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インタビュー

Fasciaリリースの応用―坐骨神経痛様の下肢痛の治療

Fasciaリリースの応用―坐骨神経痛様の下肢痛の治療
木村 裕明 先生

木村ペインクリニック 院長

木村 裕明 先生

生理食塩水注射による筋膜リリースが、筋膜以外の靭帯、腱、支帯、腱膜などの結合組織や、神経の周りの神経上膜、神経鞘にも有効なことは、前回記事(靭帯や腱などの結合組織(Fascia)への治療も効果的。筋膜リリースからFasciaリリースに注目が高まる)でご説明しました。この記事では引き続き木村ペインクリニックの木村裕明先生に、Fasciaリリースはどのように応用できるのか詳しくご説明いただきます。

神経は神経線維+Fascia(結合組織)といえます。つまり、神経線維はあくまで電気信号を伝える電線であり、異常シグナルは神経線維のまわりの神経周囲膜、神経上膜、神経鞘さらに、神経線維から数センチ離れた筋膜の癒着から生じると理解されます。神経線維の断線(圧迫や切断など)は、神経機能の低下(感覚神経:鈍麻、運動神経:麻痺、深部腱反射:低下、膀胱直腸障害)をきたすことが必須です。この症状は、日内変動・週内変動などの症状変動がなく、24時間一定の強さであることが特徴です。

一方、「痛み」や「異常感覚や知覚過敏(ピリピリやビリビリなど)」という神経の興奮症状は、上述したように神経線維の近傍の異常なFasciaのシグナルを神経線維が拾っていると推察できます。その場合、その神経線維近傍の異常なFasciaのリリースで症状は消失するのです。このように考えると、一般的に言われている坐骨神経痛は、本当の神経障害つまり神経痛ではありません。ほとんどがFasciaの異常として治療できます。

一般的に坐骨神経痛様の下肢痛の治療には、硬膜外ブロック、神経根ブロックが施行されます。LFD:Ligamentum Flavum/dura complex(黄色靭帯・背側硬膜複合体)に異常がある場合には、硬膜外ブロックが有効と思われます。また、神経根周囲のFasciaに異常がある場合には、神経根ブロックが有効な場合があります。ただ、この二つの治療法で改善しない場合もかなり多くみられます。

この場合、坐骨神経周囲のFasciaや数センチ離れた筋膜の癒着のリリースが有効です。具体的にリリースするポイントは、大坐骨孔直上の大臀筋深部、深層外旋6筋(特に梨状筋、内閉鎖筋)、仙棘靭帯、仙結節靭帯などの仙腸関節関連の靭帯群、その他、中臀筋と大臀筋のスキマで、上殿動脈周囲のFasciaのリリースが有効です。 

侵襲(体への負担)の大きさから考えると、こちらから治療をするべきだと思います。

参考:Fasciaリリース 梨状筋周辺 1

記事1:トリガーポイントとは?―原因不明の痛みの大半はトリガーポイントにある
記事2:関連痛とは? 痛みの場所と原因となるトリガーポイントは異なる場合が多い
記事3:トリガーポイントへの注射。生理食塩水の注入が効果的
記事4:トリガーポイントの治療。認知行動療法につなげ痛みをなくす
記事5:筋膜に着目したことが原点。筋膜間ブロック(スキマブロック)からスタートした筋膜性疼痛症候群の新しい治療
記事6:生理食塩水で筋膜をはがす、リスクの少ない新たな治療法
記事7:筋膜リリースの普及―生理食塩水によるエコーガイド下筋膜リリースが痛みをなくす
記事8:靭帯や腱などの結合組織(Fascia)への治療も効果的。筋膜リリースからFasciaリリースに注目が高まる
記事9:Fasciaリリースの応用―坐骨神経痛様の下肢痛の治療

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  • 木村ペインクリニック 院長

    日本ペインクリニック学会 ペインクリニック専門医日本麻酔科学会 麻酔科認定医

    木村 裕明 先生

    ペインクリニックを開業して20年、痛み治療の名人として多くの患者に支持され、MPSの新しい治療法である、筋膜間ブロック(スキマブロック)、生理食塩水を用いた筋膜間注入法、エコーガイド下筋膜リリース等の治療法を考案。2009年より筋膜性疼痛症候群(MPS)研究会の会長に就任、研究会の会員は急速に増えており、2015年現在600名を超える。年2回の学術集会と会員専用掲示板(各種治療手技の動画や症例検討など、2年間の運用で書き込み数1万以上)で、MPSの治療法や診断について活発に議論を行い、また各地での講演活動等、精力的なMPSの啓発活動も行っている。

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