぽい鼻水が出るようになった

これらの症状が現れた場合、原因としてどのようなものが考えられるのでしょうか。

水っぽい鼻水は、病気によって引き起こされることがあります。水っぽい鼻水を引き起こす代表的な病気は以下のとおりです。

鼻の中に生じる病気が原因で水っぽい鼻水になることがあります。

アレルギー性鼻炎

植物の花粉やハウスダストなど、特定のアレルゲンを吸い込むことによって生じる病気です。鼻の粘膜に刺激が生じ、水っぽく透明な鼻水が大量に排出されるようになります。

また、鼻づまりやくしゃみなどの鼻の症状や、目のかゆみ喘息(ぜんそく)といったほかの部位のアレルギー症状を伴うことも少なくありません。

軽症の場合はアレルゲンを吸い込んだときにのみ軽い症状が現れるだけですが、重症な場合にはアレルゲンの吸入を避けるために外出が困難になるなど、日常生活に支障をきたすケースもあります。

アレルギー性鼻炎
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急性上気道炎

いわゆる“風邪”と呼ばれるもので、ウイルスや細菌などの病原体が鼻や喉の粘膜に感染することによって引き起こされる病気です。発熱や倦怠感(けんたいかん)、喉の痛み、咳、鼻水や鼻づまりなどさまざまな症状が引き起こされます。

発症して間もない頃は透明で水っぽい性状の鼻水が多量に排出されますが、時間が経過すると病原体や白血球の死骸が混ざるようになるため、粘り気のある白色や黄色、緑色へと変化していくのが特徴です。

血管運動性鼻炎

気温差の激しい場所に行ったり、ストレスを感じたりしたときに鼻粘膜の自律神経のはたらきに異常が生じ、鼻水や鼻づまりなどの症状を引き起こす病気です。

鼻水は透明で水っぽいのが特徴で、はっきりした原因が分からないため治療が難しくなるケースも少なくありません。

鼻水は鼻や副鼻腔の病気が原因で引き起こされることが多いですが、水っぽい鼻水は別の部位の病気によって引き起こされることがあります。

鼻性髄液漏(ずいえきろう)

脳や脊髄の中を流れる“(のう)脊髄(せきずい)(えき)”が鼻から排出される病気です。多くは、交通事故や転落事故などによって強い外力が頭部に加わり、頭蓋骨の底の部分に骨折が生じることにより引き起こされます。このような外傷による鼻性髄液漏の80%は3週間以内に自然に止まるとされていますが、髄液に細菌感染が生じると髄膜炎や脳炎など重篤な合併症を引き起こすことも少なくありません。

また、まれに頭の外傷がないにもかかわらず、原因不明の鼻性髄液漏が生じる“特発性鼻性髄液漏”が見られることもあります。

老人性鼻漏

高齢者で、特に寒冷時や熱いものを摂食した際に水っぽい鼻水を生じることがあります。これは加齢によって鼻の粘膜が萎縮して、呼気中の水蒸気を粘膜が吸収できないことが原因です。冬に窓ガラスなどで見られる結露と同じ状態です。加齢変化なので治療は難しいですが、蒸しタオルを鼻に当てたり体を温めるなど、加温が重要です。

水っぽい鼻水は上で述べたような病気が背景にあるケースもあるため、軽く考えることはできない症状のひとつです。

特に、水っぽい鼻水が大量に出るため日常生活に支障がある場合や喉の痛みなど鼻水以外の症状を伴う場合、頭の外傷後に水っぽい鼻水が出るようになった場合などはできるだけ早く受診を検討しましょう。

受診に適した診療科は耳鼻咽喉科ですが、小児の場合はかかりつけの小児科で相談するのもひとつの方法です。また、通院中の内科などがあれば、まずはそこで診察を受けるのもよいでしょう。

受診の際には、いつから水っぽい鼻水が出るようになったのか、随伴する症状はあるのか、どのような状況で鼻水が出やすくなるのか、症状が現れる前の病気や外傷の既往はあるのかなどについて詳しく医師に伝えるようにしましょう。

原因の自己判断/自己診断は控え、早期の受診を検討しましょう。