概要
鼻茸とは、鼻や副鼻腔の粘膜が炎症を起こして腫れてしまい、鼻の中にポリープという瘤のようなもの(鼻ポリープ)が生じる状態です。腫れて垂れ下がったポリープがキノコ状に見えることから鼻茸と呼ばれています。
主な症状として鼻づまりを引き起こします。鼻茸は、副鼻腔炎と合併することが非常に多いです。また、喘息との関連も指摘されています。
治療としては薬物療法が行われますが、治療効果が不十分な場合には手術による摘出術がさらに検討されます。
原因
鼻茸は、慢性的な炎症反応を基盤として生じることが少なくありません。炎症によって鼻の中の粘膜が変化し、ポリープが形成されます。そのため、鼻茸は慢性副鼻腔炎の患者にみられることが多いです。副鼻腔炎の患者は日本に100〜200万人いるといわれており、そのうち20万人が鼻茸を持つ慢性副鼻腔炎であるとされています。
副鼻腔炎のなかでも、好酸球性副鼻腔炎では両側の鼻の中に複数の鼻茸ができやすいです。特に嗅裂という、においに関わる場所にできやすいことが特徴です。一般的な副鼻腔炎とは異なり、好酸球性副鼻腔炎は手術をしてもすぐに再発を繰り返しやすく、ステロイドの内服でよくなりやすいという特徴があります。
症状
鼻茸が小さいうちは症状がないこともある一方、下記のような自覚症状が現れることもあります。
鼻づまり
鼻茸は鼻の中に生じるため、空気の通り道が狭くなってしまい、鼻づまりになることがあります。
においを感じにくい
においを感じる神経の周りの鼻の通りが悪くなるために、においを感じにくくなります。特に好酸球性副鼻腔炎に伴う鼻茸の場合によく見られます。
味が分かりにくい
食べ物の味はにおいとも深く関係しているため、嗅覚が障害され、同時に食べ物の味すなわち風味も分かりにくくなることがあります。
そのほか、喉の奥に鼻水やものがたれ込む感じがすることもあります。さらに、歯の痛みや顔面の痛み、頭痛などの症状が生じることもありますし、いびきの症状が出現することもあります。
鼻茸の患者のなかには、アスピリンに対して過敏性を伴う人もいます。この場合、感冒時にアスピリンなどの解熱鎮痛薬を含む風邪薬を内服することで、息苦しさなどの喘息症状や鼻水などの鼻症状が出現することがあります。そのため、こうしたリスクについても注意することが大切です。
検査・診断
鼻茸では、鼻鏡やファイバースコープなどを用いて鼻の中を詳細に観察します。そのほか、レントゲン写真やCTといった画像検査を通して副鼻腔炎の状況を評価することもあります。
また、喘息に合併した好酸球性副鼻腔炎による鼻茸の場合は、喘息の既往の確認や採血を行い、血中の好酸球の割合が高くないか、また直接鼻茸の一部を採取して鼻茸の組織中に好酸球の浸潤がないかを確認します。
治療
薬物もしくは手術によって治療を行いますが、薬物療法が第一選択として検討されます。
好酸球性副鼻腔炎による鼻茸でない場合は、マクロライドという抗生剤やカルボシステインなどの粘液溶解剤を投与して炎症を抑えます。好酸球性副鼻腔炎による鼻茸ではステロイドが有効です。副作用のことも考慮して、点鼻薬によるステロイドの局所投与が検討されます。好酸球のはたらきを抑える抗ロイコトリエン薬を用いることもあります。
またセルフケアとして、生理食塩水による鼻の洗浄が推奨されます。鼻茸を悪化させる物質を洗い流すことで炎症を抑えることができ有効です。
点鼻薬で十分な効果が得られない場合には、ステロイド内服薬などによる治療が検討されます。さらに、薬物療法による治療効果が不十分な場合には、内視鏡を用いた手術によるポリープの摘出が検討されます。
最近では、手術後にも鼻茸が再発するような重症例には生物学的製剤の注射が検討されます。アレルギー型の炎症をピンポイントで抑える薬で、患者によっては非常に有効です。ただし、高額でどの鼻茸患者にも用いることができる薬ではないため、使用については主治医とよく相談する必要があります。
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