鼻が赤い:医師が考える原因と受診の目安|症状辞典

鼻が赤い

聖マリアンナ医科大学 皮膚科 教授

門野 岳史 先生【監修】

鼻の皮膚は乾燥しやすく、皮脂分泌も多いため、さまざまな皮膚トラブルを引き起こすことがあります。

中でも、鼻の赤みは比較的よくみられる症状のひとつであり、その原因は多岐にわたります。

  • 鼻にでこぼこした腫瘤が形成され、全体的に赤みを帯びている
  • 新しい化粧品を使用したところ、かゆみが生じて鼻が赤くなった
  • 生まれつき、鼻にやや膨らみのある赤いしみがある

これらの症状がみられた場合、どのような原因が考えられるでしょうか。

鼻の赤みは日常生活上の好ましくない習慣によって引き起こされることがあります。原因となる主な習慣と、それぞれの対処法は以下の通りです。

顔の皮膚は紫外線や外気の乾燥などによる刺激を常に受けているため、乾燥を引き起こしやすい部位です。皮膚が乾燥した状態が続くと、皮膚に炎症を引き起こして赤みやかゆみなどを生じることがあります。

皮膚の乾燥を防ぐには

入浴後や洗顔後など皮脂を洗い流した状態の皮膚は乾燥が悪化しやすいため、保湿効果の高い化粧品を使用して潤いを補給するようにしましょう。

また、空気が乾燥しやすい時期には、加湿器を使用するなどして適度な湿度を保つことも大切です。

鼻は毛穴が目立ちやすく、皮脂分泌も多いため力を入れて洗浄しがちになる部位です。しかし、過度な洗浄は皮膚に刺激を与えて炎症や乾燥を引き起こし、赤みの原因になることがあります。

肌に優しい洗顔とは

よく泡立てた洗顔料で顔を包み込み、指の腹で優しく撫でるように洗浄しましょう。

泡はぬるま湯でよく洗い流すこともポイントです。また、洗顔料などは肌への刺激が少ないものを選ぶようにしましょう。

鼻は突出した構造をしているため、紫外線のダメージを受けやすく、思わぬ間に日焼けしていることがあります。その結果、鼻の赤みを引き起こすことも少なくありません。

鼻の日焼けを防ぐには

外出時には顔にもしっかりと日焼け止めを塗り、長時間外にいるような場合には帽子や日傘で紫外線を遮るようにしましょう。

また、日焼け止めは汗や皮脂で落ちやすいため、こまめに重ね塗りすることも大切です。

日常生活上の習慣を改善しても鼻の赤みがよくならないときは、思わぬ病気が潜んでいることもあります。看過せずに、それぞれの症状に合わせた診療科を早めに受診しましょう。

鼻に赤みが生じる原因は多岐にわたります。外的な刺激や日常生活上の好ましくない習慣が原因のこともありますが、病気が原因で引き起こされることも少なくありません。

鼻の赤みを引き起こす病気には以下のようなものが挙げられます。

鼻の赤みは皮膚に生じる病気によって引き起こされることがあります。原因となる主な病気は以下の通りです。

接触皮膚炎

いわゆる、かぶれと呼ばれるもので、特定の物質が肌に触れることで皮膚に炎症を引き起こし、ヒリヒリとした痛みやかゆみ、赤みなどを生じる病気です。

重症な場合には、病変部の皮膚にびらんや水疱(すいほう)を形成することも少なくありません。鼻の場合、化粧品などによる接触皮膚炎が生じます。

接触皮膚炎
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脂漏性皮膚炎

過剰に分泌された皮脂が皮膚に炎症を引き起こす病気で、皮膚の赤みやかゆみ、ポロポロとした表皮剥離(はくり)を引き起こすことがあります。

皮脂の分泌が多い顔や頭皮などに発症し、皮膚に常在するマラセチアと呼ばれるカビの一種が異常増殖することなどが原因と考えられています。

脂漏性皮膚炎
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酒さ

いわゆる赤ら顔と呼ばれるものです。

明確な発症メカニズムは解明されていませんが、紫外線や急激な温度差、乾燥、アルコールの多飲などによって頬と鼻の毛細血管が拡張して赤みを帯びる病気です。病変部に吹き出物ができ、(しゅ)(りゅう)を形成して皮膚表面がボコボコになることも少なくありません。

また、吹き出物は化しての流出や痛みを伴うこともあり、瘢痕(はんこん)(あと)を残す可能性もあります。

酒さ
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血管腫

血管内皮細胞が異常増殖する病気で、皮膚に赤く盛り上がりのあるシミを形成します。

顔には、乳幼児に多く発症する乳児血管腫いちご状血管腫)がみられることがあり、1歳頃までは急激に増大することも少なくありません。鼻に形成されることもあり、赤みの原因となるケースがあります。

血管腫
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鼻の赤みは鼻の皮膚以外の部位に生じる病気によって引き起こされることがあります。原因となる主な病気は以下の通りです。

肝硬変、肝臓がん、慢性肝炎など

肝臓の機能が低下する病気では、毛細血管の圧が上昇して血管がクモのように浮き上がるクモ状血管腫を形成することがあります。

顔や前胸部、首などにでき、鼻の頭にできることも少なくありません。血管が透けて見えるため、常に赤みを帯びて見えるようになるのが特徴です。

そのほかにも、倦怠感やむくみ、黄疸(おうだん)(皮膚などが黄色くなる)など、肝機能低下による症状がみられます。

肝硬変
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クッシング症候群

副腎や下垂体の腫瘍によって副腎皮質のはたらきが亢進し、過剰なステロイドホルモンが分泌される病気です。

ステロイドホルモンの増加によって、肥満や高血圧高血糖骨粗しょう症などの症状を引き起こし、皮膚も薄くなることで鼻の頭などが赤く見えるようになることがあります。

クッシング症候群
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全身性エリテマトーデス

自己免疫の異常によって引き起こされる病気で、発熱や倦怠感、関節痛などの全身症状や発疹、脱毛、腎炎頭痛など全身にさまざまな症状を引き起こす病気です。

女性に多く発症し、症状の現れ方は人によって異なりますが、頬や鼻にかけて赤みを帯びる皮膚症状が生じます。このような皮膚症状は両側の頬に対称的に広がるため、蝶形(ちょうけい)紅斑(こうはん)とも呼ばれています。

全身性エリテマトーデス
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鼻の赤みはよくみられる皮膚トラブルですが、中には皮膚以外の部位の重篤な病気が原因のこともあります。鼻の赤みが続くときは軽く考えずに病院を受診するようにしましょう。

特に、鼻に痛みやかゆみを伴う場合、腫瘤が形成される場合、何らかの全身症状がある場合には早めに病院を受診しましょう。

受診に適した診療科は皮膚科ですが、美容上の問題が強く気になる場合には美容外科や形成外科で相談することもできます。また、明らかな全身症状を伴う場合には、かかりつけの内科などで相談するのもひとつの方法です。

受診の際には、いつから赤みが気になっているのか、赤みの誘因、随伴する症状、現在罹患している病気などを詳しく医師に使えるようにしましょう。

受診の目安

診療時間内に受診

翌日〜近日中の受診を検討しましょう。

  • 赤み・じゅくじゅく・かさつき・水ぶくれ・皮むけ・ヒリヒリする刺激感・腫れ・熱い感じなどがある場合

場合によって受診を検討

気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。

  • セルフケア(保湿など)で改善している場合
原因の自己判断/自己診断は控え、早期の受診を検討しましょう。